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アパレル店舗の OMO に学ぶ、 戦略を実行する仕組みをつくる方法

アパレル店舗での取り組みをご紹介します。そこから、戦略と実行の視点で学べることを解説しています。

この記事を読んでいただきたいと思うのは、戦略をつくって実行に移す役割にある方です。また、販売やマーケティングをやっている方にも参考になればと思います。

アパレル店舗の事例から戦略を実行する仕組みをつくる方法を掘り下げ、社内にある資産を有効活用し販売やマーケティングを成功させる方法を見ていきます。

アパレル店舗での OMO 事例

日経新聞で、アパレル店舗での OMO の取り組みが特集されていました。

以下は記事から引用です。

駅ビル 「ルミネ北千住」 (東京・足立) にあるアパレルブランド 「SHENERY (シーナリー) 」 。8月中旬の午前中、販売スタッフの浜山咲子さん (26) はエレベーターホールでポーズを決めて、同僚からスマホで撮影をしてもらっていた。来店客が比較的すくない午前中に店頭で販売する服を試着し、自らモデル役を務めている。

撮影が終わると写真を手早くスマホのアプリに登録した。商品情報に加えて「インナーを変えると秋まで使えます」 「しわになりにくい素材です」 といった着こなしのお薦めポイントも入力。一連の作業の後、自社の EC サイトに浜山さんのコーディネート画像が掲載された。浜山さんは 「1日1~2回はコーディネート画像を投稿している」 と語る。

浜山さんが使っていたアプリはバニッシュスタンダード (東京・渋谷) が提供する 「STAFF START (スタッフスタート) 」 。店員が EC サイトに投稿したコーディネート画像を見た顧客が、実際に買い物をしたのかも集計・分析できるのが特徴だ。

投稿した画像の服が EC で購入されると、投稿したスタッフの販売実績として計上される仕組みとなっている。

日経 2021.8.23
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出典: 日経

スタッフスタートのアプリでやっていることは、ブログなどのアフィリエイトに似ています。アプリ内でショップ店員が紹介した商品が売れれば、報酬の一部としてその店員に還元される仕組みです。

LINE での E2C モデル

LINE の有効利用も興味深かったです。続けて同じ日経からの引用です。

今後は LINE と組み、サービスを拡充する。

店員が 「友だち」 登録をした顧客や、そのグループに対して、メッセージを配信できるようになる。顧客に応じたコーディネート提案がしやすくなる。店員は商品のバーコードを読み取るだけで、商品情報を顧客に LINE で送れる。

販売スタッフが常連客と LINE で情報のやり取りができるようになり、店舗にも愛着を持ってもらえる。多くの顧客に一斉送信もできるので、EC 関連の仕事の負担も少なく、販売スタッフが効率的に働ける。メッセージ以外にも、ビデオ通話やライブ機能を活用したオンライン接客、ライブコマースも可能になる。

日経 2021.8.23


LINE でのやりとりのイメージは、このような感じです。

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出典: 日経クロストレンド

お客は、店舗スタッフと LINE で直接つながり、オンライン接客を受けられます。

スタッフスタートを取り上げた日経クロストレンドの記事では、「E2C (エンプロイー・トゥ・コンシューマー) 」 と、従業員がダイレクトにお客とつながるモデルとして表現されています。

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出典: 日経クロストレンド

* * *

学べること (2つ) 

ではここからは、この事例からビジネスに学べることを見ていきます。

2つあります。

✓ 学べること

  • 戦略を実行する仕組み

  • 独自資産の活用最大化


では順番にご説明しますね。


[学び 1] 戦略を実行する仕組み

ご紹介した取り組みは 「戦略を実行させる仕組み」 という観点から学びがあります。

事例での戦略は OMO で、OMO とは Online Merges with Offline の略です。実店舗 (オフライン) が、オンラインの世界に取り込まれていきオフラインとオンラインが一体になっていく世界です。アプリや各種の IT ツールを導入し、アナログのデジタル化による省力化、価値創出を目指します。

これは OMO に限らずですが、戦略は実行されることが大事です。逆に言えば、実行されない戦略は絵に描いた餅に過ぎません。

戦略を実行するためには、上から現場への掛け声だけでは足りず、もちろん繰り返し伝えることは重要ですが、現場が動ける仕組みに落とすことが大切です。

今回の事例では、スタッフスタートというアプリがその仕組みにあたります。

注目したい点は、ショップ店員がコーディネートを撮影し写真を投稿し、利用者が買ってくれれば投稿した店員の実績になり、評価や報酬が得られることです。インセンティブの設計があるわけです。

アパレル販売には 「店舗第一」 の慣習があり、これまで EC 販売はどちらかと言うと重視されていませんでした。ショップ店員の評価に EC 販売の分は含まれておらず、店頭での販売から実績が評価されました。

こうした今までの状況を変えることなく、ただ 「これからは OMO だ」 と言うだけでは、現場では戦略は実現されません。戦略は現場メンバーが何をすればいいかまで具体化され、自分ごと化が起きることによって実行されるのです。

この観点から、あらためてスタッフスタートを見ると、OMO という戦略が現場で実行される仕組みがつくられていることがわかります。

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出典: 日経


[学び 2] 独自資産の活用最大化

アパレル店にとってショップ店員は 「資産」 と言える存在です。ファッションへの目利き力、服・アクセサリーやコーディネートの魅力を伝える力、接客でのコミュニケーション能力を持っています。

こうした店員の能力を実店舗だけではなく、販売アプリや LINE でのオンラインの場でも発揮してもらうのが、今回ご紹介している事例のもう1つの意味合いです。つまり、ショップ店員という 「独自資産」 の活用を最大化させる狙いです。

自社の業績が上がり、ショップ店員の活躍の場・やりがいが増え、何よりもお客さんに喜んでもらえます。

学びの一般化

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それでは最後に、戦略、販売やマーケティングの観点でビジネスに学べることを整理してみましょう。

自分たちへの問いかけとして、次のようなことを考えてみるといいです。

✓ 学び (自分たちへの問いかけ) 

  • 戦略は飾り物や単なるスローガンになってしまっていないか

  • 現場のメンバーが戦略を自分ごと化し動けているか

  • 戦略を現場が実行できるために、どんな仕組みにすればいいか

  • 自社の資産の中で、もっと活用できる資産はないか

  • 資産を有効活用するために、どんな機会や仕組みをつくればいいか


まとめ

今回はアパレル店舗の事例から学べることでした。

最後にまとめとして、2つの学びのポイントです。


[学び 1] 戦略を実行する仕組み

  • 戦略を実行するためには、上から現場への掛け声だけでは足りず (もちろん繰り返し伝えることは重要) 、現場が動ける仕組みに落とすことが大切

  • スタッフスタートでは店員が動くインセンティブの設計がある

  • ショップ店員が投稿したコーディネート写真から利用者が買えば、その店員の実績評価や報酬が得られる。店員アフィリエイトのような仕組み


[学び 2] 独自資産の活用最大化

  • アパレル店にとってショップ店員は 「資産」 と言える存在。ファッションへの目利き力、服やアクセサリーの魅力を伝える力、接客でのコミュニケーション能力を持ってる

  • 店員の能力を実店舗だけではなく、販売アプリや LINE でのオンラインの場でも発揮する狙い

  • 自社の業績が上がり、ショップ店員の活躍の場・やりがいが増え、何よりもお客さんに喜んでもらえる

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