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東北・みやぎ復興マラソン2023<私的>快走ガイド

いよいよ明日11/5(日)、我が地元仙台で本格的なフルマラソンが開催される。
仙台では大学、実業団と女子駅伝は長年開催しているものの、どうしてか市民フルマラソンだけが無かった。
本当に「いよいよ」だ!!

エントリー者には主催者から詳しいコースガイドが書かれたオフィシャルブックが届いているのだが、せっかくの地元開催なので、このオフィシャルブックには書かれていない、よりランナー目線、そして震災メモリアルスタッフから、といった角度から補足的に書いてみたい。
大会直前のアップだけど、運よくここに辿りついてくださった方に少しでもお役にたてたら幸いだ。

ちょっとだけ振り返りを。
この大会の第一回開催は2017年。
見出し写真が当時の1枚。ステージ右で手を振っている方、もしかして楽天、星野監督かもしれない?!
第一回のスタート時、このステージから我々に手を振ってくださったお姿が今も目に焼きついている。この3ヶ月後の1月に訃報を聞いた。病を押してここに来てくださったのだと思うと、思いも一入だ。

当時は名取市から岩沼市、亘理町の沿岸地をエリアとした大会だった。
被災エリアを巡るコースはとても良かったし、ここまで宮城県内で本格的なフルマラソン大会は無かったことから、心から期待して参戦したのだが、残念ながら会場設定の無理さから動線が余りに酷く、同行の家族ともども「地元の大会なのに、もの凄く遠くの大会に来たように疲れたね」という印象で、翌年の2018年からはエントリーを見合わせていた。
2019年は台風の襲来で中止。
2020年からはコロナ禍で3年連続中止。
そして今年2023年。都合5年ぶりに、しかも何とコースを一新しての再スタートとなる。

公式サイトより

前置きが長くなったが、ここからガイドを。<走>は文字通り走りに関して、
<震災>も文字通り震災メモリアルに関しての内容。

1)<走>スタート前。
当日は雨模様が混ざる大会になりそうだ。
一度でも仙台ハーフに出たことがある人は実感できるが、スタートエリアの宮城野の地には雨宿りできる場所が本当に無い。手荷物を預けるタイミングが本当に悩ましい。

2)<走>前半の3本の橋
5km、9km、10km地点、それぞれ仙石線〜七北田川〜仙石線と越える3つの橋がやってくるが、見た目にも「高っ」「長っ」という感はたっぷり、ということを覚悟しておきたい。
幸いなのは「前半」だということ。
焦らずにこなすよう、自身にも言い聞かせたい。

3)<震災>14km付近の折り返しエリア
現在はどこか工業団地に見える蒲生・中野地区。
震災前は4町内会、1500戸3000人超の方々が生活されていた地区。「貞山運河」が輸送の要を担っていた時代、その重要な拠点となっていた場所だ。その拠点としての役目を終えても、脈々と豊かな文化を育んでこられた場所だったが、発災後、居住が叶わない災害危険区域に指定されることとなった。
現在、その跡地利活用として様々な事業所、間も無く稼働されるバイオマス発電所などが展開されている。

4)<震災>南蒲生浄化センター
「高砂橋」を進み、再度七北田川を越えて左折し、15km地点を越えるあたりで正面に大きな建物群が見えてくる。仙台市民の約70%(つまり70万人分)の下水を処理する「仙台市南蒲生浄化センター」だ。
ここにやって来た津波高は10.5m。当然、施設機能は停止する。
下水場が停止してしまうとどうなるか。そう、市内の下水管から汚水が溢れかえってしまうのだ。
電気はない。周りはガレキだらけ。
そんな状況下、ベテランの職員の方のアイディアで、この最大の危機を回避される。この発災から再稼働までの苦難の話を一つの企画展にした、せんだい3.11メモリアル交流館それでも、下水は止められない。」(2019)の展示を再編成し、ここ南蒲生浄化センターに常設されている。事前問い合わせで予約が取れれば見学できるので、お時間が許されれば是非足を運んでいただきたい。
幸運にも見学できたときは、是非併せて「第三ポンプ場」へ。
海岸目の前にあるこの施設は、津波がもたらす凄まじい「圧」というものが今もその壁に生々しく残っており、「津波の威力を体感できる」という意味でも唯一無二とも言える特筆すべき場所だ。もちろん、足を運べなくともWebサイトからその様子を垣間見ることができる。サイトはこちら→南蒲生浄化センターの復旧・復興

5)<震災>かさ上げ道路(東部復興道路)
この道路は、津波被害を最小限に抑える多重防御計画の重要な一角を担っている。震災で発生した震災廃棄物なども使って作られた。
進行方向に向かって、このかさ上げ道路の左側(海より)が住居が建てられない災害危険区域に指定され、跡地利活用が進められているエリアだ。
ここに乗ってから閖上大橋を越えるまで10kmちょいある。
ガイドブックにある通り、何も知らずに走れば「単調」に見える。
そこで、ここを「単調」にしないために、この地のことを少し紹介したい。
これを書いている11/4 7:00時点での「Windy」予想によると北東の風4mほど。この通りならば、我々をずっと後ろから押してくれるかも知れない。

