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にわか競馬ファンが勢いよく一口馬主を始めて勢いよく終わった話(サイレントブラックの思い出) デビュー後~

※前回

祝・サイレントブラック 高知で初勝利&連勝!!

前回の記事を書いたのが10月上旬。
正直に申し上げると、「一口馬主で初めて出資した馬が全く走らなくて、話を聞いてると体質も性格も競走馬に向いてないんだろうなと思ってしまうような馬で。未勝利戦が終わるとすぐ競りに出されて出資馬としては終わってしまったけど、労働に向いてない自分と重ねたりしてしまって、愛おしかった。どうか元気で」みたいなお気持ちをしたためようと思っていたわけですよ。
ところが1ヶ月続きを書けずにいる間に、高知移籍3戦目で見違えるような走りで初勝利、4戦目は8馬身差の圧勝で連勝。
所詮高知の最下級クラスと言われればその通りかもしれないが、競走馬に向いてないなんてことはなかったし、出資ファンドが解散したところでまだ何も終わっていなかったんだと。
失礼を詫びつつ、改めて続きを、これからも続くサイレントブラックの物語の最初の一節を、書かせていただこうと思う次第です。


クサい導入、失礼しました。続きです。

衝撃の100馬身差デビュー

デビュー戦は2022年3月27日の中京3R、ダート1800mに決定。当然自分の一口馬主としてもデビュー戦になる。
当時の状況を思い返してみると、

  • 新馬戦に間に合わず未勝利戦デビューになり、経験馬と戦うのは厳しいのは分かる

  • 正直調教タイムの良し悪しも分かってないけど(今も怪しい)、まあ速くはなさそう

  • 調教師コメントも「劇的な変化は見られないのでこのまま調教を続けるより1回レースに出してみる」というような内容で仕上がってはなさそう

  • まあレースに出せる状態ってことは普通には走れると思いたい

という感じ。まあここまでデビューできなかった時点で期待はだいぶ下げてたけど、それでも内心楽しみにはしている、くらいの温度感。自分のツイッター見返したらもっと冷めた感じだったけど現地行くとツイートする暇なくて雑になるので…
自分は東京在住、中京デビューかつ高松宮記念当日ということでさすがに現地は諦めるも、中山の入場券を確保し、当日は応援馬券買って、中山の建物内のモニター前で待機!
バヌーシーオッズ的なものがあるというのは聞いていたので、おそらく応援馬券需要で売れまくっていたオッズがレース前ぐんぐん上がっていくのは笑ってしまったが、最終的に16頭立て5番人気ということでもしかして多少は普通に期待されてる?と思うようなくらいで、発走時刻を迎える。


レースが始まる。最初ということでやはり心配はゲートだったが、スタート自体は悪くない。そのまま先団に取り付いて…と思いきやふらつくような感じでついていけず、まあ最初だしな、中団からでも…と思いきやこれにもついていけず、1コーナーで既に最後方、サイレントブラックともう1頭だけ取り残されたような隊列に。
この時は何も分かっていなかったが、後でレースを観返すとこの時点で騎手が手綱をしごいており、要は後方待機とかではなく単純に全くついていけていないのだった。向こう正面に入る頃にはその1頭からも大きく離される。
頭によぎるはウマ娘民にはおなじみの名句、「最後方 ぽつんとひとり ハルウララ」…なのだが、現実はさらに非情であり、実況にすら認識されず15番手の馬が最後方としてアナウンスされる始末。そのまま最後まで名前を呼ばれることもなく、ぶっちぎりの最下位でゴールした…らしい(映像に映っていないため伝聞)。

1着馬からのタイム差、なんと16秒。1秒=6馬身くらいという説に従えば約100馬身差の衝撃的な大敗である。
ここまで離されると故障もあるかと思ったが、ツイッターの現地情報によるとそんなこともなく。まあ勝負にならない覚悟はしていたので、ここまで大差かとは思ったがレース直後は割と無の境地という感じで「大差のビリで草」みたいなツイートだけして、その後馬券でタコ負けしてキレていた模様。

ただ、その後騎手や調教師のコメントを読むと、「ずっといっぱいで疲れているような感じ」「初めての競馬で怖さがあり全てが後ろ向きになってしまった」といった言葉が並んでおり、その日の夜にはこんなことをツイートしていた。

正直なところ、デビュー遅れからのこの絶望的な負けっぷりで、勝利という意味でかける期待は相当小さくなっていたが、「労働に向いてない人間がいるように、競走馬に向いてないサラブレッドがいてもおかしくないな」という気付きは自分の中でインパクトがあった。これも結果が出た今となっては自分勝手な思い込みだったというわけなのだが、当時はそんなことを考え、結果がどうあれ行く先を見届けようと思ったのだった。


