今までいろいろな行政書士に関する記事を書かせて頂きましたが、これから行政書士を目指される方や開業をお考えの方にとっては、今回の「行政書士の事業規模」という部分が一番気になるのではないでしょうか。

以前にも書かせて頂きましたが、事業主はサラリーマン等の給与所得者と違い、売上が確保できない場合には生活の保証自体がされません。開業というのは、ある意味厳しい選択でもあるのです。そのため、実際に行政書士として開業した場合、どの程度の事業規模を目指すべきかというのをお話させて頂きます。

日本行政書士会連合会が5年に一回実施しております「行政書士実態調査」という調査があります。この調査は開業している現役行政書士にアンケートを行い事務所の事業規模を答えて頂いた内容を集計したものです。過去2回行われましたが、2回とも近しい数値で推移しているため実態を反映しているかと思います。

なお、一番最近の調査は平成30年が最も新しい調査です。5年に一回行っている関係で、おそらく今年が3回目の調査を行う年度になるかと思われます。

以下が調査結果になります。
・500万円未満 ・・・78.8%
・1000万円未満 ・・・11.3%
・2000万円未満 ・・・5.3%
・5000万円未満 ・・・3.1%
・1億円未満 ・・・0.8%
・1億円以上 ・・・0.3%
(他に未回答0.4%)

この結果からわかることですが
・開業している約8割が年商500万円未満
・開業している約9割が年商1,000万円未満
・年商1,000万円以上の行政書士は全体の9.5%
・年商2,000万円以上の行政書士は全体の4.2%
・年商5,000万円以上の行政書士は全体の1.1%
ということがわかります。

ここでいう事業規模はあくまでも「年商」ということになりますので単純に事務所の売上ということになります。当然ですが事務所を運営していくにあたっては電話やインターネット回線を使用することの通信費、事務所を借りている場合の賃料、紙・事務用品などの消耗品費、人を採用した場合の人件費もかかります。

売上(年商)から通信費・賃料・人件費等の経費を引いた部分がご自身の収入となるので、年商が1,000万円と言っても年収が1,000万円というわけではありません。ここに大きなギャップがあると思います。私の肌感覚とはなりますが、この調査に関しては概ね実態に合っているかとは思います。努力をして難しい試験に合格して、多くの時間を使い開業のための準備を行い、開業後も実務に対する自己研鑽と営業活動に多大な労力を使用しても、残念ながら事業規模としては上述の通りとなります。
この数値を「良い」と判断するのか、「良くない」と判断するのかは人それぞれです。もちろん行政書士といえどもあくまでも事業主ですので、ラーメン屋さんで例えるのであれば、多くの利益を出し多店舗展開している有名ラーメン店チェーンもありますし、お客様がほとんど来ることもなく、一店舗のみで事業を維持するのがやっとというラーメン店もあるという現実を考えれば同じことが言えると思います。

・多くの利益を出し多店舗展開している有名ラーメン店チェーン
(これが上の年商5,000万円以上の行政書士は全体の1.1%にあたります)
基本的にこのクラスになると「行政書士法人」となっているケースが多いです。

これも合わせてよく出てくる話なのですが、ここで行政書士の登録年齢の話があると思います。よく言われているのが行政書士業界は比較的、高年齢の方が登録しているのが多い業界なので若い人ほど有利に働くのではないかというお話です。私の感覚からすれば、年齢に関してはあまり影響を与えないのではないかと思っています。

ただ一つだけ言わせて頂ければ、10代で開業することはお薦めしません。どんなに早くても20代後半、出来れば35歳以降に開業することをお薦めします。理由ですが、行政書士として開業した場合ですが相続業務など一部を除いては、顧客対象者は会社の経営者が大半を占めると思います。

帝国データバンクの調査によると2021年の社長の平均年齢は60.3歳(前年比+0.2歳)で、1990年以降右肩上がりの状況が続き、31年連続で過去最高を更新しています。年代別の割合をみると、「50代」が構成比27.6%を占め最多です。次に「60代」が同26.9%、「70代」が同20.2%で続く状況となり、50代から70代で全体の約75%を占めております。そのため、これらの年齢層にある程度近い方が業務を円滑に進めることが出来ると思います。比較的若い世代の方は、このような特徴も考慮して開業されることを検討して頂くとよろしいかと思います。

以前の記事でも書かせて頂きましたが、士業として「開業」するということは厳しい世界なのです。試験に受かっただけというのは、まだスタート地点に立ったというだけでスタートすらもしていない状況なのです。「登録」をした時点で、はじめてスタートをして走り出した状態です。これから試験勉強をはじめる方や開業をされる方は、必ずこのような認識を持った上で御自身の人生を決めてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?