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ワークフローツールとBYARDの違い

こんにちは、BYARDの武内です。

池井戸潤さんの新作『俺たちの箱根駅伝』を読みました。企業とスポーツを舞台にした池井戸潤さんの名作は多数ありますが、今回も箱根駅伝(学生)とテレビ局にフォーカスを当てた素晴らしい作品でした。名門校ではなく関東学生連合という舞台がいい味を出しており、恵まれない環境にある負け犬のチームが逆境をはねのけて大逆転をしていくという池井戸節たっぷりの内容で、個人的には池井戸作成品の中で1、2を争う好きな作品になりました。

さて、今回のnoteは質問されることも多い「ワークフローツールとBYARDのストリームの違い」について書いていきます。


1.ワークフローツール

(1)ワークフローツールはワークフローの一部しか扱えない

企業の社内手続きとして「稟議」は必要不可欠であり、内容や金額に応じてどの職位(誰)までの承認を取らないといけないのか社内規定などに明記されています。DX文脈の中で、ワークフローツールの導入も進み、紙とハンコではなく、いわゆる電子稟議の運用をする企業も増えてきました。SaaSが普及したことで、ワークフローツールもかなりお手頃なお値段で導入・運用することができるようになったことも大きな要因でしょう。

稟議とは、会社のお金を使ったり、数十万から数億単位の取引の契約を締結するなど、個人の権限だけでは決定できない事柄など、さまざまな重要事項について担当者が案を作って関係者にまわし、文書で決裁・承認を得ることをいい、会議の時間などを省き効率的に決裁・承認のプロセスを進めることを可能とします。

稟議とは?稟議規定や書き方、ワークフローも徹底解説

一方で、「ワークフローツールが複雑になりすぎて、メンテナンスできない」とか、「例外処理が多く、ワークフローツール上で辻褄を合わせるのが大変」という相談を受ける機会も増えました。詳細を聞いてみると、異動も多く、兼務が横行していて規定通りに運用するために無理やり設定したフローになっていたり、稟議ではなくかなり複雑で複数部門にまたがる業務プロセスを載せようとしていたり、ワークフローツールの使いどころを間違えているケースが大半です。

どんなに優れたツールでも、本来の用途から逸脱したところで活用しようとして、その真価は発揮されません。以前、ワークフローツールの限界についてnoteを書きました。

「ワークフローツール」というネーミングがあまり良くない気がするのですが、「ワークフロー」という名前が入ってはいますが、その使いどころの9割は「稟議」に類するものに限定されます。「ワークフロー」という言葉は業務の流れや業務プロセスという意味合いでも使われるので、稟議以外にも業務プロセスを設計し、回していくのに使えるように錯覚するかと思いますが、その試みのほとんどが失敗しています。

(2)ワークフローツールはスタンプカード

ワークフローツールの実態はスタンプカードです。最近はスマホアプリで対応するお店も増えてきましたが、来店1回につきハンコを1つ押してもらって、10個たまったら次回500円引きみたいな、そういうスタンプカードをイメージしてください。企業内で日々稟議を真剣に回している人に言うと怒られそうですが、紙の稟議書に枠判を押して、そこに承認者が順番にシャチハタを押していく仕組みは、「見た」「承認した」ということを記録・証明するためのものであり、それ以上でも以下でもありません。

稟議には「承認のログ」が必要不可欠であるため、厳格な運用が求められます。承認できない場合や不備があった場合は当然に差し戻しが必要ですし、再提出もできるようにしなければなりません。金額や内容によって承認ルートも変わります。

ワークフローの中でもかなりガチガチで融通の効かないプロセスなのですが、これを標準の要件としてワークフローツールは構築されているため、実際の業務にはかなり複雑で柔軟性が必要であるにも関わらず、「承認のログ」を取る以外の用途ではほぼ使えません。

世の中の大半の業務は業務プロセスが長く複雑になるほどに、その工程をきちんと管理し、履行記録をしっかり残していく必要性が高くなるのですが、ワークフローツールが厳格な承認プロセスのような一直線の処理にしか対応できないため、柔軟な判断や調整をしながら進めていく業務や各工程でそれぞれが全く別の処理をしながら進めていく業務では、ワークフローツールは活用することが難しいのです。

一直線の処理にしか対応できないのは、ワークフローツールに限らず、チケット型の処理システム、カンバン方式のタスク管理ツールでも同じです。これがダメと言っているのではなく、あくまでも「そういう機能のものですよ」という認識で使わないと痛い目を見るということです。

ワークフローツールが想定しているワークフローの対象範囲は、稟議のような一直線の処理プロセスに限られる、それ以外の用途では使っていけない、ということを理解するだけで十分です。問題は、柔軟な判断が必要な業務プロセス、それぞれの工程で様々な判断や処理が必要な業務プロセス、というものに対応したツールが存在しないということでした。

2.BYARDのストリーム

(1)ストリーム

ワークフローツールがカバーできない業務の場合、何らかのシステムでフェーズ管理をするか、Excelなどのスプレッドシートで管理をするケースが多いと思います。いずれも業務プロセスに応じたスタンプカードに過ぎず、ワークフローツールよりも柔軟ではありますが、前後のプロセスとの関連性や全体像を理解することはできません。複雑な業務を進めるためには、誰かが音頭を取って状況を確認したり、調整したりする必要があります。

