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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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【学マス】プロデュースにおけるキャラクター設定とゲーム設定の連動

はじめに

アイドルマスターシリーズは、初代からして文芸としてのキャラクター設定と、ゲーム内における設定とを合わせることに定評があるタイトルである。

わかりやすい例が如月千早である。
『初代』~『SP』までの彼女は歌手を強く志望しており、趣味から部活まで歌うことに注力している一方、アイドルはその前段階としてしか考えていなかった。またストイック過ぎる気質と家庭環境の不和から、周囲と壁を作りがちである。
実際にプロデュース開始すると、ボーカル初期値およびステータス総計が全アイドル最高の状態でスタートする。しかしコミュニケーションにおけるテンション管理が困難であり、さらに流行に合わせるための衣装変更でテンションが上がるどころか下がる。
このため「歌については才能を既に発揮しているが、アイドルに興味が薄いのでプロデューサーが接しにくい人」という印象が共通する。そしてシリーズが進行するにつれて千早がアイドル活動に前向きになった作品では、ボーカル値が高めという部分はそのまま、コミュニケーションでの難点が払拭されていくようになるのである。

しかし、『シンデレラガールズ』以降の新規タイトルで主に展開されてきたカードゲーム・リズムゲームでは、どうしてもゲーム内再現に限界がある。
タイプ振り分けはキャラクター設定相応にされ、どれだけ人数が多くとも各個のコミュイベントは必ず用意されてきた。なので決してないがしろにされたワケではないのだが、プロデュースに相当する部分がレベル上げのみではどうしようもない。

コミュや個性は今に劣らず豊富だが、ゲーム上は攻守ステータスとスキルがほぼ全てだった時代(画像は『シンデレラガールズ』から)

もちろん、技術的な問題は大きかっただろう。ガラケー時代のカードゲームではプロデュースだけでなく、ライブ描写もイラストやちびキャラに頼る他ない。また所属アイドルの数が765プロとは比べ物にならないほど多いので、個別のプロデュースシナリオを作り込むには限界もあったはずだ。
その後に続いたリズムゲーム作品では、本家さながらの3Dモデルでライブを描くことに成功しているが、それはライブを表現したリズムゲームがメインだからである。765プロダクションがメインとなる初代の流れを継ぐ本家タイトルは別に展開されていたこともあり、プロデュース過程そのものへのゲーム表現は本家に任せていた時代と言えるだろう。

だが、さらなる時代の経過によって、ソーシャルゲームでもプロデュースをメインに据える余地が出てきた。
『シャイニーカラーズ』では個別でのプロデュースが可能であり、各個のアイドルでライブスキルの効果傾向も異なる。とはいえこのタイトルは、連続で特定メンバーのアピールを行うことで追加効果が発生するリンクアピールに象徴されるように、既定ユニットの存在が大きく扱われている珍しい作品である。なので「ユニットの方向性×キャラクターの設定」で傾向が決まってくるのだ。
また、初期ステータスはフォイル化という特殊な強化をしない限り全て共通(全ステータス50)でスタートするので、前述の千早のような下地を感じさせる部分もない。ゲーム的な設定を施せそうな余地がありながら、ゲーム的な設定との連動はリンクアピールも含めてスキル効果に集中している形だ。

そしてさらに時代が流れた先が『学マス』である。
アイドルごとに初期ステータスが異なり、固有のスキルも違う。そして流行という既存要素を廃した代わりに、アイドルごとに審査基準が変化する。さらに育成プランのタイプすらもキャラクター設定の反映先になっている。そしてリズムゲーム作品で展開された3Dモデルもよりブラッシュアップされ、それすらも設定が反映されていく。
『シャイニーカラーズ』のようなアイドル間のリンクこそないが、ゲーム上のプロデュースにおけるアイドル達の個性はこれまでに強い。『学マス』は765プロ本家シリーズに比肩するほど、キャラクター設定とゲーム設定の強い連動に成功した新規アイマスタイトルなのだ。


アイドルの数だけある道

ということで、現時点でプロデュース可能な10人のアイドル科生徒それぞれのキャラクター設定が、どのようにゲーム設定に反映されているか挙げていこう。
なお、キャラクター設定を示すにあたっては、親愛度コミュを含む育成中のネタバレが避けられない。過度の言及は避けるつもりでいるが、ネタバレを気にする方は本項目に入らず引き返していただきたい。アイドル別に分けたので担当だけ見る、というのも良いだろう。
また、原則として初期SSR・SR・Rでのゲーム設定で照らし合わせている。【アイヴィ】月村手毬などのプラン違いもキャラクター設定に準じてはいるが、残念ながら当方にて未加入なので詳細な解説ができず断念した。せめてガチャの確率一覧から基礎データが常時閲覧できればなぁ……。

