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行く先を決めずに電車に乗った
四人掛けの席には僕一人
一時間乗っても見知った景色の中で、海沿いを走っている

曇天のもとに揺らいでいる水面

束の間の眠りに、少しの温かさを感じて目を開くと、手には小さな紙包が置かれていて、開くとクッキーが二枚とメモ書きが一枚入っていた

レアデミキ

小さくきれいな筆文字
でも、メモの意味が分からず、車窓からぼんやりと外を眺めていると、少しずつ海から離れてトンネルに入った

急に暗くなった眼の前と、窓に映し出された僕の顔

涙が少し滲んで、目を逸らした

どこで下車するのかを、今はまだ考えていない


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