見出し画像

絵師「狩野派」と「土佐派」がわかっちゃった~✨ぐっと近づいて、人や動物の会話を想像してみよう!

徳川幕府の御用絵師になった狩野派には何となくお硬いイメージがありますが、根津美術館の「狩野派と土佐派」展で見た狩野派の屏風は、見れば見るほど親しみやすくなる逸品でした。

つあお 今日の見ものは、伝狩野元信筆《四季花鳥図屏風》! 「伝」がついていても、いいものはいい! 近寄って見るとその面白さが見えてきます。なんといっても鳥だらけなんです!

画像3

伝狩野元信《四季花鳥図屏風》(室町時代、16世紀、紙本墨画淡彩、根津美術館蔵)展示風景

画像4

画像5

画像6

まいこ すごい! ここまで鳥だらけなのは、結構珍しいのでは? しかも、どの鳥も表情が豊かですね。

つあお 基本的には水墨画だから、細かく描かれている鳥は探さないと識別しにくい。でも、その探す行為が楽しくなっちゃう!

まいこ ほぼモノクロなので一見地味かなーと思ったんですが、それぞれの鳥にフォーカスして見ていくと、どんどんハマってきました。

つあお 12ある面全てに鳥がいます。

まいこ 鳥の種類も多いですね。面によって違う。

つあお 細かく見ていて気づいたんですけど、鳥たちがまるで会話をしているかのように向き合ったり、何か意思の疎通をしようとしたりしているようにも見えるんですよね。

まいこ 本当だ! 首を伸ばして会話するかのように大きく口を開けていたり、鳥の目線の先に同じ種類の鳥がいたりする。

画像7

つあお 水墨画ってすごく渋いイメージがあるかもしれませんけど、この絵に関してはすごくアクティブで、生命力を感じます。

まいこ 泳いでたり陸で何かついばんでたり飛んでたりと、いろんなシーンが描かれてるから変化に富んでいる。1羽、超かわいい鳥を見つけました。孔雀かな? ほっぺたが丸く赤くてかわいい!!

画像8

つあお ほんとだ。この作品はほとんどモノクロームなのに、この鳥のほっぺたは赤い! よく見ないと気づかないけど、気づくとすごく印象的ですね。

まいこ もう1羽、ほっぺたが赤い鳥さんがいます。

つあお ほんとだほんとだ。この2羽は恋をしているんでしょうか。

まいこ かもしれませんね〜。私はくまモンのデザインの話を思い出したのですが、真っ赤で丸いほっぺのゆるキャラは人気が出やすいそうですよ!

つあお すごい先見の明だなあ。

まいこ 室町時代にゆるキャラ人気の秘密を知っていたとしたら、この絵の作者は天才ですね。

つあお この絵、全体を見るとちょっと茫洋としてる感じがするけど、細かく見ていく人がいることを想定して、物語を読み解くような仕掛けをしたのかもしれません。

まいこ そうそう! 遠目に見ると丘の上から雄大な自然を見下ろしているって感じだったんだけど、降りてその自然の中に入って行くとたくさんの鳥さんたちに会ってお話もできちゃう、くらいの親近感です🌟

つあお すごいすごい。この屏風を部屋に置いておくと、優しい自然の中にいるような感覚になれるような気がしてきました。

まいこ しかも、鳥たちがお互い呼び合っていたり、ひそひそ話をしてるみたいだったり。ほのぼのした世界ですね。

つあお これはひょっとすると、日本美術特有のリアリズムの表現なのかもしれません。

まいこ 西洋にはない感じですか?

つあお 描かれた物はホントに存在するんだ! っていう物理的なインパクトがある西洋のリアリズムに比べると、自然のほうからすっと近寄ってくるような感じかな。もう一つ、同じ狩野派の大きな屏風が展示されていましたね。こちらは、徳川幕府の御用絵師として有名な狩野探幽。どう思われましたか?