私は「業務設計士®」として、様々な企業の業務プロセスを整理して、構造化した上で、システムの導入や業務の改善を支援してきました。ワークフローツール、タスク管理ツール、プロジェクト管理ツールの導入支援とそれに応じた業務全体の設計もたくさんやってきました。

マネージャーや企画部門の方からヒアリングした内容をもとに設計し、システムの設定や構築をした上で現場におろしてみると、「そういう風には業務は動いていない」という指摘を受ける場合が頻繁にありました。そういう場合は、現場の要望に可能な限り対応するために設計書を修正し、システムも項目を追加したり、設定を変更します。

これで理論上はその企業の業務プロセスをカバーしたシステムが導入され、業務の生産性は上がるはずなのですが、実態はそうはなりません。その要因は現場が設計した通りには処理をしてくれない(柔軟に対応してしまう)ことと、その状況にマネジメント側が気付けないことにより、時間が経つほどに業務の設計書が形骸化し、システムもどんどん使いづらいものになってしまうことです。

業務設計をすることが多かったのは、受注から契約、納品や役務提供、そして請求に至る業務プロセスでしたが、関わる人数が多いほど業務コントロールは難しくなりますし、例外処理が増えるほどにミスも増え、生産性は下がっていきます。業務設計はどうしても「設計(可視化と構造化)」にフォーカスが当たりがちですが、本質的には設計した通りに業務を回すことができること、想定と実態にズレがある場合に速やかに修正できること、そしてその状況をマネジメント側がモニタリングできることの方が重要です。設計フェーズはあくまでも図面を引くだけであり、それが絵に描いた餅になってしまっては何の意味もありません。

BYARDのストリームはそのUIから業務プロセスを設計することに特化したツールに勘違いされがちですが、作りたかったのは設計した後に、その設計通りに業務を遂行してもらうためのツールであり、最近は「オペレーション・マネジメントツール」という風に紹介しています。

(2)ストリームはすごろく

では、BYARDのストリームはワークフローツールと何が違うのか。

単発の処理で完結する仕事というのは実はほとんどありません。例えば「契約書の締結」という業務は当事者間で契約書に捺印(電子契約を含む)がされることだと思っている人も多いのですが、その処理に至るまでにリーガルチェックや反社チェックから、その契約を締結することに関しての権限を持っている役職者の承認、先方の担当者及び法務とのやり取りなど、パッと思いつくだけで5〜6個の前工程の処理が存在します。

各工程で担当者も処理内容・判断ポイントがそれぞれ異なるため、タスク管理ツールやワークフローツールでは処理の完了有無は記録できても、業務内容についての「取扱説明書」(マニュアル)は別途用意する必要があります。

各担当者が処理する業務は1つではありません。企業によっては数十〜数百種類の業務を処理している人もいるでしょう。初めてやる業務であればマニュアルを見ながら慎重にやるかもしれませんが、何度もやったことがある業務であれば頭の中で組み立てた手順に従ってマニュアルを見ずに処理をしてしまいます。

これが積み重なるとそれぞれの業務が担当者がやりやすいように独自進化をとげ、個別最適化した状態になってしまうのです。タスク管理ツールやワークフローツールではこれが起こるのは必然です

BYARDのストリームを構成する各ワークカードには「概要(業務の全体像など)」と「タスク(詳細な処理内容)」がマニュアルと遜色ないボリュームで書けるようになっていて、画像も貼ることができます。マニュアルを作るのではなく、業務を処理する上で必要な情報をここにすべて置いておくというコンセプトなので、すでに外部にマニュアルが整備されている企業様ではそのURLを貼っています。

ワークフローツールをスタンプカードだとするならば、ストリームはすごろく(ボードゲーム)だと考えています。各ワークカードの処理を始まるタイミングで、やるべきこと(指示)を読んで、その通りに実行すればいいという考え方です。事前にマニュアルを読み込んで業務をする人はいません。その処理をしようと思った時には、その業務についての必要な情報や指示をもらえれば十分でしょう。

マニュアルでは自分がやっていることに該当する箇所を探すのも一手間ですし、かつ、その内容が最新の正しいものでないことも多々あります。BYARDは1マス(ワークカード)ごと、1ステップ(タスク)ごとに業務を処理する上で必要な情報が提示されるので、その場で読んで処理を実行することができるものを目指しています。

もちろん、完璧なマニュアルや業務フローがないのと同様に、BYARDのワークカードやタスクの内容が常に完璧なものであるとは限りませんが、処理の都度必ず目を通すので、間違っていたり内容過不足があった場合は、即座に修正(編集権を持っていない場合は編集できる人に提案)することによって、クオリティは一定以上に保たれるのです。

スタンプを押すだけではなく、業務内容の指示というところまでカバーしているストリームだからこそ、業務設計したものを使って、各業務のオペレーションを統制することができると私たちは考えています。

BYARDのご紹介

BYARDはツールを提供するだけでなく、初期の業務設計コンサルティングをしっかり伴走させていただきますので、自社の業務プロセスが確実に可視化され、オペレーション・マネジメントのための土台を早期に整えることができます。
BYARDはマニュアルやフロー図を作るのではなく、「オペレーションを統制する」ことによって、業務の品質やスピードを向上させ、収益向上やコスト削減を実現するという価値を提供するサービスです。業務課題の整理からご相談が可能ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。


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