ながれる【流れる】→121日目/掌編小説
ながれる【流れる】
水の流れによって物が動かされる。
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夜の川面には、筆をつかって絵具を散らしたかのように、たくさんの桜の花びらが浮かんでいた。
深夜一時。川辺には夜桜を見に来た僕ら以外、誰もいない。
「あれ、乗っちゃおうか」と、彼女が指さした先を見ると、桟橋に古いボートが二艘、繋がれていた。
彼女は僕の制止も聞かずに桟橋へ向かい、重そうなロープを解きはじめる。華奢なパンプスでよろける姿を見ていられなくて、仕方なく手を貸した。
ロープを解かれたボートに、彼女がひらり