見出し画像

今後の専業保険代理店の“生き残り策”は“オープンイノベーション” ~損害保険会社への“依存体質”からの脱却~

コロナ禍は、世界中に計り知えない程の大きな影響と被害をもたらた。

日常生活が一変し、ライフスタイル・ワークスタイルの大きな変化、“人の距離感(ソーシャルディスタンス)”だけでなく“人と人との心の距離感”すらも大きく変化させた。

1.今後の生損保営業の変化が見えた


対面営業が大前提であった保険業界でのリモートワークの強制的導入は、生命保険営業と損害保険営業では影響度合いが違ったようだ。

<生命保険営業>

顧客の今後の生活設計やライフイベントを聞き出して新規契約プランに結び付ける“対面営業”スタイルは、大幅なモデルチェンジを余儀なくされた。

医療保険等の第三分野に関しては、ネット完結型へのシフトが目立った。

<損害保険営業>

継続契約を主体とする損保代理店の売り上げは、大幅減とはならずあまり変わらなかったようだ。

継続契約の更改維持を確実に行っていけば、訪問活動がなくても一定程度の維持できることが実証された。

<保険会社の代理店営業支援>

保険会社が営業拠点を減らし、デジタル化・リモートワーク化をもっともっと推進すれば、今の社員の“3分の1程度の人数”で代理店の指令・統制・調整は十分可能だろう。



2.コロナ禍が教えてくれた専業保険代理店に欠けていること

3メガ損害保険会社の、専業代理店統合再編の動きが加速しているという話が、まことしやかに聞こえてくる。

金融機関の中でIT化に最も遅れていると言われてきた損保業界も、黒船“コロナ”によってリモートワーク導入が余儀なくされたことによって、専業代理店統合再編への強力な後押しになった。

以前の投稿で、専業保険代理店としての生き残りの道は3つの方法しか選択肢は残されていないと提言した。

(1)他の代理店を吸収合併して大規模代理店にする
(2)損害保険会社直轄の代理店に社員として入る
(3)上記1.2に属さずに従来通りの独自路線でいく


この3つの選択肢は間違いないが、コロナ禍を経験したことによって、更に細分化して考えていく必要がある。

①  ITリテラシー
各種IT関連サービスや機器、テクノロジーについて理解し、使いこせなければリモートワークもできない。

②  マーケティング戦略
ライフスタイルの変化に応じた顧客ニーズを把握していくマーケティング戦略は必須。

③ クライシスマネジメントコンサルティング
リスクコンサルティングが主業の損害保険代理店が“クライシスマネジメント(危機管理)”を理解していなく、顧客に提案実践できないのであれば、プロフェッショナルではない。

3.損害保険会社の代理店戦略を考える


メーカーにとっての同業他社との競争は、【商品性での“差別化戦略”】がメインだ。

では、損害保険会社が行ってきた“代理店制度”のメリット・デメリットを改めて整理したい。

【一般的な代理店制度におけるメーカー側のメリットとデメリット】

<メーカー側の【メリット】>

(1) 自社の営業部隊を用意しなくてよい
(2) マーケティングにおいて要となる販路を一気に拡大できる
(3) 販売戦略や体制の見直しが容易


<メーカー側の【デメリット】>

①  自社部隊のようには営業活動を100%コントロールできない
②  自社に販売ノウハウが蓄積されない
③  コストがかかる


このメリデメを損害保険会社に当てはめて考えると

【(1)⇔ ① 】 
【(2)⇔ ② 】

でお分かりと思うが、損害保険会社の弱点は

●  営業ノウハウ・スキルは集積されていない
●  マーケティング戦略・戦術は希薄


ということが分かる。


そこで仕掛けてくるのが【システムによる囲い込み戦略】だ。

『損保会社のシステムを使うことが必要絶対条件』

このシステムは“損害保険会社目線”で作成されたもので、残念ながら代理店の使い勝手を重視したものとは、お世辞にも言えない。

しかしながら代理店としては使わないわけにはいかない。


【(3)⇔ ③ 】

環境変化やマーケット変化に応じて販売戦略や体制の見直しは必要不可欠だ。

非効率でコストパフォーマンスが悪い代理店は整理していきたいと考えるのは当然のことだ。

そこで“天下の宝刀”である【”手数料体系の見直し“戦略】による統合再編を迫ってくる。

更にコロナ禍で炙り出された『ITリテラシー』という基準をプラスすれば、老齢代理店主への有効な「戦力外通告」にも繋がる。


4.“天下の宝刀”の次に損害保険会社が繰り出してくる戦略は何だろうか?


<損害発生時の各種サービス強化>

保険金支払い業務に関してはDXが役立つということは容易に想像できる。

既に販売を開始しているドライブレコーダー付きの自動車保険では、AIがレコーダーの映像から事故状況の把握にかかる時間を大幅に短縮できるようになるだろう。

契約者のスマホで“事故への対応状況の確認”や“保険金請求手続きが完結する”サービスを始めるはず。

個人情報という問題はあるが、全国に張り巡らした交通カメラ等の映像に保険会社がアクセスしデータを共有して、AIが状況分析することも技術的には可能だろうし、電動化や自動運転など“CASE”や“MaaS”が進む関連業界と連携すれば、一層精度の高い情報が共有できて交渉時間の短縮につながるだろう。

