『はじまりの物語』#6

ウェズ 奪還作戦の決行は今夜仕掛けることで決まった。

それまでの時間、海に沈む綺麗な夕日を眺めながら、
ヒロアキ は ドル 達との会話を振り返っていた。

ドル「探し物がある場所は検討ついてるのかい?」

ウェジー「私たちが探しているものの場所を特定するためには、
     ウェズ の記憶データが必要よ」

ドル「決まりだな ウェズ を奪還しよう
   俺たちも ブーべ の連中だけがいい思いをするのは
   黙って見ていられない 
   何よりも、俺らも見てみたい 世界がひっくり返るところを」

トラスト「よかろう 天空都市と正式な貿易が我々もできる
     チャンスになるかもしれん 心してかかれ」

そういえば、ひろ 達からは ウェズ が探し物の場所特定の鍵だってこと聞いてなかったな。

ヒロアキ が一人で考え込んでいると、後ろから ウェジー が話しかけてきた。

ウェジー「ここに居たんだ さっきはごめんなさい
     ウェズ が探し物の場所特定に必要だってこと、
     隠しているつもりではなかったわ」

ヒロアキ「気にしてないよ 探し物はなんなんだい?」

ウェジー「絵本よ」

ヒロアキ「......絵本?」

ヒロアキ は、想像もしていなかった回答に戸惑った。

ウェジー「Dearliyの創業に大きく関わったとされる絵本があるの
     多くの挑戦者の希望となった絵本だといわれているわ」

ヒロアキ「あのDearliyの創業に関わった絵本か 
     確かに、その絵本には何か隠したいものがあるのかもしれない」

ウェジー「ひろ は歴史が好きでね 歴史を探求するために、
     技術にも興味をもったからこそ、今の彼女があるわ」

    「私が、今は入手出来ない"てるてる坊主”モチーフなのは、
     ひろ がハッキングしてデータを入手したからなの」

ヒロアキ「彼女の目的は、隠された真実を知り、
     世界に真実を伝えることなのか?」

ウェジー は首をゆっくり振りながら、穏やかに答えた。
夕日をバックにした ウェジー の姿は、まるで精霊のようだった。

ウェジー「世界をワクワクさせる人々を増やすこと
     その為に、絵本作家になることが彼女の夢よ」

    「"てるてる坊主”モチーフには、願いが込められていたと
     言われているの ひろもまた、
     明日が、未来が、素敵な日になるように
     そんな願いを私にこめていると聞いたわ」

    「あなたは ウェズ にどんな願いを?」

ヒロアキ は、ウェジー の話を聴きながら、父親のことを思い出していた。

ヒロアキ の父は、下界にも文明があり、人々が暮らしていると主張していた。

父はよく人々にこう言っていた。

死んだように生きるな 好奇心を忘れるな 
 決してこの日常に飼い慣らされるな
 いつか、この平凡な日常が変わる日がきっと来る


天空都市では、誰もがその意見に興味を持たなかった。
下界にも文明があることを証明しようと、ヒロアキ の父のパートナーA.I.が、下界を目指し、検閲書を突破して捕まるという事件が起きた。

パートナーA.I.はその場で処分され、ヒロアキ の父は尋問を受けた。
パートナーA.I.の暴走だったとか、いくらでも誤魔化せたはずだった。

それでも、彼は自分が指示を出したことだと説明した。

何かを守るためには、
 ルールを破らなければならない時だってある

ヒロアキ の父は、そう言い残し、逮捕されてしまった。
今は生きているのかも分からない。
ヒロアキ には、自分や母を残して父がその発言をしたことを理解できなかった。

でも今は理解できる。パートナーA.I.も家族の一員だったんだって。
そう思えていなかったのは、自分だけだったんだと。

ひろ「いやーとんでもない技術だねAIIは! あれ、邪魔しちゃった!?」

ひろ が会話に乱入してくれたことで、場が一気に和み、ヒロアキ と ウェジー は救われた。

ヒロアキ にはやっぱり笑顔が似合うなと ウェジー は ヒロアキ を見つめた。

ヒロアキ「さー!出陣と行きますかね!!」


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