日本のとある診療ガイドラインにおけるSDHの取り入れ方について相談されたので、それに対するレスをメモしておく

とある臨床系の学会の診療ガイドラインを作成に関わっている方より、取り入れるべきSDHの項目はどうあるべき?と質問されたので回答を作成した。その回答を修正したものを備忘録がてらメモしておく。とりあえず以下のようなことを書いたが、他にもこう考えるべきとか、これは違うんじゃ?とかコメントあればコメントもらえると嬉しいです。

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以下いろいろ書くけど、結局は以下の民医連の取り組みが現実的な日本のおとしどころなのかなと感じます。
https://www.primarycare-japan.com/news-detail.php?nid=320

そのうえでレスします。

まず送っていただいた内容は「欧米の知見をそのまま日本社会に入れても合わないこと多すぎ」となると感じる。これが解消されないガイドラインは、読み手(多くがアカデミアへの理解がないORアカデミアに嫌悪感を持つ人もいるだろう)のやる気をそぐのではないかと感じました。
重要なのは、いかに日本での現実的な落としどころを作るのかではないか。
その観点で私案を記載します。

学問として意義があるもので、かつ、日本の医療従事者が読むことを想定しており現実に使ってもらえるようなものを、というのであれば、まずは以下の3つの切り口が現実的ではないでしょうか

・education 学歴 (これ結構強力に効きます、高齢者でも)
・income 収入 (高齢者ですと年金収入となります)
・occupation 職種(この切り口は高齢者より手前の年齢で仕事してることが前提となります)

上記3つが3大SESです。
死亡や主要な病気との関連は膨大に報告あります。日本でも。
なので入れるべき切り口と感じます。

他の論点は以下などでしょうか。

・生活保護か否か:この切り口の研究も多いですが、現実は(おそらくご存じの通り)生活保護になると無敵で医療アクセスは良すぎる感じですよね。むしろその手前の人たちが苦しい(健康アウトカムが悪い)と思います。それを包括する便利な概念は無い(日本語ではワーキングプアとか言いますがあれはバズワードですね)ので、incomeでの切り口でカバーされるのが良いかと思います。 
関連して、水道や電気などの公共インフラを止められたことがあるか、なども研究されています。民医連などで入院スクリーニング等されています(最初に紹介したURLを参照してください)。

・上記に関連してwealth(資産)での切り口もあります。現実の感覚にも合うと思います(所得は少ないけど貯金がたくさんある高齢者はたくさんいますよね)。が、その資産についての情報の正確な把握が困難なので妥当な研究は少ない印象です(ので無視でよいと思います)。現実的には考慮しなくてよいと思います。

・サポートする家族がいるかどうか:いわゆるsocial supportですが、論文ではlinving aloneとか表現されたりもしています。marital statusとかとも表現されることもあります。mortalityとの関連もvalidです。ここら辺は結構重要だと思うし、現場感としても重要ではないでしょうか。生きる意欲とか治療する意欲にも関連しそうじゃないですかね。冒頭のURLでいうところのhuman networkに包含されるでしょう。

・上記にも関連しますが、特に高齢者だといわゆる自宅なのか、施設なのか(instutionalized)ってのも重要なSDHかもしれませんね。
現実の診療でも、これで治療方針変わってきませんかね。比較した研究はあまりないかもしれませんが、施設高齢者に限った研究は結構みかけます。






https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmsa073350

September 20, 2007
N Engl J Med 2007; 357:1221-1228
DOI: 10.1056/NEJMsa073350
We Can Do Better — Improving the Health of the American People
Steven A. Schroeder, M.D.

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