画像9

狩野探幽《両帝図屏風》(江戸時代、1661年、紙本着色、根津美術館蔵)展示風景

まいこ こちらは最初から近づいて見たのですが、鳥さんたちに癒やされた後だったからか、最初はおっさんばっかり描かれていてかわいくないなぁと思いました 笑

つあお 確かにかわいくない! 探したら女性もいますね。

画像10

画像11

まいこ 女性は、隅っこにちょろっとですね 笑 でも解説パネルを読んだら、右隻と左隻それぞれに主役の帝が一人ずついて、それが発明家と琴の名手なんだそうです。それがわかったら、だんだん面白くなってきました。

つあお 皇帝が琴の名手だったなんて素敵だなぁ。

画像12

まいこ 絵を探したら、ちゃんと帝が琴を弾いていました! 風流! それでね、一双(一対)の屏風全体が見えるように離れて立って見てみると、2枚が連なった壮大でゴージャスな1つの絵になってることがわかりました。

つあお さすが、「御用絵師、狩野探幽」って感じですね! ところで、右隻の発明家皇帝は何を発明したんだろう?

まいこ 解説パネルには、車と船を発明したと書いてあって、画面をよく見ると人力車と船が描かれていたので笑っちゃいました。

画像13

つあお 中国古代のドクター中松!?

まいこ そうだとしたら、結構コミカルな皇帝だったかも!

つあお でも本当に車と船を発明したんだとすると、世の中にすごく大きな貢献をしたことになりますね。移動や物流に革命が起きますから。

まいこ レオナルド・ダ・ヴィンチが政治家になったようなイメージでしょうか?

つあお そもそも、こういう言い伝えを屏風に描くこと自体が面白い。ひょっとすると、皇帝が功績を自慢したくて話に残したのかもしれないけど、絵になるとリアルな感じがしてきますよね。皇帝の姿を借りて、一双で音楽(=芸術)と科学発明(=技術)を対比させているのも面白い。徳川家はこんな屏風を自分たちの家や仕事場に置いておくことで、理想国家を目指したのかもしれませんよ。

 この展覧会には、宮廷系である土佐派の絵も出ています。幕府の絵みたいにお硬いものではなく、軟派な内容の源氏物語を描いた掛け軸が、特に気になりました。

IMG_1930のコピー

土佐光起《源氏物語朝顔図》(江戸時代、17世紀、絹本着色、根津美術館蔵)展示風景

まいこ 私はこれまで土佐派にはあまり馴染みがなかったんですが、狩野派よりも前からあるのですね。

つあお それほど定かではないようですが、ルーツは平安時代とされ、実際に「土佐」を名乗ったのは室町時代のようです。大和絵系の流派として、平安の雅を伝えるのは、土佐派の使命のようなものだったのかもしれません。

まいこ この屏風の源氏絵もとても雅やかですね。

つあお 優美ですよね。部屋の中にいる男女2人は宮廷のイメージですが、手前にいる3人の女性たちは何をしているのだろう? 白い小玉を持ったり大玉に手を当てたりしている。

画像15

まいこ 雪だるまを作ってるのでは? 百人一首に出てきそうな女性たちが美しい着物を着てこんなに大きな雪だるまを作ってるって、とっても不思議!?

つあお 雪だるまかぁ。胴体でか! 手前の女性が持っているのが頭で、今からもっと大きくするんですかね。今の人が時々雪を見るとルンルンするように、平安時代の人も雪を見たらちょっと喜んだりしたとか、そういう場面なのかな?

まいこ どうでしょうね? 家の中の男女は自分たちで作らずに、女官たちが作ってる様子を見ている感じですね。そして作ってる女性たちは素手。あかぎれになったりして大変なんじゃないかなあ。

つあお そうか、貴族上司の趣味で「雪だるまを作れ」って命令されたら、ちょっとつらいかも。当時、手袋はなかったんですかね。

まいこ そう考えると、私はやっぱり嫌ですね😁 後から手が荒れるかもとか気になって、密かにサボっちゃう。

つあお ハハハ。まぁ、こーゆーのが平安時代の「優雅」の正体だったのかもしれませんね。

まいこ もちろん鑑賞する側でよければ、私も喜んで!

