「マチネとソワレ」を読んで

ちょうどkindleで3巻まで無料になっていたので読んでみました。
じゃんじゃんネタバレが出てきますので、ご注意ください。

作品の前知識は無く、ノーマークなマンガでした。
マンガが好きだと自負していましたがお恥ずかしい。このマンガを見過ごしてきた自分が恥ずかしいと感じるほどに、面白かった。どうして今まで知らなかったのかと。

演技を題材にしたお話だが、スポーツマンガのような滾りを感じて脳が熱くなった。
始めのパラレルワールドへとんだときは急なSF感を感じて、安っぽくなってしまうのかと不安になったがそんなことはなかった。
主人公の目標にこじつけ感や無理もなくしっかり腑に落ちた。
この作品の面白さの一つはきちんと納得できるストーリーやキャラクター達だ。
演技の世界における勝ち負けなんて基準もない曖昧なものも、そこはパラレル設定を活かして、作品や主人公、そして読者の私たちのなかでの勝敗の基準を明確に設定されていた。
そういった細かい点でのほつれもなく、まったく躓かずに読むことが出来た。
作者さんは世界観やキャラクターを作りこんでいるように感じた。

今日の時点では3巻までの内容でしか語れないが、役者マンガであればどうしても「アクタージュ」が頭に出てきてしまう。
あれは本当に面白い漫画だった。
そのアクタージュと比較されて”2号くん”と思ってしまうのかと不安になったが、それも杞憂だった。
同じ芸能の世界だが別物。
アクタージュはまさにバトルマンガだった。役者同士の個性や技術をぶつけ合い高め合う。相手の役者に負けないために自分の中の扉を開いたりヒントを探しに行く。本当にジャンプらしいマンガだった。

「マチネとソワレ」はそんな清々しい青春とはまた違った。
夢破れた人や自分の人生を歩めない人が踏ん張って血反吐を吐くマンガであった。汗キラキラよりも涎汗鼻水にまみれながらも歯食いしばっている彼らに引き込まれてしまう。

そしてわたしが読後これほど高揚しているのは要所要所に散りばめられた糸が落とすところでしっかりと引っ張られて縫い目が現れたからだ。
自分でもとても抽象的な表現だとは思うが、頭の中のイメージは言い表せていると思う。複線回収とはまた違う感覚。
その縫い目がストーリにはそれほど大きく影響されるものとは違うが、この表現はここでの展開に(意味的にではなく表現的に?)繋がっているのか!と高揚する。
例えば、丞さんが指を切るシーンを見て、組抜けするときのやつだ…あ、だから舞台に迷惑をかけたら指を切れと提案されたのか、指切ったというセリフは…なるほど!!!みたいな感じである。

そして3巻までのお気に入りのシーンは母親に会いに行く話だ。兄との圧倒的な差を見せつけられて絶望しながら家を後にする誠を後ろから呼び止める母親。この展開とページ作りは予想外で上手かった。
全体的に展開の魅せ方が上手いなと感じる点が本当に多く、さすがベテランだなと思う。
私は初見を電子で読んだが、見開きで見れる大きめの端末か紙で読む方が面白さを感じることが出来るなと感じた。

さて、今私は読み終わって高ぶったテンションのまま書いている。
正直自分でも文章として整理できていないし、感じたこと全てを書き出せているわけではないことは重々承知だが、この!読んだ後の上がったテンションは今しか書けないものだと思って文字をぶつけている。

読み返したら何が言いたいのか伝わらないと反省するのかもしれないが、このマンガが面白かったということはちゃんと伝えられるはずだ。

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