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『廃墟シリーズ』発売後の裏話・ベアトリス世代への引き継ぎ設定について

『廃墟の片隅で春の詩を歌え』上下巻が発売し、しばらくが経ちました。
物語にお付き合いくださったみなさま、ありがとうございました。
※なお、この記事は『廃墟の片隅で春の詩を歌え』『ベアトリス、お前は廃墟の鍵を持つ王女』のネタバレを含みます。
これからシリーズをお読みになる方は先に本編をお読みください。








それでは、ここからはネタバレ含みます!よろしくお願いします。




まずは『廃墟の片隅で春の詩を歌え』、いかがでしたでしょうか。
ツイッターやお手紙などで読了のご報告をくださったかた、ありがとうございました。

私の想像以上にさまざまなキャラクターについてご感想をいただき、とてもうれしく思っております。特にジルダやエタンは予想以上に好きだとおっしゃってくださる方が多く……。

ミリアムも、私に届くご感想ではそんなに嫌われていなくてびっくりしました。(三姉妹で一番書いていて楽しいキャラではありました)
ちなみにヒーロー人気ですが、編集部ではグレン派、私の周囲ではエタン派が多いようです。(編集部は担当編集さま調べ)

書いているときは無我夢中で、実はこの廃墟シリーズ、電子1~3巻をだいたい3ヵ月で書いていたのですが、体感時間がすごく短くて、執筆期間がものすごくあっという間に過ぎていってしまいました。

特に『女王の戴冠』の中盤以降は次々とキャラクターが物語から離脱し、自分で離脱させておいて何なのですが、話を動かすのが結構大変でした。今となってはそれぞれのキャラクターが少しずつ物語に根付いていたからこそ、大変な思いができたんだなと思います。紙幅を与えてくださったコバルト文庫さまに感謝です。

WebマガジンCobaltさまでの連載中から、グレンに関しては、特にさまざまなご意見をいただきました。

連載版・電子書籍版・文庫版と、3度にわたってそれぞれ初見の友人から怒られたのもグレンが想われていたあかしだと思うことにします……。みなさん本当にありがとうございました。

グレン派の方には辛い思いをさせてしまいましたが、アデールが人生の最期のときまで彼を大事に想っていたのは、ラストシーンのエタンの行動でお分かりいただけたのではないかと思います。


ちなみに、『王女の帰還』のカバーでアデールが持っているのは、グレンの遺品の銃剣です。

廃墟文庫上巻

初めてカバーを見て、アデールなにか持ってるな……と思った後の、私の衝撃。
藤ヶ咲先生、さすがの演出です……!

プロットの時点から最後に結ばれるのはエタンと決めていました。

たぶんエタンは色々あってかなりのひねくれ者なので、アデールと結婚してもデレデレしたりはしないとは思うのですが、時に冷たくしたり時に見守ったりしながら、アデールと一生を過ごしていったのではないかと思います……そのあたりは自分で書いていないのでなんともいえないのですが……読者のみなさまにご想像いただけたら本当にうれしいです。

※色々あったエタンの過去話、ショートストーリーを特集サイトに掲載していただいております。未読の方はぜひ!



アデールの物語は『王女の帰還』・『女王の戴冠』で完結となりますが、彼女の孫世代の話はまだ続いております。
今回はアデール世代から彼女の孫・ベアトリス世代へ引き継がれた設定について、こちらの記事でご紹介できればと思います。

**改めて注意を**
・『廃墟の片隅で春の詩を歌え』『ベアトリス、お前は廃墟の鍵を持つ王女』どちらも読了済みの方
・『ベアトリス~』だけをお読みになった方で、これからアデールのお話を読むつもりはないが、設定だけは押さえて次の新刊へ進みたい方

上記の方は一緒に設定を確認していきましょう。

【登場人物】
◆ベアトリス世代の『嵐』の台詞について

ベアトリスたち三きょうだいは、各々の嵐について語っています。

アルバート『俺は、すべてを呑みこむ嵐になる。ベルトラムの頂点で、下のきょうだいたちを呑みこむような大きな嵐にな』
ベアトリス『私は嵐となる。ベルトラムの中心に留まり続け、きょうだいの争いを吹き飛ばしてしまうの』
サミュエル『僕は嵐になる。気に入らない奴をすべてなぎ倒して、肉片のひとつも残さない』

これらの台詞は、彼らの祖母アデールがニカヤのマラン国王から『三人の継承者が集まれば、それは三様の嵐となる』と言われた出来事につながります。
今後も嵐にまつわるセリフは、本編だけでなくおまけの短編や、私が個人的に作っておりますお返事ペーパーなどで登場するかもしれません。

◆ギャレットの『黒鳥』設定

なぜ鳥なのか、と言われたら……アデールが入り口をあけたままの鳥籠(イルバス)を作ったからです。ベアトリスのそばにも、エタンとは羽色の違う鳥(ギャレット)がいます。

◆サミュエルの瞳について
アデールの王配・エタン似の彼は、「苔のようなまだらな緑の瞳」を受け継いでいます。
サミュエルは顔もエタン似です。3月19日発売の新刊はサミュエルが表紙におりますので、ぜひご覧になってみてください。性格はエタンにまったく似ていません。

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◆それぞれの子孫

・ウィル・ガーディナー
アルバートの王杖。彼の祖父は『女王の戴冠』に登場したグレンの部下・ガーディナー伯です。国境防衛戦からグレンの遺体に付き添っており、後にリルベク戦で活躍した軍人です。

・ルーク・ベルニ
サミュエルの王杖候補。彼の曾祖母は『女王の戴冠』に登場したベルニ伯爵夫人です。アデールやジルダにかわりサロンをとりまとめ、女性たちへ戦時中の物資調達について協力をうながしました。

・ザカライア・ダール
『廃墟の片隅~』のジルダの孫です。絵を描くと祖母が怒った、というエピソードはジルダの出生の秘密に起因しています。ちなみにジルダが結婚したのはユーリ王子ではありません。ユーリ王子は年上好みなのですが、おそらくジルダとは性格が合わないでしょう。

◆その他
・青のサロンにある肖像画について
アルバートの初登場シーンで、彼が肖像画の前で語る場面があります。
ベアトリス~だけをお読みの方はお気づきにならないかもしれませんが、この肖像画にはアデールと彼女の最初の夫・グレンが一緒に描かれています。
『女王の戴冠』でアダム・バロックが描いたアデールたち夫婦の肖像画は、現在アルバートが所持しています。


他にも色々とあるのですが、大まかなところこのような感じでしょうか。
「廃墟の片隅で~」は主要登場人物が物語のなかでだいぶ亡くなったので、前作の人物がそのまま出てくる、ということは少ないかもしれませんが、名前だけはベアトリス世代でちらりと出てくることもあるかと思います。

(エタンの名前もベアトリス~に出ていたので、ベアトリスから入った方は、アデールがグレンと結婚したので驚かれたかもしれません)


アデール世代より比較的平和なベアトリス世代ではありますが、そのぶんそれぞれの王や王杖としての在り方、生き方を賭けた戦いがメインになるかと思います。
次に戦うのはサミュエル。三月の新刊発売まで、少しの間お待ちいただければ幸いです!