明治大学平和教育登戸研究所資料館

訪問日:2023年10月28日
訪問人数:1人
場所:川崎市多摩区明治大学生田キャンパス内

【感想】
 登戸研究所が731部隊を中心とした毒ガスなどの細菌、生物兵器に関する研究所ということは知っていたが、それらの兵器の開発に留まらず、風船爆弾などの特殊兵器や偽札、スパイ道具などの秘密戦に関連する研究、開発を行っているということは知らなかった。
 日本には兵器などを展示している博物館自体はあまり多くないかと思うが、この秘密戦に関する資料に関して日本国内で資料が揃っているのはこの博物館くらいなのではないかと感じた。戦争や国家間の対立に関連した諜報活動として、我々が多く触れる歴史的な事象としては冷戦下での米ソ間の諜報合戦などが思い浮かぶが、大日本帝国時代の日本の諜報活動に関する話はそもそも知らなかったため、非常に興味深かった。また、偽札の作成などに関しては相手国(中国)の経済的な混乱を目的としたものであるというところから、よく歴史の教科書で学ぶような国民総動員的な総力戦のほかにも相手の「国力を喪失させるためにはなんでもする」という意味での総力戦の一端を垣間見た気がした。それこそ現代におけるウクライナーロシア戦争、イスラエルーパレスチナ戦争のメディアを使った戦いに関しても相手のソフトパワーを削るという観点ではこれに似たような面があると思う。そういう意味ではこの博物館での秘密戦に関する展示内容は日本の博物館の中でも貴重な教育効果があるのではないかと思った。
 展示に関しては、関連する資料が戦後に滅却されてしまっている関係上、実物資料自体はあまり多くないが、収集した資料を可能な限り展示すると同時に、わかりやすいパネルなどで展示されており、取り組みや展示内容をより広くの人に理解してもらおうとする努力がよく垣間見れた。
 これらの研究を行うにあたり、終戦後関連する資料が軍によってほぼ消滅してしまっている中で、可能な限り関係者からの口述資料を集めたり、個人が持っている資料を収集して、展示という形で残すという取り組みはある意味今しかできないものであり、この機会を逃すと資料の収集がさらにむずかしくなることから、博物館の「残す」という機能として重要な役割をになっている機関だと感じた。

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