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トヨタ物語 ウーブン・シティへの道|第43回 最先端の製販一体とは

■伊藤誠のコネクティッド

 現在、トヨタコネクティッドの常務を務めている伊藤誠が友山茂樹に請われて入社したのは2001年の冬のことだった。
 
 伊藤は企画会社で働いていたのだが、友山からさまざまな仕事を言いつけられているうちにスカウトされたのである。

 「伊藤、うちに来いよ」

 「友山さん、でも、オレ、髪の毛、変えないですよ」

 当時、伊藤は髪の毛を金髪に染めて、長くのばしていた。そんな髪の毛をした人間がお堅いトヨタの関係会社に入社できるはずがないと伊藤は思い込んでいた。

 すると、友山は「ハハハ」と笑った。

 「大丈夫だよ。トヨタに来いってわけじゃないんだ。ガズーメディアサービス(当時の名称)だから、どんな髪の毛でも誰も文句は言わない」

 金髪のままでいいと確約されたから、伊藤は入社した。そして、G-BOOK開発のために昼夜、休日なく働いた。

 ある土曜日、人影少ないオフィスで集中して仕事をしていた。ふと気づくと机の近くに人の気配がある。頭を上げると、トヨタ名誉会長、豊田章一郎がいた。トヨタの首脳がしばしば工場などの現場に顔を出すことは聞いていたが、関連会社のオフィスにまで足を運ぶとは。驚く伊藤に豊田は「君は何をしているのか」と静かに聞いた。とっさに「ガズーの仕事です」とだけ答えると、豊田は丁寧に頭を下げ、「邪魔してすまなかった」と言って出ていった。金髪のことなど目に入っていなかった。

 その時、伊藤は自分はいい会社に入ったと思った。頑張ろうと心に決めた。ただし、中年になってからは金髪はやめている。

 さて、草創期のトヨタコネクティッドとその流れについて、伊藤は分かりやすく解説してくれた。

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