『はじまりの物語』#8

目的地の場所を ウェズ が示すと、ラグーンの一味は黙り込んでしまった。

ひろ「ここ、まずい場所なの?」

ドル「よりによって、この場所とはな 
   ここは常に嵐が酷く、誰も近付かない いや、近づけないんだ」

エン「行けるとすれば、ブーべの飛空艇くらいか」

ひろ「天空都市には、嵐を弱める技術があるわ
   私と ポンド で取り掛かれば、夜までには何とかなる!」

緊迫した打ち合わせの中だったが、ヒロアキ はウトウトしている。
それを見た ドル は、ひろ にも休むように促した。

ひろ「こうしているうちに、ブーべ の連中は先に到達してしまうわ」

ウェジー「ひろ達は休んで 私と ウェズ で ポンド と進めるわ」

ドル「そうだ 嬢ちゃん 大事な仕事の前だ
   少しでも仮眠をとって 脳ミソ働くようにしておきな!」

ひろは1秒でも早く向かいたかったが、自分の視界がおぼろげになっていることを認め、少し仮眠を取ることにした。


ひろの母「あらら 大丈夫? 喧嘩でもしたの!? 
     擦り傷だらけじゃない」

幼い頃のひろ「大丈夫!! ひろあき がイジメられてたから
       やり返してやったの!
       ひろあき もいつまでも泣いてないでよね!!
       私の好きな こぐまお は、
                          どんなときでも、前を向いて頑張るんだよー」

ひろあき「また絵本の話で例えるなよな!」

ひろの母「本当に、弟思いのお姉ちゃんね!」

ひろ は絵本が大好きな女の子だった。
絵本に込められたメッセージを読み解くこと、そして、
作者はそのメッセージをどんな想いを込めて物語として紡いだのかを想像することが好きだった。ひろ にとっては、まるで、世界の秘密を解き明かすような感覚だった。

ひろ の父親は、ひろ が小さい頃に事故で亡くなってしまい、
母と、弟の ひろあき の3人で暮らしていた。

ひろ が13歳の誕生日を迎えた日、弟の ひろあき は、
絵本が好きな ひろ に、とっておきのプレゼントを用意した。

それは、多くの挑戦者を生むきっかけとなったといわれる絵本のデータだった。
どういうわけか、データは表舞台からは全て抹消されており、ダークウェブにひっそりとやりとりされていたその情報を、技術オタクの ひろあき は入手したのだった。

誕生日パーティーの準備が整ったテーブルに、母と ひろ は二人で ひろあき が学校から帰ってくるのを待っていた。

母「遅いわね どうしたのかしら」

ひろ「またイジメられているのかも......私 ちょっと見てくる!」

ひろ は、ひろあき が行きそうな所を全て探し回ったが、ひろあき の姿は見当たらない。完全に日が暮れてしまったので、一旦家に戻ると、母が泣き崩れていた。

ひろは、父親が亡くなった時のことを思い出し、
もう、ひろあき とも会えないと悟った。

それから、ひろ は ひろあき のことを知りたい一心で、様々な技術習得にのめり込んだ。そして、一冊の絵本の存在に辿り着いた。


ヒロアキ「おい そろそろ起きろ 船の準備が整ったみたいだ!
     泣いているのか? 悪い夢でも見たかい?」

ひろ「なんでもない! いよいよ出発ね!!」

ドル「よっしゃ 世界をひっくり返そうじゃないか!」

天空都市から降り立った1台の小さな黒いエアスクーターは、
この世界を大きくかき回し始めたなと、ドル達は歴史が今まさに動いていることを感じていた。


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