初夏のタマムシ
道に
タマムシが
落ちていた。
ちょっとつぶれていたが
迷わず拾う。
あぁ、初夏だなぁ!
わたしの住む街では
タマムシは
時折見かけるくらいの
まあまあ珍しい虫で、
生きたものを捕まえたことは
一回しかない。
キラキラの羽で
くりくりの目をしたタマムシは
美しくてかわいい。
だから
落ちていたら
多少つぶれていようとも
拾って大事に持ち帰り
その美しさを愛でる。
わたしが拾った
今年初物のタマムシは、
その美しさを
家族みんながよく見れるように
と
ダイニングテーブルの上に置かれた。
あ、タマムシだね!
と早速気付く次男。
そうよ。
虫好きなキミは
むかし
かぶってた帽子を使って
飛んでるタマムシをつかまえていたね。
あぁタマムシね!きれいだね!
と娘。
そうよ。
ちょっとつぶれてるけどね、
このキラキラしてるの
構造色というのよ、
不思議だよねー。
そして三男は…
ん??
そんなところに
筆箱を置いていたら
タマムシが見えないじゃない?
と
筆箱をどかそうとしたら
断固拒否。
なんと
彼は
つぶれた虫を
目にしたくなかったから
静かに
筆箱でガードしていたんだと…!
三男の反応は真っ当だが、
我が家では少数派のため
兄妹から
はぁ?????
と言われる。
かわいそうに…
いや
そもそも母が
つぶれた虫をテーブルに置くのが
間違っているのかもしれないな…
三男の
初夏の思い出が
嫌なものにならないよう、
わたしは
タマムシを
そっと
玄関に移した。
視野の狭い三男には
きっとバレないだろう。
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