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とどめの5分に合いの手を


「はい、今日のおまけはステッパー5分ね」

音もなく近づいてきた鬼トレーナーが笑顔で言った。

ステッパーと聞いてなにを思い浮かべるだろうか。
家庭用のこぢんまりしたやつ?
「テレビ見ながらラクラクできて、気づいたらウエスト周りがスッキリ!」みたいに通販で売られてるやつ?

ちがう。
ジムにあるステッパーは、運動器具なんかじゃない。
ありゃ拷問器具である。
到底、家庭には置けないほどの重厚感にあふれていて、とにかくデカい。
そして、一歩の踏み込みは恐ろしく深い。
「踏む」というより「階段を登る」感覚に近い。
しかも永久に上りだけの階段。
控えめに言って地獄だ。


たかだか5分と侮ることなかれ。
学生のとき以来、運動もせず、仕事帰りに買い食いばかりして怠惰な生活を送ってきた鈍った体だ。

エアロバイクで足はパンパン、筋トレで全身の筋肉は乳酸たまりまくりのヨ〜ロヨロ。
最後のトレッドミルではベルトと共に流されないようなんとか足を動かし続けるので精一杯。
支えのバーを握り締め、腕の力を借りなくてはステッパーを上り続けることができなかった。

毎日、毎日、エアロバイク、筋トレ、トレッドミルでヘロヘロになった後、最後の最後にやってくる地獄の5分間。
油断していると、魂が口から出ていってしまいそうになる。

トレーナーはこの最後の5分を「おまけ」と呼んでいたけれど、どう考えても「とどめ」の間違いだろう。
とにかくきつい。

私はこの「とどめの5分」に決まって聴く曲があった。

SEX MACHINEGUNSの「愛の相撲部屋」。

サビの歌詞はこうだ。

心のまわしを締め直せ 荒んだおのれに塩を撒け

心のまわしを締め直せ お前の愛がちゃんこなべ

上手出し投げ!!

SEX MACHINEGUNS「愛の相撲部屋」

ヘトヘトで、魂が抜け出てしまいそうになるのをくくりつけておくための曲。
心のまわしを締め直せ 荒んだおのれに塩を撒け」だよ。

サビの歌詞を聞くと、どっかいきそうなやる気を奮い立たせることができた。
あとは、聴いてもらえばわかるんだけどリズムがステッパーを踏むのにちょうどいいテンポ。
そして、合いの手もある。

まだ廃れちゃいないと オス オス オス

毎日四股踏め 押す

はみ出したっていいさ オス オス オス

ハイ ハイ

そう 忘れた魂 オス オス オス

取り戻す為に 押す

明日も戦え ハイ、ハイ

SEX MACHINEGUNS「愛の相撲部屋」

「愛の相撲部屋」を聴くと「とどめの5分」も乗り切る闘志が湧いてきた。

そのおかげか、このときは15キロのダイエットに成功できた。

でも今考えてみると、ダイエットのために毎日聴いていた曲がむっちりボディの「お相撲さん」の曲だったと思うとちょっと笑ってしまうんだ。


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