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ツバメroof物語(小説編)

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堺市にあるカフェのようなお店の話。 自分たちでDIYして2年がかりで作りました。 まだまだ進化中。日常を小説風にしています。 お店にもぜひ遊びにきてください。
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#DIY

【ツバメroof物語①】(半分フィクション半分ノンフィクション)/石井-珈琲係

~プロローグ~ 『飽きた』  これが11℃の二人の口癖で、私はいつもその言葉に振り回される事になっていた。  だけど最近では、この「振り回される」という表現は語弊が出てきた様に感じる。  私自身「振り回される」事を楽しむようになってきたし、何より、私も二人と一緒にいる内に飽きる体質がうつってきたせいかもしれない。    11℃というのは、建築士二人のデザインユニット名で、一人は私の姉でアイ、もう一人は姉の友人のその子さんだ。  何しろこのユニット名も、元々はミドリスイッチ

【ツバメroof物語②】(半分フィクション半分ノンフィクション)/石井-珈琲係

11℃の二人と夕子でツバメroofというほんのちょっと変わったお店を始めてこの冬で4年が経った。  といっても、全員がダブルワークのため、開いている日を全部足しても半年分ないかもしれない。  働く上ではストレスを生じる事はしないという、暗黙のルールがなんとなく出来上がってきた。決して無理はしないスタイル。  無理して珈琲豆は煎らないし、無理してまでお店は開けない。それは道楽だと言われた事があるが、あれは、呆れていたのか、褒めてくれたのかどっちかなぁ…なんて夕子は時々思い出し

【ツバメroof物語③】(三人の半分フィクション半分ノンフィクション)/石井-珈琲係

そもそもツバメroofというお店が始まったきっかけはこうだ。 夕子とアイの亡くなった祖母の家が、数年間空き家だった所をドライブ中に祖母の近くのコンビニに寄ろうとなり、突然アイが『おばあちゃんちで何かはじめよう』と言い出した事だった。  それは『今日晩ごはん食べに行こう』くらいのノリだった。   今思い出してみても、その『何か』は、あまりに突然で誰も分かっていなくて、とりあえず『何か』だった。  分からないものを始めるのは、苦手だった夕子は、ハンドルを握りながらアイに『何

【ツバメroof物語⑤】(半分フィクション半分ノンフィクション)/石井‐珈琲係

お茶を飲み終えて、何かが剥がれた夕子は、この場所が何かになる事に対して受け身で有ることに気がついた。  答えを求めても、だいたい瞬間的生物アイから返ってくるはずはないのだ。ナンセンスな質問だったんだ。  自分で考えて、答えを見つけ出せばいいんだ、と夕子はハッとして…そして呆然とした。  今回に限らず今までもずっと受け身だったかもしれない。楽しそうな事にすぐ首を突っ込んでいたが、それはいつも誰かが用意していたものだったかもしれない。   だけど、自分がどうしたいのか、さ