花海咲季

何事においても成長が早い才女である咲季。これは初期ステータスが満遍なく高く、低い成長率も存在しない形で反映されている。なるほど、これならば筆記も実技も好成績を取れて納得だ。

SSRかつTrueEND後とはいえ、全初期ステータス100以上は咲季だから為せる技

そして入学試験首席という実績と併せ、ゲーム設定においても早期に決着できる決定力を最初から持っている。特にSSR【Fighting My Way】の育成序盤は驚異の安定性を誇り、好調が付与された固有スキルを打つだけでほぼ決着してしまう。しかも固有Pアイテムは好調付与と再行動が両立するので、好調なしで撃つ事態も序盤はまず起きない。

2回目のレッスンまでは安定してパーフェクトクリアできる

その一方で咲季は超早熟であり、一度突き当たった限界の壁を乗り越えるのが難しいという問題を自覚している。
ゲーム設定でも成長率をよく見ると低いものはないが突出して高いものもないので、無補正だと最終ステータスが伸び悩みやすい。TrueEndボーナスが全ステータスの成長率UPなので、逆説的にエンディング達成前は伸び悩みを特に痛感させられるだろう。
そしてセンスの好調型自体も単独では火力の上限を突破することが難しい。序盤は一撃で決定打になった固有スキルも、レッスンや試験のスコア上限が上がっていくと好調バフだけでは決定力を欠いてしまう。もちろん強力なアピールではあるのだが、早熟で稼いだリードだけでは勝てなくなっていく。

伸びしろのなさは総合力で補う。あるものは全て使え、想像力だ!

これをサポートやメモリーによるステータス増強、集中や絶好調によるバフ併用でカバーしていくことが課題になる。そうして四苦八苦して上限を越えようともがく行為自体が、まさに育成中の花海咲季、そして彼女をプロデュースするスタンスとシンクロしているのである。

花海佑芽

咲季の妹である佑芽は、姉と対照的に初星学園に補欠入学した。実はアスリートとしての運動能力に限れば咲季以上なのだが、アイドルとしてのダンス力は、バレエや新体操ならまだしもアスリートの運動能力とは決してイコールではない。振り付けなどの習得が必要で、ステージが変われば調整だって必要だ。
そして佑芽は物事の飲み込みや覚えが非常に悪い。姉である咲季の献身的なサポートがあるとはいえ、入学時点では運動能力とダンスパフォーマンスが結びついていない。このためダンスの初期値はビジュアルと同程度とそこまで高くはない。

運動能力は新入生筆頭レベルなので、きちんと結びつけば100以上のはず

そしてプランがロジック型、それもやる気軸。このタイプはやる気バフにより元気を効率良く溜め、元気に応じて火力を出すアクティブスキルで攻めていくのだが、高スコアを出しやすい代わりにもっとも不安定なタイプである。特に育成序盤の安定性に欠け、開幕でスキルを習得できるメモリーがないと最初のレッスンから失敗する恐れがある。普通の生徒ならともかく、覚えが悪い補欠入学生ならむべなるかな……といったところか。

しかし、早熟だが限界を超えるのが難しい咲季に対し、晩成だが一度エンジンがかかるとどんどん限界突破していくのが佑芽である。それを反映したのがSSR・R版での固有スキルだ。

元気が高まって溢れる、それが伝説の超アイドル人

この固有スキルは、それまでにスキルカードを使った枚数に応じて元気を供給する。序盤に使っても大した効果にならないが、中盤終わりに使えばやる気と関係なく大量の元気が確保でき、驚異的な爆発力に結び付く。そしてこのスキルと同様の効果を持つ汎用スキルは現時点で存在しない。
これ自体が覚えが悪くなかなか走り出せないが、理解し終えるまでに至ると際限なく成長する不世出の才を反映したものだが、それだけではない。
元気を溜めてからアピールに転化する以上、序盤はどうしてもスコアが溜まらない。なので試験では他のアイドルの先行を必ず許すのだが、先行を許す筆頭は好調バフ一つで開幕から一定の火力が出る好調型であり、その代表格こそが佑芽がずっと負け続けてきた咲季である。
特に佑芽の最終試験では咲季が固定ライバルとして現れ、これまでの佑芽が幾度となく見てきた光景を追体験することになる。その先の光景を繰り返させるか、覆せるかはプロデューサーの手腕にかかっている。

