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生物のおはなし#その4

こちらはラジオ「長澤翼のとなりの席」でお話した内容です。音声の方がご都合良い場合は会よりご視聴いただけます↓

生物のお話のつづき#その4と言うタイトルでお届けします。

■脳の神経細胞と記憶の仕組み
何か事故などで頭を強打し、記憶が飛んでしまうというのはドラマやアニメなどで見かけるシーンですねよね。頭を打って記憶喪失なんて事は本当にあるのでしょうか?
脳の神経細胞は情報処理および伝達に特化した細胞です。その構造は独特です。構造をおはなしすると、訳がわからなくなってしまうかもしれませんので、構造の詳細はこちらでは書きません。脳の情報伝達の仕組みですが、神経細胞が刺激を感じると活動電位が発生して、それを信号として細胞間で情報を伝達させます。神経回路は電気回路と異なり、ある細胞と受け手となる細胞との間にシナプスと言うわずかな隙間が空いているので、その隙間に電気を通す事はできません。生物はこのシナプス間での化学物質による信号の伝達を行っているというのが大雑把な情報の伝達方法の仕組みです。
脳は神経細胞が複雑に結びついたネットワークが作られております。脳に記憶が作られると言う事は、シナプスの情報の伝わりやすさが変化するという事です。記憶には長期記憶と短期記憶の2種類があり、テスト前夜の一夜漬けの暗記などは短期記憶にあたります。短期記憶は長くても数日しか保存されません。その中で忘れなかった記憶がやがて長期記憶に差し替えられ記憶として定着していくわけです。この記憶の差し替えには大脳の海馬(かいば)と呼ばれる部分が関与しております。
記憶喪失は物理的、心的要因で海馬がダメージを受けることで発生します。つまり頭を強打して記憶喪失するというのは、現実に起こるのと、その状態は生命自体が危険な状態ということを意味しております。

■ES細胞について
続いて万能細胞と言われるES細胞についても書きます。
一度壊れてしまうと再生しない神経系の細胞を、人工的に回復させることはできるのでしょうか?そのような再生医療で注目を集めているのが幹細胞と呼ばれるものです。幹細胞は分裂して自分の完全なコピーを作れ、いかなる細胞への分化できる群の可能性を持つ多分化機能を合わせ持ってる細胞です。幹細胞で一般にも広く知られているのは胚性(はいせい)幹細胞です。Embryonic stem cells英語の頭文字からES細胞と言われております。ES細胞は受胎直後の胚の、身体の元になる部分の1部を取り出して作られ無限に増殖することができます。さらに多様な細胞に分化する能力を持っているので培養液のいくつかの要素を変えることで、神経細胞、心臓や筋肉の骨格筋、血管や血液細胞をはじめ、皮膚の細胞までも作ることができます。これがいわゆる万能細胞と言われる所以で、医療分野で応用が期待され実際活用もされています。
ただしES細胞の活用は倫理的な問題があります。受精卵から胚を取り出す必要があることから、これは生命の芽を摘み取ってしまうことを意味します。先進国においても人のES細胞作製に厳しい制限を設けている国は少なくありません。我々が住む日本も例外ではなく、不妊治療などで凍結保存された胚のうち、母体に戻されず廃棄が決定した胚に限って、人のES細胞の作製が認められています。

■笑うと増える細胞
続いて笑うと増える細胞についてお話します。「笑う門には福来たる」と言いますか笑うことは福だけではなくて健康も引き連れて来てくれることが色々な研究から科学的に明らかになっております。
特に注目されているのが免疫力との関係です。1980年代の研究では、笑うことによってリンパ球の1つであるNK細胞の活性化が見られると報告されました研究です。その研究内容を受けて、被験者にお笑いライブを見せてNK細胞の数の増加を調べる実験も実施されました。NK細胞のNKはナチュラルキラーの略で、我々の体に自然に備わっている免疫機能です。解釈によっては生まれながらの殺し屋と受け取ることもできる細胞です。恐ろしい名前ではありますが、彼らが殺すのは、がん細胞やウィルスに感染した細胞です。頼りになる警備的な機能の細胞です。
NK細胞はどういう仕組みかというと、細菌やウイルス、がん細胞など身体にとって異物の断片を自分の細胞表面上に取り込みます。T細胞を活性化させる細胞の抗原提示細胞は、体内を見回り薬異物を見つけると細胞内に取り込みヘルパーT細胞にその情報を伝えます。
情報を受けたヘルパーT細胞はキラーT細胞へ攻撃を指令します。その攻撃力は凄まじく、がん細胞を殺す破壊力をもっています。また、ヘルパーT細胞はB細胞に指令を出し、指令を受けたB細胞は、敵捕獲に向けて抗体を作ります。抗体が異物を攻撃するわけです。2度目に異物が入ってきたときには抗体を一気に作ることができ撃退することが可能になります。
一度かかると二度かからない病気があるのは、この仕組みが働いていて、予防接種もこのシステムを利用してウィルスの毒性を弱めたものをあらかじめ体内に入れ抗体を作っていくというものです。NK細胞はじめ、これらの細胞に活躍してもらうためにも笑いのある生活を心がけるといいかもしれません。

さて、いかがでしたでしょうか。このような生命科学は近年目凄い勢いで発展を遂げております。この発展は医療への寄与が大きな目標となっております。面白い分野だと思いませんか?
最後まで読んでいただきありがとうございました。

■追伸
こんなお話をしておりますが、本丸はアート活動です。宜しければ作品をのぞいて頂けるとうれしいです↓


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