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ツバメroof物語(小説編)

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堺市にあるカフェのようなお店の話。 自分たちでDIYして2年がかりで作りました。 まだまだ進化中。日常を小説風にしています。 お店にもぜひ遊びにきてください。
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#小説風

【ツバメroof物語①】(半分フィクション半分ノンフィクション)/石井-珈琲係

~プロローグ~ 『飽きた』  これが11℃の二人の口癖で、私はいつもその言葉に振り回される事になっていた。  だけど最近では、この「振り回される」という表現は語弊が出てきた様に感じる。  私自身「振り回される」事を楽しむようになってきたし、何より、私も二人と一緒にいる内に飽きる体質がうつってきたせいかもしれない。    11℃というのは、建築士二人のデザインユニット名で、一人は私の姉でアイ、もう一人は姉の友人のその子さんだ。  何しろこのユニット名も、元々はミドリスイッチ

【ツバメroof物語③】(三人の半分フィクション半分ノンフィクション)/石井-珈琲係

そもそもツバメroofというお店が始まったきっかけはこうだ。 夕子とアイの亡くなった祖母の家が、数年間空き家だった所をドライブ中に祖母の近くのコンビニに寄ろうとなり、突然アイが『おばあちゃんちで何かはじめよう』と言い出した事だった。  それは『今日晩ごはん食べに行こう』くらいのノリだった。   今思い出してみても、その『何か』は、あまりに突然で誰も分かっていなくて、とりあえず『何か』だった。  分からないものを始めるのは、苦手だった夕子は、ハンドルを握りながらアイに『何

【ツバメroof物語⑦】(半分フィクション、半分ノンフィクション)/石井‐珈琲係

 いつもは、喫茶室になっている10畳ほどの和室に案内された。ちゃぶ台の上には、カセットコンロ、あとは珈琲を淹れる時に必要な物がセットされていて、私達を待ち構えている。まず手書きのリーフレットで丁寧に説明を受けた。そして、お手本にと焙烙で生豆を煎り始めた。   しずくさんは優しい手つきで、静かに物を触る。それは流れるようで無駄のない所作だ。夕子みたいに全然ガサツじゃない。少し心配になってきた。 …が、ここは落ち着いたふりしていこう。   へぇ、珈琲豆ってこんな色なんですね