先を走る咲季、追う佑芽。結末は互いの育成で真逆になる


月村手毬

中等部ではトップのアイドルユニットを組んでおり、歌唱力に定評があった手毬。しかし解散してからは無茶なダイエットを行い、不調に至ったところからプロデュースに入る。このためボーカルは高いが、他の生徒の得意ステータスと同等程度で始まる。
ここから全盛期、いやそれ以上にまで伸ばしていくことになる。気分は続編冒頭で前作の装備を全部売られちゃった主人公である。

腐っても鯛、不調でも元トップ。初期値も成長率もボーカルは十分優位

さらにプロデュース開始後、ユニットを解散してソロになった今の手毬には致命的な欠陥が判明する。抑えになるメンバーがいないことで、集中を高めて実力以上のパフォーマンスを発揮できる反面、代償として過剰に疲弊してしまうのである。
これはプランがセンス、そして集中型であることでゲーム内に反映される。集中は溜めれば溜めるほど高いスコアを叩き出せるが、バフが1でも付いていれば5割増しの火力が出る好調型と比べ、数を溜めるのにどうしても手数が要る。そして調子に乗って手数を叩き込むと、次のレッスンに影響するほど体力が減る

低体力でも計算尽くなら無茶のしようはあるが、その計算は手毬自身には無理

コミュにおいては手毬の体力作りという形になるが、実際の育成においては体力消費をカバーするメンタルスキルの投入で対策していくことになる。消耗を抑えるためにアピールの手を抜くという方向性では、たとえ勝てても最終試験では評価の下落に直結するのだが、それすらもお客さんの前で手抜きはできないというコミュと連動するのだ。

藤田ことね

自己評価は低いが、可愛い顔には自信があることね。その自己分析通りに初期値ではビジュアルが高いが、一方でダンスは低い。
そしてプロデュース開始早々、ことねにある事実が判明する。バイトの多重かけ持ちでレッスン中にも疲労が残っており、パフォーマンスが下がっているのである。本来ならダンスの才能に優れることねだが、疲れ切った身体では可愛さを取り繕うのが限界だったのだろう。

ダンストレーナーが認める筋の良さでも、伸ばせる気力がなければ低いまま

文芸上のストーリーにおいてはプロデューサーが奨学金の申請条件緩和や学園公認の割のいいバイトを回しつつ、勝手にバイトしようとすることねを止めることで疲労から解放していくのだが、それで終わりではない。ゲーム設定におけるプランがロジック、それも好印象型という点も関わるのだ。
好印象は各ターン終わりに数値分のアピールを自動で行うバフ効果である。ターン開始時に数値が1減るので溜め続けていく必要はあるが、レッスン達成に必要な分の好印象が溜まればもうスキルを打つ必要はない。そしてターンをスキップすると体力が2回復する
Pアイテムに自動アピールができるものがある以上、他の型でも使う機会はあるものの、やはりスキップの使用回数は好印象型が圧倒的に多い。つまりロジックの好印象型というプロデュース指針は、ゲーム上の特徴として体力切れしにくいだけでなく、ことねに極力疲労を残さない育成スタンスの体現になっているのである。

十分な好印象値が溜まったらスキップ連打。この定石がことねを疲労から救う

そして、かけ持ちを減らしたとはいえことねは未だアルバイターである。どうしても身体が空かないタイミングなのだろう、プロデュース中にことね本人が選択画面にしか出ない週が一度必ず挟まる。体力が減っていれば休みも選べるが、それはつまりバイトも休ませるということ。まさに親愛度コミュで描かれた展開の再現になるのだ。

右も左も亜紗里先生のお時間。ことねはバイトのお時間


葛城リーリヤ

入学まで歌やダンスの経験はなかったリーリヤ。そのため初期値はビジュアルが少し高いが全体的に低調。スウェーデンからやってきた経緯自体が若干ビジュアルの強みになっている形で、TrueENDボーナスなしだとそのビジュアルの差も減ってしまう。
初星学園へ入学できるレベルの未経験者、という点ではもっともそれらしいスタートではあるのだが、成長率も弱みはないが明確な強みも持っていない。弱点なしといえば聞こえはいいが、一歩間違えれば器用貧乏にもなりかねない。

