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自然よもやま話「メジロの巣作り その1」

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「自然よもやま話」

はじまりはじまり

今回は「東京都檜原 都民の森」で自然ガイドを務める浦野守雄さんにお話をお聞きしました。

浦野守雄(うらの・もりお)
昭和32年生まれ、東京都あきるの市出身。あきる野市・檜原村を中心に活動している自然ガイドのプロフェッショナル。さまざまな生きものの写真や動画を日々撮影。「東京都檜原 都民の森」にて自然ガイドや林道の整備、展示企画などを行う野外利用指導員として30年以上勤める。現在は檜原村にて「喫茶おいわけ」を夫婦で営業中。

寒さ厳しい冬。野鳥たちはあっちへ飛び、こっちへ飛び。
食べ物をもとめて飛び回ります。枝に残ったカキの実は野鳥たちの貴重な食糧。常連客は、甘いものが大好きなメジロです。

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▲カキの実を食べるメジロ(撮影:浦野守雄)

浦野さんが見せてくれたのは、そんなメジロが春になり、巣をつくっている動画です。メジロは一体、どのような巣をつくるのでしょう。

▲メジロが巣作りしている様子(撮影:浦野守雄)

巣に使っている材料のお話

――ちょこちょこと、器用にくちばしを使って懸命に巣作りをしていて、可愛らしいですね。映像を見てみると、これはビニール紐でしょうか?人工物をかなり使っているように見えます。

(浦野)この紐……私は普段「スズランテープ」と呼んでいるんですが、メジロだけじゃなくて、ガビチョウもヒヨドリもモズも、みんなこのスズランテープを好んで使うんですよ。
今、野鳥の巣は「完全に自然のもので作られた巣」を見つけるほうが難しいくらいです。

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▲ビニール紐をくわえてやってきたメジロ。赤い矢印の先はすべてビニール紐。ふんだんに使われている。

――私は以前エナガの巣を見た事があるのですが、それにもこの「スズランテープ」が使われていました。

(浦野)エナガも使いますね。とにかく今の野鳥の巣は、どれも科学繊維的なものが入っています。

――このふわふわしたものは、なんでしょうか?これも人工物……?

(浦野)ふわふわした部分は、クモの糸やガの繭を使っていますね。この巣はほとんどガの繭だと思う。黄色いのも、自然のものです。ヤママユガなんかの黄色い繭をほぐして使っているね。

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▲くちばしにクモの巣をからめて持ってきたメジロ。白や黄色のふわふわしたワタの部分は、クモの巣やガの繭。

(浦野)メジロの巣にはスズランテープとクモの糸と蛾の繭と……あとはコケが使われていますね。コケは、地上や木に生えているものを持ってきています。コケの種類まではちょっとわからないけど……。

――結構、長さがあるコケですね。

(浦野)そうですね。コケは鳥がよく使う巣材です。

たとえばヤマガラの巣なんかは、コケが巣材の7割をしめています。巣作りの初期のころはほぼコケしか運び込まないと言ってもいいくらい。

メジロやシジュウカラ、オオルリなんかは、地上に張っているコケを使うことが多いです。でもヤマガラは、私がみた限りの話だけど、木の幹についているような短―いコケをとにかく集めて積み重ねているパターンが多い。

オスとメスの見分けのお話

▲メジロが巣作りしている様子その2(撮影:浦野守雄)

(浦野)(上の動画1分ごろを見ながら)あ、これはオスですね。オスはおしりから喉にかけて黄色いラインが入っている。

――メジロのオスメスの違いって、外見からわかるものなんですか!?

(浦野)違い、ありますよ。図鑑なんかには同じと書かれていることが多いけど、オスは、おしりから喉にかけた部分に黄色いラインがあって、脇の部分がちょっと茶色みがあって、濃い。メスにはそういう特徴は無いです。

――うーん……?(動画を見るが、腹がよく見えないのでわからない)

(浦野)あとは鳴き声でもオスメスの違いがわかります。求愛で鳴き交わすような「さえずり」とは別に、互いが連絡しあうような鳴き声があるんです。メジロは「ツィツィ」とお互い鳴きながらコミュニケーションをとって、だんだん近づいたりするんですが、その時の鳴き声が、オスは「ツィー」と伸ばして鳴く。メスは「ツィ↓」と下げたような音で鳴く。ちょっと言葉では表現が難しいんだけど。

――色もそうですが、鳴き声の判別もなかなか熟練の技が必要そうですね。

(浦野)まあメジロは本当にオスメス似ているので、見た目にしても、鳴き声にしても、たくさんの数を見ていく中で「ああこれは黄色っぽいからオスかな」「メスかな」と考えていくうちに覚えていく感じですね。

今はもう禁止されているけれど、昔はメジロを飼って美しいさえずりを競い合うような遊びがありました。メスはさえずらないから、オスを判別する必要がある。それで方法が確立されたんでしょうね。

ちなみに、コガラなんかはまったくわからないですね。ガイドをしている経験上、死骸を拾うことがあるので観察してみたけれど、外見の違いではまったくわかりません。春になって、さえずるかどうかでしか判断ができないです。

ヤマガラもまたやっかいで、ヤマガラもオスとメスが並ぶと、オスのほうが模様のメリハリがはっきりしている、とは言えるんだけど、1羽1羽で見たらオスかメスかは難しい。ヒガラも難しい。

だけど、メジロは微妙に違いがあるんですよね。

――オスメス全然違う鳥もいるし、まったく違いが無い鳥もいるし、メジロのように微妙~に違いがある鳥もいる……なんなんでしょうかね?生き物の不思議ですね。

(その2へつづきます)

とにかく生き物の知識が豊富で、話し出すと止まらない浦野さん。小さい頃、周りには野鳥好きの大人が多く、その影響でどんどん自然の魅力にはまっていったそうです。今後、メジロの話以外にもいろいろな「よもやま話」をお聞きする予定なので、どうぞお楽しみに。


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