遊就館

訪問日:2023年9月3日(日)
訪問人数:1人
場所:九段下 靖国神社内
【展示内容】
 一部江戸時代以前のものはあるが、基本的には明治維新以降の日本の国防、軍事に関する展示を行っている。
 特に重点が置かれているのはアジア・太平洋戦争(同館の表記では大東亜戦争)に関する展示で、2フロア中1フロアを同戦争に関連する展示で埋め尽くしている。各戦闘における展開図であったり、関連する戦死者(英霊)の遺書、遺品、コメントが記載されている。第二次世界大戦をめぐる展示の最後は遺影と遺影にでている人の遺書がかなりの数並べられている。
 それ以外の戦争に関しても日清戦争、北支事変(義和団事件)、日露戦争、第一次世界大戦、上海事変(支那事変)、ノモンハン事変に関しても経緯と戦死者の活躍を祈念する資料が展示されている。
 日本国内の戦争博物館ではあるものの、あまり兵器に関する展示は多くない。飛行機に反しては零戦と1943年から導入された爆撃機の2機のみで、戦車も97式1台のみ、あとは特攻兵器としてのミサイル(桜花)、魚雷、ボートと高射砲が4−5門あるくらいで、海外の戦争博物館と比べると兵器自体の数は見劣りする。

【感想】
 靖国神社の中で運営されている博物館なだけあって、基本的には明治期以降の戦争を肯定的に描くことが前提となっている解説構成。そのため、記載自体に一定の偏りがあるから、単なる教育効果を考えるだけで見るのは少し注意が必要な気がする。とはいえ、かなり細かいパネル展示をしているため、国防、軍事という観点で幕末以降の流れを俯瞰して見たい場合はかなりよい博物館だと思われる。
 兵器に関する資料は少ないものの、軍刀、軍服などの資料はかなり豊富で、榎本武揚の軍服とかが展示されていたり、室町時代の大太刀などが展示されているのはさすがと思った。
 アジア・太平洋戦争の展示の最後にあった遺影と遺品の展示に関しては、やはり顔が見えて、その人が死に際に考えていたことをリンクして見えることから実物資料とは異なる伝達する力を感じた。そして、展示されていた遺書に関しても、かなりの数自らの死を悲しむ、両親への感謝などを伝えているものがあったため、必ずしも好戦的なもののみをピックアップしていないことは良いと思った。
 日本の歴史的な背景から何かと言われやすい博物館ではあると思うが、「国を守る」ということをしっかり見つめ直して、その中でどういうことが起きたか、何が個人としてあったのかを考えるのにはいい博物館だと思った。そういう観点で、何か教育普及活動などをしていないかは考えてみてもいいかもしれない。

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