『カレーの時間』(寺地はるな)感想
いわゆる「昭和の男」のお祖父ちゃんと
「草食系男子」の孫の桐矢くんが一緒に暮らし始める。
昔、レトルトカレー会社で営業をしていたことを
今でも誇りに生きているお祖父ちゃんの回想と、
今のコロナ・SNS時代を生きる桐矢くんの時間が、交錯する。
自他共に「男らしくない男」認定される桐矢くんは、
いざという時は、直球でズバッと言いたいことを言い、
お祖父ちゃんは一見、男女差別的な発言を繰り返し
「ちょっとウザいな~」と思っていたけれど、
根本的には弱者に優しい人。
(きれい好きな性格の桐矢くんは、乙女座男子かもしれません)
北の丸さんのストーカーに立ち向かっていく場面で、
桐矢くんも、おじいちゃんも、大好きになりました!
こうして本気で友達のために怒ってくれる人が二人もいて、
北の丸さんは幸せだと思う。
さて、この小説は本筋より、周辺の何気ないエピソードのほうが面白いという点で、フランス映画みたいな作品だったので、私の好きなエピソードを3つ書きます。
①ストーカーの「田村かついち」(※オーディオブックで聴いたので、漢字がわかりません)のような人は、
「いるいる、こういう人・・・」と思いました。
北の丸さんのような年代の女性だけでなく、
あらゆる年代の女性が、被害にあう可能性があると思います。
大学にもいそうだし、会社などにも、こういう人は普通に存在するでしょう。
10年ほど前、私の同僚の若い女の子(20代で美人)が、ストーカーに追われていました。
暴力をふるったり、ボディタッチをしてきたりなどの犯罪行為には及ばないのですが、ニヤニヤしながら、いつも尾行してくるのだそうです。
優しい女の子なので、「こいつなら、言い返してこないだろう」と思った犯人が、つけあがるんですね。
こういう人は、真正面から直球で注意・説教をされたり、
怒りをぶつけられたりすると、とたんにオロオロし始めて、
非常に弱くて情けないのです。(何度か目撃経験あり)
田村かついちは、おじいちゃんが怪我をした時に病院を探してくれ、
良いところもあったので、救いがありましたが、
世間には、もっと長所のないストーカーもいるかもしれません。
身の回りの人を守るため、こういう人物には注意が必要だと思います。
②カルチャーセンターの館長が、セクハラ発言が理由で左遷されるエピソードが、印象的でした。
「俺の発言の、何が悪いんだ?
ひと昔前は、同じことを言っても、誰も問題にしなかったじゃないか?」
「時代が変わったら、俺も変わらなきゃいけないのか?そうなのか?」
・・・え~!!そうですよ。当たり前じゃないですか!!
と私は思うのですが、
価値観が固定してしまって「なんで自分が変わらなきゃいけないの?」と自問自答し、自分を悲劇の主人公だと思っている人(※根は悪人ではない)は、お年寄りにかぎらず、あらゆる世代に意外に多いのかもしれません。
③ななみちゃん(主人公の桐矢くんのいとこ)の、彼氏の田崎さん。
この人は、桐矢くんがSNSで検索すると、簡単にヒットしてしまい、
自分に酔っていて、ナルシスト的な投稿が多く、
かなりツッコミどころ満載のヤバい奴です。
「ななみちゃんの服装がオーソドックスになっている」という時点で、
もうこの男は駄目だな・・・と思いました。
(「コンサーバティブな服装の、おとなしい女性が好みのタイプ」と言っている男は、魅力が全く無くて人間として終わっていると思います。
女性に好みの服装を要求する前に、自分が輝かしい魅力を発揮すべきです。
私の周りに、そういうつまらない男性はいませんが、世の中にはいるのかもしれません)
④レトルトカレーの営業戦略の話が、ビジネス書として普通に面白かったです。(主婦でなく、一人暮らしの若者や大学生をターゲットに売り込み始めた途端、売上が伸びた、という話)
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