不動産投資の勧誘

仕事中、会社支給のスマホに急に電話がかかってきた。知らない番号からだったが、もしかすると登録していない他の部署の人間からの問い合わせという可能性もあるので、とりあえず出てみた。

すると、聞いたことのないお兄さんの声で聞いたことのない社名と聞いたことのない名前を名乗られた。とにかく聞いたことないだらけの導入だった。話を聞くとどうやら不動産投資的な営業の電話で、仕事に集中していた俺は一気に時間を奪われているという感覚になって腹が立った。やんわりと興味がないと断ったが、なぜか強引に押されて来週時間を作ってその男の話を聞く場を設定されてしまった。やはり断る時にやんわりさは要らないのだと学んだ。気を抜けば次に何かを断る時もやんわってしまいそうだから、これを機にやんわらないことを強く意識しておくことにした。向こうからしたら巧みな話術で話し合いにこじつけたと思っているかもしれないが残念ながら俺の凡ミスだ。気を抜いてやんわってしまっただけなのだ。巧みでもなんでもない。俺は一旦この電話は受け止めた後、後日強引にでも断りの電話を入れることにした。

結局その電話はそのまま進んでいき、話し合いの場所に大阪駅のサイゼリヤを指定された。今まで不動産がどうとか税金がどうとか小難しい単語ばかり出てきていたが、急に親近感のあるファミレスの名前を出され、少し嬉しくなった。いや、嬉しくなってる場合ではない。サイゼリヤは友達とくだらない話をダラダラするか、絵のタッチと難易度の乖離が激しい間違い探しを楽しむ場所であって、よく分からない男とお金や仕事などが関わってくるような今後の人生の話をする場所ではない。そう思うと、なぜか分からないがサイゼリヤを指定してきたことに対してその営業マンの軽さを感じてしまい、余計に腹が立った。何かサイゼリヤにも申し訳なくなった。

結局一度は相手に押されて話し合いの場を設定することを飲み込んでしまったものの、「興味がない」「仕事が忙しい」のシンプルな割に一番強力な2つの武器を強引に振り回すことでなんとか断ることに成功した。

午前中の仕事を終え、昼休みに同僚から食堂でご飯を食べようと誘われた。今日の昼はどうしても一人で食べたい気分だったので俺はやんわりと断った。

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