ややもすると特長がないのが特徴。紺色だけどクゥエルとか付きません

しかしそんな現状を「それは前提にすぎない」と割り切ってひたすら努力するのがリーリヤ。そのスタンスを象徴するのが固有スキルだ。
ことねの項目で解説した通り、好印象はターンを跨ぐと1減ってしまう。だがSSR・R版におけるリーリヤの固有スキルはターン終了時に好印象を自動で1増加させる効果を持つ。つまりスキルで好印象の値を消費しない限り、現状より落ちることはなくなる

後退はない、ただひたすらに前を向く

好印象の自動増加効果は、汎用スキルでは得難い希少効果であり、長期戦になるほど相対的な効果が増す。これを最初から持ち得るに値する精神性が葛城リーリヤの真の強さなのだ。器用貧乏ではなく、全ステータスを極めた器用万能への可能性もあるのは、不断の努力が前提にあればこそである。

才能ではなく精神なので模倣できなくもないが、そのハードルは高い


紫雲清夏

入学前はバレエで国外遠征すらしていた実力者だが、右足の負傷で引退。さらにフラッシュバックまで抱えてしまったことで人前での運動そのものを避けてしまっている清夏。
そのため初期ステータスはダンスだけが相対的に低い。得意だったはずの踊りの才が完全に燻ってしまっているのだ。

トラウマに起因するサボりもあり、同じトップからの錆び付きでも落差が手毬より大きい

しかしそれでもダンスの才能は間違いなく優秀なので、成長率は高い。そして審査基準はダンスが飛び抜けて高い。成長率を見ればビジュアルもダンスと同等以上に伸びるのだが、これほど極端な審査基準は試験でのアピールに著しい影響を及ぼす。

全アイドル最高の基準線600、この長さ。最終試験の◎評価にはDa1400以上必要

このため、試験および親愛度コミュ条件を突破するために好成績を残すなら、清夏がトラウマを超えて新たな一歩を踏み出し、アイドルとして再びダンス力を伸ばすことが必要不可欠。
その鍵になるのが集中である。清夏はSSR・SR・R全てでPアイテムに集中増加の効果があり、また固有スキルは集中が高くなければ効果が落ちる。そしてPアイテムでの集中値では固有スキルを活かすには足りない。
つまり、前歴の経験から心のエンジンをかける方法自体は心得ているのだが、真価を発揮するには足りずプロデューサーの助力が必要不可欠ということ。それは復帰を目指そうと努力してもフラッシュバックに苦しみ、もう一つの心理的要因を認めるのにプロデューサーとの対話を必要とするコミュと重なる。

踏み込みきれずともそれなりの実力は出るが、本来ならそこで留まる器じゃない

育成を重ねる中、ゲーム上でダンス力をいかに飛躍させるか試行錯誤すると同時に、文芸上のストーリーでも清夏が過去と期待を乗り越えて強くなっていく……というシンクロが必然的に起きるのだ。


有村麻央

幼少期から子役として活躍してきた麻央。そしてアイドルとしての仕事はほぼしていなくても3年生で、既に2年も授業やレッスンを受けている。その前歴から初期ステータスは総じてバランス良く、その上でボーカルが高い

アイドル科の授業は総合力安定に効く

一方で、幼少から王子様でカッコいいアイドルを目指す麻央だが、現実には王子様には小さいが子役はできないという半端な背丈に成長してしまった。しかも童顔でスタイルは良く、特徴を活かせばビジュアル面での訴求力は十分あるはずだが、王子様像と対極にある(と麻央が考えていた)のでビジュアル初期値はダンスと全く同じ。
しかし、麻央は成長率も審査基準もボーカルとビジュアルの極端な二極状態である。

まさしく双璧。もちろん育成課題でもダンスは絡まない

そして育成で展開されるのは、麻央の理想である王子様アイドルの否定ではなく、可愛いアイドル像との並列を目指す物語である。
子役時代から培ったであろう高い初期値のボーカルが麻央が固執してきた王子様像であるなら、ビジュアルは素質がありながら麻央が否定してきた可愛いアイドル像。そのどちらかではなく、どちらも取ることではじめて麻央の真価が発揮される。
そしてその最たる象徴が、TrueEnd達成で追加される衣装である。これが麻央にだけ存在するのは、二兎を追って二兎を得た証として外せないものだからなのだ。