初めての「参加」

デビュー戦後は放牧を挟み、夏のレースに向けて調教が進められた。
放牧先でも「疲れが溜まりやすい」「大人しすぎて臆病」「前向きさが出てくるといいが」といったコメントが出る度、勝手に他人事とは思えなくなっていく。
未勝利戦の期限も迫り、大きな上積みはなさそうだが競馬を使っていくしかないとのことで7月23日小倉7R(芝2000m)への出走が決まる。
未勝利戦自体は9月上旬までは組まれているが、もし今回もタイムオーバー(大差負けしすぎるとしばらく出走停止になるルール)になると2ヶ月出走停止=9月を待たずしてゲームオーバーだ。進退をかけたレースになる。

ところで、この2戦目の前に、サイレントブラックの次の世代の出資馬から先陣を切ってグランベルナデットという馬がデビューしていた。
この馬はデビュー前の調教から好タイムを出しており、新馬戦でもグリグリの1番人気になるような馬だった(なお直線で詰まって飛んだ)。
これを見て、やはりサイレントブラックとは全く違う意味でワクワクしたし、彼と比較してこれが「競走馬に向いている馬」なんだなあと思ってしまったのも事実だ。
そんなわけでこの時点で自分のサイレントブラックに対する目はさらに生温かいものとなっており、

この言い草である。人間に向いてない人間はお前だけだとも知らずに…

小倉には当然行けず、夏競馬で東京も中山も開催がないので、近くの場外馬券売り場で指定席を取って観戦する。
場外で36レース全部買うのを一度やってみたく挑戦したためレース前後全く余裕がなかったが、レースは集中して観る。フルゲートの18頭立て。レースが始まる。
今回は前回よりさらにスタートは良く、積極的に出していき…1コーナーでは3,4番手あたりを確保して食らいつく。向こう正面でも位置をキープできていた。名前もちゃんと呼ばれた。
3~4コーナーで息切れし下がっていってしまったが、最後方まで下がることはなく後ろに数頭置いてゴールイン。先頭から2.4秒差の14着で、もちろんタイムオーバーは回避だ。

これでもボロ負けには変わりないのだが、正直感動してしまった。
調教師コメントは「競馬には参加できたが、現状これが精一杯」とのことだったが、参加しているだけの14着のレースにこんなに心動かされるとは、一口馬主いいな…となったレースだった。


限界

さて、未勝利戦はあと1ヶ月半程度、間隔詰めればあと2走くらい…というわけにはいかず、やはり疲れやすいサイレントブラックくんは短期放牧を挟んで未勝利戦最終週の9月3日小倉4R(芝1800m)に登場。こうしてどうにかもう一度、最後のチャンスにこぎ着けたが――。

今回は後方で脚を溜める競馬を試すということだったが、やはりそれだけで劇的に何かが変わることはなく、後方のまま16頭中14着。
調教師も手を尽くしてくれたが、最後は「気持ちも体も変化が見られなかった」と切り捨てられてしまった。やはり人も馬も簡単に変わることはできないのか。

そして、未勝利戦を勝てなかった馬のその後。
見込みがある馬であれば地方競馬に転入して投資ファンドの運用を継続、そして規定を満たすまで勝てれば中央への再転入も可能だが…
サイレントブラックについてはファンド解散、サラブレッドオークションに出品して新しいオーナーを探すことに。

この決定に未練が全くないといえば嘘になるが、タイムオーバー最下位→14着→14着という成績に、馬に変化がないという評価。体の成長だけならまだしも、気持ちや性格の部分が競馬に向かないとあっては、解散という判断になるのも仕方ないとは思っていた。だって自分だったら性格が労働向きになること一生ないもんな。

こうして初めての一口馬主は、未勝利戦終了後即解散という形で終わりを迎えた。


それから

以上がサイレントブラックの一口馬主としての一部始終で、本当はこれに加えて「走れなかったけど色々気付かせてくれて楽しかった」「どうか新しい場所でうまくやってくれ」みたいなお気持ちを表明して締めくくるつもりだったのですが。

そんなことを書くよりも早く、新天地で目覚めた彼は初勝利から鮮やかに連勝。
Noteも書けず転職もできず、人生を何も進められずに30歳未勝利となってしまった自分と彼を比べること自体おこがましいことでした。

次はお前の番だ。


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