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コンセントの先の、今とこれから(前編) (#10)

こんにちは、とおるです。
私が自然エネルギーに関わりを持っていることから、ある友人から「電力ひっ迫と言われている今、何がおきていて、個人として何ができるか、主宰するコミュニティで話してほしい」とお誘いを受け、その志に突き動かされ、お話をすることになりました。
話の内容をまとめる過程で、私自身も多くの学びを得たので、noteに記録したいと思います。


1.この30年間の肌感覚 ~環境問題とエネルギー問題~

完全に私の主観と肌感覚ですが、1990年代頃からさかのぼって、環境問題とエネルギー問題がどんな文脈を持っていたか、少し振り返ってみたいと思います。
わずかこの30年間でも、どんどん文脈が変わり、ここ数年、急激かつ突然文脈が変わる印象を持っています。

  • 1990年代 (私が10代の頃)

    • 省エネは大事。なぜなら「石油埋蔵量はあと100年もたないから」

    • 1997年、初代のトヨタ・プリウスが販売。当時のキャッチコピーは「21世紀に間に合いました」

  • 2000年代

    • LOHAS (Lifestyles of Health and Sustainability) という言葉がメジャーに。「環境に良いと、気持ちが良い」という価値観が形成。

    • 2005年、京都議定書が発効。

  • 2010年代

    • 2011年、東日本大震災、原発事故、計画停電。

    • 再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度) が始まり、太陽光発電所が急増。

    • 2018年、北海道でブラックアウト発生。

  • 2020年代

    • 気候変動が、金融をはじめとする実態経済に影響を及ぼし始める。

    • 企業が事業を続けるために、ESG対策が「必要」に変化。

    • ウクライナ危機を発端に、エネルギー価格上昇、世界的なエネルギー高騰。


2.コンセントの先の奥深い世界

少し専門用語も混ざりますが、話の展開のために、少しだけお付き合いください。

同時同量

日本では、規模の大きい発電所から効率的に遠くのすみずみまで電気を届けることを目的に、交流という方式が採られています。
交流では、電気を作る側 (供給) と使う側 (需要) を常時同じにする必要があり、これを「同時同量」といいます。
同時同量を維持するため、電気は、需要を予測しながら、常に供給されています。
では、この同時同量のバランスが大きく崩れるとどうなるか。停電に至ります。
2018年9月には、北海道でブラックアウト (広域停電) が発生しました。これは地震により急遽火力発電所が停止し、需給バランスが崩れたことにより発生した、と言われています。
したがって、需給バランスを維持することは極めて重要です。

では、需要と供給のバランスが崩れないよう、どのようなアクションが行われているのでしょうか。
「需給バランスが崩れる」とは、需要過多と供給過多の2パターンに分かれます。

需要過多 (使い過ぎ) を防ぐために

今夏、電力会社や関係省庁から「節電要請」が頻繁に行われています。これは、需要が供給を上回りそうな場合に発せられるものです。
特に、夏冬の午後に起こることが多いという印象です。
例えば東京電力管内では、このような「でんき予報」が、当日や翌日の需給予測を知らせてくれます。


供給過多 (作り過ぎ) を防ぐために

一方で、春夏、休日の日中では、冷暖房や工場などの需要が減る一方で、太陽光発電などの出力が高くなることから、供給過多の傾向が見られます。
このような時、まず「揚水発電」が行われることもあります。
揚水発電とは、電気が余っている時に、ポンプを使って下にある池から上に汲み上げ(揚水)、電気が足りない時には上から下に流す力で水力発電を行う、というものです。いわば、余っている電気を水の位置エネルギーに変えるとも言えるかもしれません。こちらの九州電力のホームページによる解説が、分かりやすいです。

これを行っても、供給過多が見込まれる場合は、再生可能エネルギー発電所に対して、発電停止の要請 (出力制御指示) というものが行われます。
出力制御指示が行われるのは、一般的に、再生可能エネルギーにとって好条件である時、つまり、日射が良い晴天時が多いと言われています。
需給バランスの死守の必要性は分かりつつも、再生可能エネルギーの発電ができないというのは非常にもったいない話だと思っています。
出力制御指示については、以下のNHKのサイトで分かりやすく説明されています。

未来を考える 5つのDと再エネ

このように、経済成長のために、効率的な大量発電・大量送電をコンセプトに作られた電力インフラですが、今、様々な社会情勢を鑑み、5つのDを軸に電気の未来考えるべき、とも言われています。

1. Depopulation (人口減少)
2. Decarbonization (脱炭素化)
3. Decentralization (分散化)
4. Deregulation (自由化)
5. Digitalization (デジタル化)

出典:竹内 純子 編著 「エネルギー産業2030への戦略 Utility3.0を実装する」

人口減少が進んでいる今、誰もが持続可能にエネルギーを享受できる仕組みの姿はどのようなものでしょうか。
「大量発電・大量送電」から「少量発電・その場で使う」のようなモデルに変えていく。太陽の光や風を慎ましく頂戴し、燃料の費用がかからず価格変動リスクの影響を受けない再生可能エネルギーを最大限導入すれば、限界費用ゼロに近づくのではないか。
EVを「走る電池」と捉え、たくさんのEVをデジタルで接続し、需給バランスをとるような技術の実現に向けた実証実験も進められています。


3.後編では

少し専門用語が続いてしまいました。効率的な大量発電・大量送電を目的に作られた電力インフラの課題や、社会情勢を鑑みた将来への方向性などを採り上げました。
これでは個人でできることへの実感を持てないので、後編では、「需要を小さくしたら、どうなるだろう?」のアプローチで、私たちが個人としてできることを考えていきたいと思います。
後編は:

今日も佳い日で。

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