『はじまりの物語』#11

間もなく嵐の渦の中に近づこうとするタイミングで、
ラグーンのメンバーがざわつきだした。

ドル「どうした?」

ラグーン兵「ブーべの飛空艇艦隊がこちらに向かってきます!!」

ドル「何だと!?間に合わなかったのか......」

ひろ達の表情が曇りかけたその時、兵が声を荒げた。

ラグーン兵「ブーべ側から通信が入ってます!」

ドル「繋げ!」

ブーべ側は何を要求してくるのかと、全員に緊張感が走ったが、
聞こえてきた声からは、敵意を一切感じなかった。
その声からは、深い悲しみを纏った懇願の意思が伺えた。

エージ「我々は攻撃するつもりはない 
    繰り返す 我々は攻撃するつもりはない」

   「ブーべは現在、
    大地震により多くの民が住む場所を失っている状況です
    我々は目的地には向かわず、救助活動のため引き返します」

   「我々は、今まで残された大地を独り占めしてきました
    都合のいい話をしていること、重々承知の上での頼みとなります」

  「ラグーンで一部の住民の受け入れをお願いできないでしょうか?」
  「どうか、ブーべの民を助けてください」

予想していなかった展開に、一同には沈黙が続いた。

エン「......あいつらはプライドも無くしたのか?」

ドル「バベルではなく、側近の エージ があのトーンで懇願してきているんだ
   状況を察しろ」

ドル は エージ の通信に誠意をもって応えた。

ドル「状況は察した もちろん、今までのことを無かったことには出来ない
   ただ、今は多くの命を救うことを優先しよう 
   自然の脅威は他人事ではない
   ラグーンには俺から話を入れる
   加えて、周辺の各集落にも協力要請の連絡を入れておこう」

エージ「感謝する いずれ、この恩は返す 必ず」

ドル の一切の迷いがない即断に、ヒロアキ は ドル に対して素敵なリーダーだと敬意を持った。

やっぱり、争いよりも、こういう方がいい。
こういう優しい世界がいい。

そんな優しい空気から一転、
ラグーン、ブーべの双方のメンバーがざわつきだした。

ドル「今度は何だい!?」

ブーべ兵「無数のドローンがこちらに向かってきています!!」

エージ「天空都市か......」

ブーべとしては、一刻も早く島に戻る必要があった。
しかし、天空都市の無数のドローンはこのまま素通りをさせてはくれそうに無い。

何よりも、まともに戦っても、自分たちが何人生き残れるのかさえ分からないと感じる。それくらいの数のドローンが攻めてきたのだった。

ひろ「至急、ブーべと無線を繋いで!!」

まともに戦っても勝ち目がないことは、誰の目にも明らかだった。


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