マガジンのカバー画像

ツバメroof物語(小説編)

13
堺市にあるカフェのようなお店の話。 自分たちでDIYして2年がかりで作りました。 まだまだ進化中。日常を小説風にしています。 お店にもぜひ遊びにきてください。
運営しているクリエイター

#オープン

【ツバメroof物語①】(半分フィクション半分ノンフィクション)/石井-珈琲係

~プロローグ~ 『飽きた』  これが11℃の二人の口癖で、私はいつもその言葉に振り回される事になっていた。  だけど最近では、この「振り回される」という表現は語弊が出てきた様に感じる。  私自身「振り回される」事を楽しむようになってきたし、何より、私も二人と一緒にいる内に飽きる体質がうつってきたせいかもしれない。    11℃というのは、建築士二人のデザインユニット名で、一人は私の姉でアイ、もう一人は姉の友人のその子さんだ。  何しろこのユニット名も、元々はミドリスイッチ

ツバメ物語⑩/珈琲係・石井

ところで、お店づくりの工事は遅々として進んでいなかった。暇なのは夕子だけという日もあり、そうなると、建築士がいない一人ぼっちの現場で出来る事は掃除しかなかった。 オープンは当初の目標時よりすでに3か月遅れていた。私は、掃除するか、珈琲を焙煎するか、色々なお店に珈琲を飲みに行くか、という生活を送っていた。 内心はこのままオープンするのがまだまだ先になり、挙句の果てにはやっぱりオープンしない、という選択肢もまだ残っているのではないかという一抹の不安もあった。 そんなある日「

ツバメroof物語⑫/珈琲係.石井

 工事を進めながら、私は調理師免許の勉強も進めていた。(愛に「取り」って言われた)学生時代は苦手だった勉強も、目的と興味があれば出来るもんだなと思ったけど、年齢的な問題で脳内にはなかなか知識が蓄積されなかくて、ややこしい横文字に苦戦した。  工事の中で何が一番大変だったかというと、綿壁を剥がす作業だったに違いない。キラキラのラメが入ったあおさのりみたいな綿壁を、霧吹きで湿らせてから、ヘラや下敷きでこそげ落として行くという、途方もない作業。地味な上、埃まで舞う。    三和土