入手まで存在が秘匿されているこの報酬が、麻央の変化を文芸に留まらせない


姫崎莉波

中等部時代に妹系アイドルとして活動していた莉波。結果は振るわなかったが彼女なりの努力はしていたようだ。具体的にはツインテールとか。そして彼女も3年生。
なので全体のステータスが安定傾向で、かつダンスが少しだけ高い。妹アイドル時代のアクティブさの名残が伺えるが、その前歴での迷走も反映されてか、ステータス基準は同じ3年生の麻央より少し低い。プロデューサーと再会するまでアイドルの夢を諦めかけていたので、モチベーションの問題もあったのかもしれない。

こんな国宝級お姉さんにツインテールで妹キャラやってた時期がある事実

そんな莉波のシナリオは「プロデューサーの姉代わり」の経験から「アイドルとしてのみんなのお姉さん」という道を進むことになるのだが、しばらくはステージ上で自然体のお姉さんになれず苦しむことになる。ライブ前の口上で活かせるようになっても、ライブ後まで維持できていない。
これをゲーム的に反映した結果、固有効果に補助・回復が多い反面、アピールの手数が減りやすい

効果そのものは優秀。みんなのお姉さんになれる資質は十分ある

一般的に、お姉さんキャラのイメージは癒しである。直近の他タイトルである『シャイニーカラーズ』でも、283プロのお姉さんたる桑山千雪のスキル特徴はダメージカット(=補助)と回復であった。つまり補助と回復に長けることは、莉波がみんなのお姉さんを目指す以上は必然である。
一方で、莉波の固有スキルや固有Pアイテムに付与されたアピール火力は低い。SR版に至っては、固有だけだと直接のアピールを全くしない。なのでお姉さんキャラにより引き出した魅力を、ライブ中にどうぶつけるかがプロデュースの肝になるワケだ。

火力難が痛い中間前追い込み。プロデューサーとの記憶よろしく、開幕継承のメモリーが欲しいところ


倉本千奈

入学試験で最下位、そもそも生粋のお嬢様で志望動機も憧れ全振りという千奈。なので体力は低く、全アイドルで下から2番目。ウォームアップのランニングで体力を使い果たす体たらくなのだから順当ではある。
しかし親愛10まで完走した後に比較すると、ボーカル以外の初期値は平均水準より高く、ダンスに至ってはトップクラスの運動能力を誇る佑芽より高い。あれ?

驚異の初期値110スタート。だがこれには理由が……

一見すると設定無視のように見えるが、千奈には一般人には得難いお嬢様という環境がある。これはプロデュース中に千奈の内に外にと大きく影響する要素だが、プロデューサーが「使える」と認識するまでは加点対象にならない。
そして千奈のTrueENDアチーブメントには大量の初期ステータス増加補正がある。この分を差し引けばリーリヤを下回る初期値になり、晴れて入学試験最下位に相応となる。育成周回によりプロデュース状況が進行する本作だからこそ起きる現象だ。

千奈の環境を理解して、はじめて得られる強み

この落差により、初対面時点では「こりゃアカン」とプロデューサーに思わせつつ、千奈としっかり向き合うことでお嬢様力をパフォーマンスに反映させ、スタートラインに立てたという印象が強まる。祖父の意向に反してでも時間をかけたことの価値は、文芸のみならず周回進行後の下地として明示されるのだ。
また佑芽の項目でも書いたが、運動能力とアイドルとしてのダンス力はイコールではない。関節がガチガチ、スタミナも足りていないのに、千奈の審査基準においてダンスがもっとも重視されるのも、このお嬢様力から来る所作を武器にするなら矛盾はしない。

お嬢様力の影響を考慮したと思われる審査基準

ゲーム上ではダンスはステータスの一つであるが、何をもってダンス力を押し出すかはアイドルの個性により当然異なる。765プロでダンス初期値が高かった真とやよいも、少なくとも持ち歌におけるダンスパフォーマンスは決して同じ個性ではなかった。しかし育成がレベル上げと上限突破のみだったタイトルを経ると、その認識は薄れ共通化していってしまう。
歴代シリーズで言外に表現され、そして薄れてしまったその事実を、とりわけ体力に乏しい千奈の審査基準をあえてダンス重視にするという形で改めて明示しているのである。


