見出し画像

船形山登山

夫が友人と北アルプスへ行ってしまったので、置いてけぼりを食らった私は、ソロで船形山へ。
泉ヶ岳は何度も登っているのに、その奥の船形山へはなかなか行けずにいた。
その理由としては、往復13.9kmという距離の長さと、平均タイム6時間45分、そして体力度3(参考)というちょっと厳しい数字に躊躇していた。
でも…常念岳登ったし。12時間かかったけど鳥海山も登ったし。
できそうな気がする。
明るくなった5時半登山開始。

登山口

眺望もなにもないブナ林を黙々と歩いていく。誰もいない。
こんなお天気の良い日に、誰もいない。
さすが2百名山なのに人気が薄い山だなぁ。
時々ガサガサと音がする。
熊鈴を激しく鳴らし、笛を吹く。熊だったらほんとに怖い。
20分ほどで旗坂平、そこから10分ほどで一群平。
登山道は思ったほど荒れておらず、人の手が入っているのがわかる。

登山道

そこから30分ほど歩いたところで、下山中のご夫婦とすれ違う。
ザックの大きさから、たぶん縦走。山小屋泊かな。
そこから40分ほど歩いたところで、大きな岩が積み重なった急登になった。
岩をよっこいせよっこいせと上っている途中で、トレッキングポールを片方落としてしまう。
慎重に岩を降りて拾ってまた岩にしがみついて登る。

違う!こっちじゃない!

そこで気が付いた。この岩、コケがすごすぎない?
スマホでルートを確認すると、あ、登山道から外れてる!
この岩場の手前で右に行かないといけないんだ!
苔でぬるぬると滑る岩を半泣きで戻る。
もと来た場所に戻って右に少し歩くと、あったよ、道標が!

あったよ!


もっとさ、曲がる手前にあって欲しかった。
そこから20分ほどで升沢避難小屋へ到着。

升沢避難小屋


中へは入らず、階段に腰を下ろして行動食のラムネを食べる。
思ったより暑くて水の消費が激しい。
行動食はラムネ、ナッツ、アミノバイタル。水は1リットルとブリタの浄水器フィルターのついた水筒。いざとなったらこれで沢の水を飲む作戦。
ちょっとルート外れたけど、すぐ気が付いて戻れたし、ここまでは順調順調。
そう、ここまでは!
升沢コースというその名の通り、ここから先は沢伝いだった。
しかも石がぬるぬる…
途中で追い越していった男性は「転んじゃったんですよねー」とびしょびしょ。あー、私も転びそうですー。
本当に大変だった。川の中を登っていく感じ。
途中ルートに迷ってスマホで確認する。
沢が終わると、今度は藪漕ぎ。背より高く、足元もよく見えない藪をひたすら漕ぐ。
升沢避難小屋から1時間以上かかって千畳敷に到着。

腰を下ろして休憩

休憩。
心が折れそうになる。もう体力ないよ。疲れたよ。そして、誰もいないし。
人が多くて一列になって歩いたり、すれ違うのに待たされたりするのが嫌で、人が少なそうな船形山を選んだのだけど、ここまで人がいないと心細くて泣きそうになる。
ナッツをボリボリ頬張って、コーラ味のラムネをかじって立ち上がる。
行こう。ここまで来たんだから行こう。
千畳敷からは低い藪をえっほえっほ漕いで30分ほどで船形山山頂。

山頂。天気は良かった。


誰もいない。びしょ濡れの男性もいない。別の登山口から来た人もいない。
誰もいない。

船形山小屋には入らず、ちょうどガスが切れた景色を眺めながら、夕べ作ったキュウリの浅漬けを食べる。
おにぎりは2個握ってきたが、暑さと疲労で食べられない。
こんな時はアミノバイタルゼリードリンク。
私はゼリーが嫌いで、ずっと避けていたゼリードリンク。でも、登山の時はこれが良い。食欲がなくてもするする入っていく。
もちろんおいしいとは思わないが、何も食べないわけにはいかない。体力が持たない。
あー、ちょうどガスが切れて良かった。眺望はなかなか良いなぁ。
30分ほど休憩。風がどんどん強くなってきた。

三角点

帰りは、歩き始めてすぐに何故かルートがわからなくなり、強風にあおられて、低い藪の上をゴロンゴロンと転がり落ちてしまった。
体制を立て直してルートに戻るのに30分かかった。時間はどうでもよいが、驚くほど体力を消耗した。
自分でも本当に驚いた出来事だった。
急な傾斜で藪と低木の上をゴロンゴロンと転がり落ちたのだ。
ザックの脇にさしていたトレッキングポールと、自撮り棒が吹っ飛んだ。
あー、もう、もうほんとヤダ!って大きな声を出した。
どうせ誰もいないし。大きな声を出したら、なんか元気が出てきた。
自分の声を自分で聞いて、ちょっと落ち着いた。
怪我もしてないし、トレッキングポールも自撮り棒も回収したし、まあいいや。
山降りよう。
いつの間にか虫に刺された腕をポリポリ書きながら千畳敷まで降りてきた。
ここでベテランっぽい男性に遭遇。つい、声をかけてしまう。
「私、初めて船形山にきて、升沢コース登ってきたのですが、帰りも升沢コースの方が良いですかね?別ルートいった方が良いでしょうか?」
男性は少し考えて、「先週の雨で水が増しているから、別ルートの蛇ヶ岳の方がもっとぐちゃぐちゃになっていると思うよ。升沢コースを慎重に降りた方がいいね」
丁寧に教えていただいた。お礼を言って歩き出す。
あの沢、降りるのか…
鎖もロープもあるので、慎重に降りれば大丈夫。ただ、私は鎖場が苦手なのだ。
つい両手で鎖を持ってしまい、体が回転して、体の右半分が濡れてしまった。暑い日で良かった。むしろ気持ちいいよ。
ぬるぬるする石に足を取られ、2回ほど転んだが、思ったよりも濡れなかた。
1時間半ほどかかって、なんとか升沢避難小屋まで降りてきた。
休憩、休憩。ラムネとナッツを食べる。山に持ってくるのはカロリーの高いお菓子を選ぶ。カロリー大事。特に暑いと食欲がなくなるので、好きなものを持ってくる。羊羹とか、ポテチとかも良い。
アミノバイタルゼリードリンク、もう一つ持ってくれば良かったな。
10分ほど休憩して、歩き出す。
山は、登ったからには降りないといけない。
ここまでで、予定より2時間近くもタイムオーバーしている。
足の親指の爪が痛む。足をグーにして歩く。
升沢避難小屋からは、ただ距離が長いだけで困難なところはそれほどない。
何より整備されているから歩きやすい。
いやー、しかし、長いね。ふくらはぎも痛くなってきた。
地面がぬかるんでいて、腰を下ろせるところがなかなかない。
登るときにはあまり気が付かなかったが、いろんなキノコがたくさん生えている。
いやー、長いなー。
まだかなー。登山口まだかなー。
トボトボと歩く。時々、明日仕事に行きたくないな、とか思いながらトボトボ歩く。
そして、平均タイム6時間45分と言われている、船形山升沢ルートを、実に8時間30分かけて無事下山。

ふうううう。

疲れた。
疲れた疲れた。
やれやれだよ。もう二度と登らないよ。
不機嫌な顔で駐車場なら止めてあった車に乗り込む。
登山靴を脱いで、着替えて、走り出す頃には、今度はどこの山に登ろうかな、なんて考えてしまう。
懲りないなぁ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?