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ツバメroof物語(小説編)

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堺市にあるカフェのようなお店の話。 自分たちでDIYして2年がかりで作りました。 まだまだ進化中。日常を小説風にしています。 お店にもぜひ遊びにきてください。
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#珈琲豆

【ツバメroof物語①】(半分フィクション半分ノンフィクション)/石井-珈琲係

~プロローグ~ 『飽きた』  これが11℃の二人の口癖で、私はいつもその言葉に振り回される事になっていた。  だけど最近では、この「振り回される」という表現は語弊が出てきた様に感じる。  私自身「振り回される」事を楽しむようになってきたし、何より、私も二人と一緒にいる内に飽きる体質がうつってきたせいかもしれない。    11℃というのは、建築士二人のデザインユニット名で、一人は私の姉でアイ、もう一人は姉の友人のその子さんだ。  何しろこのユニット名も、元々はミドリスイッチ

【ツバメroof物語⑥】(半分フィクション半分ノンフィクション)/石井‐珈琲係

 カフェ担当珈琲係(仮)というものの、珈琲の事はよくわからない。ただ唯一の救いは、珈琲が好きな事だ。よくカフェに行ったり、珈琲豆を購入したりしていた。     ヨシ!いける気がしてきた!(笑)  でも…逆光のカウンターで珈琲をにいれる湯けむりの中の寡黙なマスターを想像したが、到底無理な気がしてきた。珈琲薀蓄は言えないし、ちょび髭も生えてない。蝶ネクタイだって柄じゃない。  夕子は思考がぐにゃりと変換されたと思っていたが、やっぱりやる前に冷静さを失わない自分も嫌いではない。そ

【ツバメroof物語⑧】(半分フィクション、半分ノンフィクション)石井‐珈琲係

 順番に手焙煎している間、市販の珈琲袋がちらちら視界に入る。私も時々購入するちょっと高めの珈琲袋。そんな私をよそに、しずくさんが、粗熱が取れた珈琲豆をゴリゴリとミルで挽いてくれた。  鼻の奥が広がる芳醇な香りは、焙煎時の香ばしさとは違った、深みのある香りだ。    そしていよいよ、珈琲を淹れる時が来た。一番重要だと思っていたが、なかなかこの時までも重要だった気がする。  しずくさんが、ケトルの細い口からお湯を注ぐ。全体に珈琲を湿らせた頃合いで、手を止める。煎りたての珈琲豆