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初めて見た「男性彫刻」展

東京国立近代美術館のコレクション展示室で開かれている、「男性彫刻」展という極めて珍しい(のではないかと思われる)特集展示を見た。

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出品作には裸体の彫刻が多かった印象がある。彫刻にしろ絵画にしろ、裸体は女性像のほうが多いのが一般的な認識だろう。裸体を美術のモチーフにするのは、神々の姿を表した古代ギリシャの理想美に端を発した美術史のライン上にあると思われるが、歴史的には美術家のほとんどが男性だったという事情も大きく働いているだろう。それゆえ、「男性彫刻」展はとても新鮮だった。男性が彫刻のモチーフだったことを知らないわけではないのだが、男性の像だけを集めるところには、今どきのジェンダー意識を感じる。しかも、展示されていたのは、すべて日本人の作品。日本の彫刻史はほぼ仏像史ゆえ、こうした彫刻は近代以降ということになる。つまり歴史が浅いのだ。しかし、荻原守衛、朝倉文夫、北村西望、高田博厚など、なかなかの力作が揃っている。

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会場風景

古代ギリシャに由来する歴史上での裸体美という点では、やはり力強さを表わすのが王道。

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北村西望《怒涛》(1915)展示風景

北村西望の《怒涛》は、荒波に立ち向かう漁師という設定なのだそうだ。実に堂々としている。

一つ、逆の表現として気になる作品があった。

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関谷充《伝五郎老人》(1934年)展示風景

関谷充の《伝五郎老人》は、90歳の老人をモデルにした作品なのだそうだ。弱々しいところに作家の主張を感じる。「老い」の表現である。

極めて印象的な企画展だった。

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「男性彫刻」
2020年11月15日〜2021年2月23日、東京国立近代美術館(東京・竹橋)

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