国立大学は授業料を挙げるべきか論争は、そもそも筋がおかしい。不要なのは文科省じゃないの?

国立大学がどうあるべきかの議論の中で、ほぼ確定している印象なのは、「国としてはこれ以上は、使いやすいお金は出さないけど、縛りはなかなか緩めないよ」ということです。

これは文科省がというよりは、財務省の方針に思えます。


国立大のお金の議論の前に、基本的な大学の収入の現状を理解しておくことにします。

以下の日経の記事にもあるように、

「国立大は全体で見ると運営費交付金をはじめとする国の支出が病院収入を除いた収入の7割弱を占める。対して私立大は1割程度だ。」

ということで、収入の7割が補助金、という典型的な補助金ビジネスモデルです。

これがいいかどうかは別として、それが現実。

で、そのメインの収入である交付金が、2004年の独立法人化のあとから毎年1%削減されてきました。

ものすごいデフレ圧力です。

支出の方ですが、以下にもあるように、教職員の人件費で7割ほど(+光熱費消耗費)ですので、いわば、交付金=人件費、な構図です。

一方で、大学には最低何人の教員がいないとだめとかも法律で決まっております&日本はアカデミアにかぎらずいきなり解雇はできませんので、結果、ここ10年くらいの日本のアカデミアで起こっているのは、若手教員(いわゆるロスジェネ世代)の就職先がない、ということになります。

http://scienceandtechnology.jp/archives/19273

ロスジェネ世代が別に優秀じゃないとかそういうことではなく、文科省の政策の結果なのです。

文科省が旗を振って、ポスドク1万人計画をやっておきながら、

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%89%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC%E7%AD%89%E4%B8%80%E4%B8%87%E4%BA%BA%E6%94%AF%E6%8F%B4%E8%A8%88%E7%94%BB

文科省が、国立大学法人化をして、文科省が、交付金を毎年削減=新しいポストは作らない、という構図を作ってきました。

つまり、文科省による愚作のたまものなわけで、ロスジェネ世代は被害者なわけです。

哀れすぎる・・・・・


話を、大学の収入の方に戻します。

そもそも国がこれ以上出さないよ、という姿勢はどうなんでしょうか。

私米国で研究していたことがあるのですが、その時に欧州からきていた同僚と世間話したときに、国立大の授業料の高さに呆れられました。

「はぁ?年間50万円とかそれ国立じゃなくて私立でしょ?何言ってんの苦笑」と。

そうなんです欧州の国立大って、無償~年1万円くらいなんですよね。

なんでそんなに安いのか?

最近日本のマスコミで「大学はもっと自分で稼げ!」とかよく言われますけど、欧州の国立大はみんな稼いでいるのでしょうか。

国立大1つ1つ調べる余力はないので、正確には回答できませんが、そもそも国がもっとお金出しているようなのです。

https://www.shidaikyo.or.jp/riihe/research/49.html

大学が稼げというのはある程度は理解します。

しかし現実、大学の知で稼げるのは一部のトップ校くらいで、多くの地方国立は稼ぐことはできないでしょう。できたとしても、コスパが悪いでしょう。

稼げないとなると、もはや学生からの授業料の値上げで対応、これしかないわけで、ずっとやっている印象の「国立大学は授業料を挙げるべきか論争」これは議論するまでもなく上げるしかない、という結論だと思います。


実際、関東圏の国立大学がここ数年値上げしてきています。

・東工大や千葉大などが表明…国立大「授業料値上げ」それぞれの事情

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200320-00010004-newswitch-bus_all

いろいろ考えて、というよりは、それしかないのが現実かなと。

しかしこれをすれば、お金のない家の子どもが大学に行けなくなるだけではないでしょうか。

国立大という名前ながら、自己負担が大きすぎて大学に行けない子をつくるという、なんとも残念な現状です。

ではどうすればよいか?

私が思うのは、国が大学に交付金をあげるのをやめて、国立大はすべて私立大にして、これまで国が大学に配っていた交付金を、18歳の子どもたちにがばまけばいいのではないかと思います。

調べてみれば、「運営費交付金」が約 1 兆 2,000 億円だそうですので、

18歳人口約100万人で割れば、1人当たり100万円あげることができることになります。

これを、「高等教育バウチャー」にして、18歳に配布し、18歳は、入学する大学に渡すことで、授業料免除、にすればいいと思います。

そもそも、国立大に税金を入れることは、大学に行かない人≒働く人、にとっては不公平であるともいえるので、バウチャーではなく、大学にいくいかないにかかわらず、現金給付でもいいように思います。

これで、大学に行く人も行かない人も平等ですし、国立大も私立大も平等に競争ができます。

18歳の子も、100万円を渡されれば、もっとシリアスに大学を考えるのではないでしょうか。

また、こうすることで、さらに良いことも生まれます。

今、国立大にいる文科省からの出向を断ることもできます。

一般に、出向理事は2年でいなくなります。その人はそもそもその大学のことを知りません。そんな人たちが、大学のことを真剣に経営できるとは到底思えません。今すぐに廃止してほしいですが、交付金という餌をちらつかせることで、利権を確保している文科省。

これをなくするには、交付金の削除しかないと思います。

しかし交付金をなくせば、大学授業料は何倍にもなります。

生まれた家の経済状況で、子どもの進学の夢が奪われるべきではないと思います。

だからこそのバウチャーです。

文科省をスリム化することで、バウチャーとして給付できる金額も増加できるのではないでしょうか。

これにより、そもそも文科省の高等教育担当局も廃止できるのではないでしょうか。


もっと言えば高等教育担当局に限らず、小中高校も、都道府県・市町村に教育委員会があるんだから、そもそも文科省って必要なの??と思います。

幼稚園も文科省ですが、保育園を所管する厚労省との綱引きは終わることが無いようですが、ここも厚労省に渡すことで、何かとすっきりします。

などなど考えれば、そもそも文科省は、文化庁とスポーツ庁以外は、不要と言えませんでしょうか。

文科省の職員数は「機関別内訳は本省が1,747人(うち、女性425人)、文化庁249人(うち、女性71人)、スポーツ庁116人(うち、女性18人)」だそうですので、

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%87%E9%83%A8%E7%A7%91%E5%AD%A6%E7%9C%81

平均職員コスト(年収+社会保険料)1000万円で計算すれば1000億円がさらに捻出できそうです(経費などもあるのでもっとねん出できるでしょう)。

このようにして、国立大と私立大を適切に競争させて、かつ、うまれた家の経済状況に関わらず、誰でも大学に行くことができるようにしてほしいと思います。

不要なのは、余計なことをやってお金を稼いでいる人たちです。


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