大規模自然災害時などには、ドローンで被災状況を撮影しAIによる画像解析によって損傷状況や損害額を算出する。


<営業体制支援>

各社ともに対面式営業活動も維持しつつ、リモートで顧客に保険商品を薦めて、保険の見積もりや事務手続きなどがオンラインで完結できる非対面手続き制度の構築を急ぐはず。

電話募集の対象範囲拡大なども合わせて、従来の押印・署名を前提とした商慣習を見直す動きが加速するだろう。

そして前述の通り、代理店担当営業社員を大幅に削減して“リモート営業”を主流にしていくのは間違いない。


<改めて考えて欲しい重要なポイント>

コロナ禍によって“オンライン化”を中心にしたIT化が益々推進されることは簡単に想像できるだろう。

これは、保険会社の【システムによる囲い込み戦略】強化を後押しすることで、“保険会社主導”色が濃くなることを意味している。


今後の代理店システム構築に関して、保険会社が代理店に意見やアイデアを求めただろうか?

ごく一部の代理店以外は、まず“ヒアリング”すら行われていないだろう。
保険会社直資の代理店には“ヒアリング”したかもしれない程度だろう。

今までの保険会社の代理店システム構築において、プライド高き保険会社社員が頭を下げて「教えてください」とやってきたことなど一度もないはずだ。

保険会社にとって、コロナ禍による『非対面』『オンライン化』の流れは【“代理店統廃合”へのフォローウインド】そのものなのだ。



5.専業代理店として早急に着手しなければならないこと


(1) 自社の今後の進むべき方向性の明確化

今後の生き残りをかけた選択肢は少ないが、独自路線を進んでいくと決めたのなら

同業他社と比較した“差別化”戦略ではなく、代理店の“ウリ”を前面に打ち出す“独自化”戦略の構築が急務だ。

●  マーケティング戦略・戦術(SNS活用含む)
●  クライシスマネジメントコンサルティングなどのスキル・ノウハウ
●  営業行動・動線に合ったスケジュール管理・情報共有化がやりやすい仕組み作り

損害保険会社に対して“持っていないモノ・ノウハウ・スキル”を求めるのは“時間の無駄”でしかない。

自社で見つけなければならない。


(2) 同業他社との勉強会や情報交換会は“ほどほどに”

“新しい知”とは常に、『既存の知』と、別の『既存の知』の“新しい組み合わせ”で生まれる。

同業他社との勉強会や情報交換会も必要とは思うが、破壊的イノベーションは生まれないといっても過言でないだろう。

それぞれが持っている『既存の知』が“似たり寄ったり”で大差がないからだ。


既成概念や先入観のない“よそ者(異業種)”との接点を増やすことによって、新しい“視点”“着眼点”に気が付く。

自社が当たり前にやってきたことの“無駄”がわかって“引き算”することで

【“自社”の新しい魅力】の発見できる。

【遠いようで近い】分野への展開も考えられようになるはず。


(3)専業代理店こそ“オープンイノベーション”

オープンイノベーションとは?
『自社や組織内にとどまらず、他社や異業種の企業・個人と連携をはかり、自社だけでは生み出せない価値を生み出し、自社の業績や社会に貢献すること』

自動車整備工場などと保険販売や顧客サービス強化につながる異業種との連携を行っている専業代理店は多いが、“知”の部分での異業種との連携は殆ど行われていない。

弁護士・税理士といった士業の方との提携も実務部分であって、自社のノウハウ・スキルアップに繋がるものではない。


保険会社は“商品知識”を提供することしかできないことは周知の事実と思うが、社員のスキルアップに関しても保険会社任せという考え方は理解に苦しむ。

シェアリングエコノミーの時代なのだから“餅屋は餅屋”感覚で、オープンイノベーションすべきだ。


商売で成功したいなら誰もがライバルの少ないブルーオーシャンを見つけたいと思うはずだ。
その見つけたブルーオーシャンの情報を“タダ”で広め、レッドオーシャンに変えてしまうという“愚かなこと”をするはずがない。

人がもっている“稼げる情報・ノウハウ”にはピンキリだろうが必ず価値がある。

冷静に考えて欲しい。その情報を“タダ”で提供する?なんて狂気の沙汰。

そして、その情報を“タダ”でもらえると考えるのは本当に“愚かなこと”。


6.2021年は専業保険代理店にとって”勝負の年”


事業に“リスク”は絶対にある。
最大の“リスク”は【何も変革しないこと】

世の中の劇的な変化は、顧客ニーズも一瞬のうちに変貌させてしまう。
“変革力”を持たない企業に『顧客の創造』を実現できない。

① 保険会社の言う通り経営すると淘汰される
② ITに対応できない代理店は淘汰される
③ マーケティング戦略(SNS戦略)が明確でない代理店は淘汰される
④ 過去、現在の成功例から脱皮できない代理店は淘汰される

つまるところ、ベタなフレーズだが 『生産性向上』 につきるだろう。

“個の力”を鍛えたプロフェッショナル人材が生き残る時代になったのは間違いない。

仕事はチームで行うもので、一人で出来る事などたかが知れている。
【“よそ者”の“知】を入れた新しいチーム作りも経営者が実行力のひとつ。

金融庁の対応、指針が遅れているため後追いで色々と規制緩和や新しい規制生まれるとは思うので動向を見ながら早めに対応・変化していくことは大切だ。

現状維持は淘汰されるだけ


クロスセルというものは、損保と生保といった保険商品という狭い範囲で考えるのでなく、他金融商品、生活関連商品・サービスも含めた広い範囲で考えよう!


生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?