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素敵な話でちょっとキモい私/CAP松村

ある平日の午後。

焙煎した珈琲豆が沢山あまったので、そのえさんに届けた。そのえさんの庭の紫陽花がたくさん咲いていて、あまりにもきれいだったので、大きなのを二輪もらった。

鮮やかな紫陽花を持って歩いていると気分も上がる。

自宅近くのおばちゃんが庭の手入れをしていたので、思いつきで紫陽花を一輪プレゼントした。

普段は挨拶くらいしかしない、ほとんど話したことのないおばちゃんだけど、「わぁきれい!」っとめちゃめちゃ喜んでくれた。

少し立ち話をした後、庭にあるハンカチの木という枝を何本か切ってくれた。(すごく可愛い花!)

スキップしたくなるくらいうれしくなり、そのまま自分の家を通り越して、最近ご無沙汰している知人宅に残りの一輪を持っていった。

「わぁかわいい!ありがとう!」と言ってもらった。(私じゃなくて紫陽花やけど)

そのえさんに「ちょーだい!」と自分からお願いしてもらった紫陽花は手元に残らなかったけど、なんかいい気分。
帰ってハンカチの木を花瓶に生けた。

私の住む街は、ほとんど協同でなにかすることはないし、助け合うこともない。駅や役所やコンビニも近いし、困ったことは行政に頼れる仕組み。更に常識的な人が多くてとっても住みやすい。人間関係は希薄かもしれないけど、煩わしさはなく、気持ちよく生活している。

そんな街で紫陽花を渡すことは、簡単な割には、新しい空気を運んでくれて、いい効果がたくさんあるように感じた。

きっと、思いもよらなかった人(すなわち私)から、不意におおきい紫陽花をもらうことは、けっこう楽しいんじゃないかな。(何より私が楽しいんでした)

花は自分で花粉を運ぶことができないので、蜂や蝶が花から花へ花粉を運ぶ。

花粉を運ぶ虫を送粉者と呼ぶらしい。

目的は違うけど、私も次は誰に意外性(紫陽花)を運べるかが楽しみ。

人んちの紫陽花やけど。たぶんそのえさんも喜んでくれるはず。

関係の希薄な街に小さな実をつける「送粉者ごっこ」というと、更に面白がってくれるはず。

なんてロマンチック!

というような思いつきの妄想遊びがけっこう好きです。
(すぐに飽きるけど。)

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