篠澤広

前歴にして既に大卒の天才少女で、入学試験でも座学は満点突破、真面目にやれば学内の筆記試験も満点。しかし実技は0点で体格も細過ぎ、保健室とお友達な学園生活……という極端を極めた広。その貧弱さは千奈をも上回る。
実際に体力は千奈以上に低い全アイドル最低値であり、プロデュース中の進行どころかレッスン中の体力枯渇にも影響しうる。文芸上のコミュでも、レッスンに耐えうる体力を付けるところが最初の課題になるので、この最低体力はなるべくしてなったというワケだ。

底上げされて27なので、無強化&TrueEND前だと体力20でスタート。貧弱が過ぎる……

しかし、本人が「アイドルへの向いていなさでは、誰にも負けない自信がある」と言い切るほどで、コミュにおいてもグラフ評価がやたら低いのに対し、意外にも初期ステータスは低くない。
広もTrueENDアチーブメントに大量の初期ステータス増加補正があるが、それを差し引いてもダンスは千奈より高い。

千奈以上に高い補正値。でも補正抜きでもダンスは人並み!?

広は楽曲の歌詞や振り付けを一目見ただけで覚えられる。つまり身体が全く追い付かないだけで、座学による知識やレッスンでの指導内容は反復するまでもなく身に付いている。稀有な要素として千奈にお嬢様力があるように、広には知力があるワケだ。

そしてその知力はPアイテムにも反映されているらしい。SSR・R版のPアイテムは終盤ターンに自動アピールを行う効果なのだ。
やる気軸が不安定な型であることは佑芽の項目でも触れたが、その原因は元気をアクティブスキルで火力に転化する以上、肝心の終盤にスキルが手元に来ないと全く火力にならない点にある。残り山札4枚中アクティブが1枚、という状況で最終ターンに入り、綺麗にアクティブだけ出ずにエア台パンしたプロデューサーは少なくないだろう。
しかし終盤で元気を参照しての自動アピールがあれば、少なくとも全くスコアが稼げないということはない。しかもPアイテムなのでたとえ体力がゼロでも発動する。

異能生存体が如く発揮される広の真価。それは知力だけか、あるいは……

一見すると実にクレバーな保険の掛け方だが、決してこれは広が意図して出しているのではない。プロデュース中の広は最終的に「窮地ほど実力が出せる」と分析されているが、それは広にも無自覚なことだった。それほどまでに窮地で高いパフォーマンスが出せたことについて、そもそも窮地は成功を目指すからこそ起きる、という点が重要になる。
広にとってアイドルになることは趣味や結果であり、アイドルを目指す困難極まる過程こそが欲したものである。だからこそ失敗しても良いなどとは考えない。成功に向けて労力を割かなかった過程などさしたる困難にならず、広の求めるものにほど遠いからだ。

Pアイテムが起動する終盤まで待つとレッスン後の回復量が減るので、貧弱さも相まって広のかけた労力も体感できる

つまり広は適正から明らかにかけ離れたアイドルという道に自ら飛び込みながら、本来の適正である知力を自覚・無自覚両面で活用し、生涯初かもしれない窮地を楽しんでいる。ドMや破滅志願者に見えるのは結果論に過ぎない。むしろ初星学園に来るまでは佑芽に追い付かれる前に勝負を終え、ずっと窮地を避けていた花海咲季の対になるような存在だ。計算尽くのようで完全な無意識で動いているPアイテムはその証左であり、そして合理的な思考と非合理な目的を併せ持った広そのものの象徴でもあるのだ。

おわりに

ここまで書いておいてなんだが、あくまでこの反映のされ方については私見である。担当プロデューサーとして既に考察を重ねている方は、それぞれもっと深かったり別の見方もできるだろう。特に広については異論も多いと思われるが、それで良いのだ。
アイマス歴代タイトルでもなかなか出来ない時期があった、キャラクター設定とゲーム設定の連動から考察を深める行為が本作ではできるという事実そのものに価値がある。それが少しでも知ってもらえれば本稿は目的を果たしたと言える。

またタイプ違いSSRが絡むので言及しなかったが、同じアイドルでも追加実装されたP-SSRでは反映のされ方が変わっているという見方も可能だ(「キミとセミブルー」版で手数の少なさを実質補填した莉波など)。
『学マス』はまだサービスインから三カ月も経っておらず、まだ恒常SSRまでしか実装されていないアイドルもいる。今後のイベントや追加P-SSRも注視しながら、文芸とゲーム両面でアイドル達と共に在りたいものである。

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