つあお 承知しました。たわくしは雪だるまを作る側を担当させていただきます。もう凄い雪だるまを作っちゃいますよ! それにしても、おそらく江戸時代の人たちは源氏物語が大好きで、文章を読むだけじゃなくて、いろんな場面を描いた絵に囲まれたり見たりするのが楽しかったんだろうなぁ。土佐派は上流階級のために描いてますが、俵屋宗達なんかも源氏絵を描いている。広くニーズがあったんだと思います。

まいこ きっとそうですね! この絵は光源氏が紫の上に女性遍歴を熱心に語ってるという場面らしいし、雪だるまを鑑賞しながらというのもユニークな発想。すごく楽しんでいたんでしょうね。この場面を絵にした土佐さんも素晴らしいなと思います!

つあお 土佐さんのおかげで、光源氏のトンデモぶりがよくわかって、楽しいです。

まいこ 『なんで妻のアタシがアナタの恋愛歴を聞かなきゃなんないのよ!💢』みたいな文章だけで読むとえぐい場面でも、土佐さんの絵になると途端に優雅な場面に変身しているのかも!

つあお 江戸時代の絵画の表現は、本当に豊かだったなぁと改めて思いました。

※掲載した写真は、プレス内覧会で主催者の許可を得て撮影したものです。

飾り罫色点

【今日のラクガキ】

雅な世界

Gyoemon作《雅の行方》
Gyoemon(つあおの雅号)も平安の雅な世界を現代に継承できればと、あらん限りの感性を尽くしてその表現を追究したが、魑魅魍魎が跋扈する世界が出現してしまったのであった…

飾り罫色点

【今日のアートから生まれた一皿 by まいこ レシピ付き】

画像16

《源氏物語朝顔図》の雪だるまをモティーフに、真っ白でふわふわの大福を作りました☃ 
これなら冷たい雪で手が荒れる心配もなく風流に! 庭から切ってきた桜の一枝とともに🌸 実は生まれて初めて作ったので、最初の1個は白玉生地が手にくっついてぐちゃぐちゃになりましたが、2個めからは、かたくり粉を手にたっぷりつけてスムーズな仕上がりに♪
《簡単レシピ》※こちらのクックパッドを参考にしています→https://cookpad.com/recipe/3616466
材料 (【6個分】)
白玉粉100g
グラニュー糖(砂糖)20g
水150cc
あんこ180g
片栗粉適量
*****************************************************************************
1.《求肥作り》 耐熱容器に白玉粉、グラニュー糖、水を入れて、なめらかになるまで混ぜます。
2. ラップをして、500Wで3分レンジ加熱します。
3.ヘラで混ぜます。
5.再度ラップをして、500Wで1分30秒~2分、加熱します。
6.再度ヘラで混ぜます。 半透明になればOKです。
7. 手に片栗粉をまぶして、丸く広げます。
真ん中にあんこをのせ、つまむように底を閉じます。
8. 丸く形を整え、余分な片栗粉をはたいたら出来上がりです。

画像17

飾り罫色点

企画展「狩野派と土佐派 幕府・宮廷の絵師たち」
2021年2月25日〜3月31日、根津美術館(東京・表参道)
日時指定予約制

[同館のウェブサイトから引用]
約400年の長期にわたって、日本の画壇に君臨した狩野派。その祖である狩野正信(1434?~1530)は、室町時代に漢画の絵師として頭角を現し、流派の礎を築きました。一方、伝統的な絵画様式であるやまと絵の流派である土佐派は、狩野正信と時を同じくして登場した土佐光信(1434?~1525)の活躍により栄華を極めました。その後、日本の画壇は狩野派が制しますが、土佐派の命脈も途切れず、江戸時代前期に宮廷の絵師として見事に復活を遂げました。 この展覧会では、当館が所蔵する狩野派と土佐派の作品を中心に、室町~江戸時代に幕府や宮廷の御用を務めた絵師たちの作品をご覧いただきます。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?