5−1)新浜地区
「しんはま」と呼び、この先にある「あらはま」ではない。
南蒲生浄化センターを過ぎ、第6給水所のあたりに来ると、右手に集落、左手に松林群が見えてくる。発災後、仙台沿岸で一番海よりの集落となった。この地区の皆様は、独自で跡地利活用事業を展開したり、仙台市と様々な共同事業を行うなど、積極的な活動を展開されている。
また、進行方向左(海沿い)には一群の松林が見える。ご存知の通り、沿岸地の松は津波でほとんど流されたはずなのに、どうしてここだけ?と思われるだろう。これは、ここに来る前に渡ってきた「七北田川」の方に津波が先に多く(早く)流れたため、相対的にこの地の津波が弱まったのではないかと言われている。そんな辺りも見ながら進んでみたい。

5−2)荒浜地区
新浜を過ぎると間も無く左手に小学校が見えてくる。仙台市で被災した3つの小学校のうちの1つ「震災遺構 仙台市立荒浜小学校」だ。この荒浜地区には発災前は800戸2200人もの方々が生活されていた場所。そう、かさ上げ道路の下にはそのみなさんが住まわれていたお宅があった。そんなことに思いを寄せるとき、きっとどこからか力を注いでくれる風が吹いてくれるのではないか。そんなことも思いながらこの地を走ってみたいと思っている。
この荒浜小学校にも是非訪れて頂きたいのだが月曜日が休館なので、上手くスケジュールを立てていただければ幸いだ。
荒浜の交差点を過ぎると間も無くハーフ。左手には「JRフルーツパーク仙台あらはま」がしばらく見える。フルーツパークなのだが、美味しいカレーでも有名!

5−3)井土地区
フルーツパークを過ぎ、次に左手に見えてくる施設が「海岸公園 馬術場」(オフィシャルブックのP19-20)。震災前から同地にあった(かさ上げ前なので、6mほど下)。55頭いた馬のうち助からなかった馬も、全国から集まった馬術場仲間が全19頭を見つけてくれ、現在、この馬術場入り口の地下深くで眠っている。

慰霊碑は馬術場に入ってすぐ左にあります

またここに来れば、気軽に馬体験を出来るだけではなく、「キャンディちゃん」を始め、3頭いる「津波を乗り越えた馬たち」にも出会うことも出来る。

馬術場を過ぎ、すぐお隣にあるのが「海岸公園 冒険広場」。
4〜11月までデイキャンプ場が利用でき、シーズンになると毎週末、バーベキューの利用者で満場となる人気の施設。デイキャンプ場の他に、色々な遊具を備えた子どもの遊び場がある。ここの特徴はなんといっても「禁止事項がない」こと!全開、泥だらけで遊んでいる子どもたちがいつも嬉しそうだ。
どちらの施設も私自身、仕事で良くお世話になっていた。とても素敵なスタッフさんばかり。
馬術場、冒険広場ともに火曜日が休館。

5−4)藤塚地区
冒険広場を過ぎ、左手に見えてくるのが2022年にオープンした「アクアイグニス仙台」。仙台地下鉄東西線「荒井駅」から無料のシャトルバスが出ているが、本マラソンで交通手段が無くなることから11/5は休業、11/6も温泉は休業とのこと。
ここも発災前は藤塚地区として、多くの方々の生活があった場所だ。

6)<震災>閖上地区
藤塚を越え、長い「閖上大橋」を渡ると名取市。
橋の途中で左前方に見えてくるのが「かわまちテラス閖上」。
大会ではここの目の前を通るので(のはず?)、様子をチェックできる。
様々な物産店や美味処が軒を並べる。個人的には「ももやのカツ丼」が好きで、良く足を向けている。牛タンをつまみながらテラスでビールの杯を傾ける時間は何にも代え難い。ここのお隣(川の反対側)には、閖上の銘醸「佐々木酒造」のお店もあり、他ではなかなか見ることが難しいラインナップも出ているので、お酒の口をお持ちの方は是非一度足を踏み入れてほしい所。
このあと堤防をひた走り、名取市震災復興伝承館をすぎて日和山に向かう際に坂を下るが、この高低差分が「かさ上げ」された高さ。ここ閖上は、まるごとかさ上げして作った街の一つ。災害の重さを感じられると思う。
またこの閖上と藤塚は、現在は別の市となっているが、それぞれ閖上浜、藤塚浜と言われていた明治の中期までは「名取郡」として一緒の地区名で、歴史上、密接な関係性を持ち続けてきた地域だった。

7)<震災>サイクル
閖上の沿岸路を進むと左手に見えてくるのが「名取市サイクルスポーツセンター」。温泉もある。名前の通り、レンタルバイクがあるので、ここを拠点に沿岸地を散策できる。レンタルバイクはここの他に、地下鉄東西線「荒井駅」などに今年9/30から設置された「Uminote cycle」(無人)や、先の荒浜、貞山運河沿いにある「海岸公園センターハウス」(火曜日休館)で利用できる。特にこのセンターハウスは低料金もさることながら、スタッフの皆様が本当に魅力あるれる方々ばかりで、この地の見どころを様々教えてくださるので、特にオススメ。

8)<走>エイド
この大会の大いな特徴になっている各地にまつわる給食は、今回も健在のよう。
個人的には「藤の雫 甘酒」「たかたのゆめ おにぎり」が気になっている。
上手く取れるか?!

この充実しているエイドを楽しみながら岩沼市に入り、「千年希望の丘」を周ると35km。
ここまでくれば、もう脚が残っていることを願うのみ。
本当に平坦路なので、予報通り向かい風がなければ、コース的にはなんら障害はない。思うままにラストスパートと行きたい!


さて、つらつら思うままに書き連ねた私的ガイドもここまで。
当日も思うままに走れるといいな。

ランナー、関係者、一人ひとりの思い、目標が満たされますよう(祈)!

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