takashi shindo
『コテツの魂』#1

『コテツの魂』#1

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今日も、朝早くから朝ごはんの支度の音が、小さな国に響き渡る。

ここは、機械仕掛けの国カラクリ。

素敵な音が聞こえてくるその家は、工房と繋がった2階建てのレンガでとても丁寧に造られた古い家。

カラクリに住むロボットの ふるがねコテツ は、職人が創る物を心から愛していた。そして、彼自身も陶芸職人だ。

朝ごはんを自ら魂を込めて作り、魂のこもったお皿で食べる。
コテツ の毎日はこうして始まる。

バードン「おーい コテツ 頼まれたもの買ってきたぜー」

コテツ「おおお 有難う これはまた凄い魂が込められている傑作だ!」

バードン「コテツ は相変わらず変わってるな この効率を重視するカラクリで、
     いまだに名字もなのって、手作りにこだわる 
     まあ、俺も好きだけどな そういうの」

コテツ は バードン からもらったお皿を嬉しそうに眺めている。

バードン「こないだ コテツ が作ったお日様が描かれたお皿を
        売りに行った街なんだけど、なんと、
     その街がある島の場所が変わって、
                    更には夜が来なくなったんだよ 

     で、今度は朝が来なくなったっていう島があるみたいで
     様子を見てこようと思っているんだ」

コテツ「効率を重視して、色々なものが狂いはじめている 
    気をつけないと 何が起こるかわかったもんじゃないな」

   「魂を込めることをみんなが忘れてしまったら、
       世界から感情は無くなってしまうよ

バードン「まあ、広い世界を見ることが俺の生き様
     感情が無い世界もどこかに、もうあるかもな」

バードン はそう言って、青空に吸い込まれるように飛び立っていった。

コテツ は改めて、朝食を楽しみはじめた。
コーヒーがあれば、もっと最高の朝になるなと考えながら、
このカラクリでは美味しいコーヒーに出逢えないことを悟り、
ちょっとガッカリした。

朝ごはんを食べ終わると、コテツ は作ったお皿を売りに街へ出かけた。

このカラクリは、国全体が機械仕掛け。全てが効率よく設計されている。
何もかもが、自動化されている。

移動手段さえも、自動で椅子に座っているだけで行きたい場所まで連れて行ってくれる。
コテツ はもちろん、徒歩での移動が好きだった。

お店まで着くと、先月まであったお店が無くなっていた。

「効率化法ニノットッテ、昨日トリコワシガ決行サレマシタ」

コテツ は言葉を失った。

唯一、カラクリで残っていた感情が集うお店だったのに......
コテツ はとても悲しくなり、目から涙のように液体が流れた。

カラクリでは、効率化法というルールによって、
この国から 驚き、喜び、笑い、悲しみ、怒りなどといった感情が
どんどん無くなっていた。

コテツ はそれでも、この生まれ育ったカラクリが大好きだった。

大好きだからこそ、自分の手で、この国を便利さと感情で溢れる素敵な国にしたいと周囲からバカにされても、気にせず活動を続けてきたのだ。

このお店に通っていたみんなはどこに行ってしまったのだろうか。
コテツ はみんなを探すことにした。

カラクリは小さな国だが、とても入り組んでいる。
それでも、さすがカラクリ。

探したい人の名前を移動式の椅子に告げると、相手が同意すれば、
その人がいるところまで連れて行ってくれる。

みんなを探すことに、時間は掛からなかった。

ハロ「コテツ が作ってくれたお皿も家に戻ったら壊されてしまっていたよ 
   もう、失うのが怖くて何も欲しいと思わなくなってしまった」

コテツ「また作るよ またみんなで集まれる場所も作らないとね」

ハロ「モウ ナニモカンジタクナイ......」

ハロ から明らかに感情が抜け落ちてしまった。

コテツ は、お皿や場所以上に、とても大切なものを失ってしまったと
大きな悲しみに包まれた。

コテツ は他のみんなのところに行くこともやめ、家に帰ることにした。

コテツ の家からはとても遠い場所だったので、また移動式の椅子に行き先を告げる。

「ソノ住所ニ、ソノ家ハ登録サレテイマセン」

感情の無い、機械の声でそっけなくアナウンスが流れるが、
コテツ には、これ以上無いくらい残酷に伝わった。

コテツ が急いで走って家に帰ると、そこにはもう、
沢山の思い出と想いが詰まった、大切な家は無かった。

「効率化法ニノットッテ、トリコワシガ決行サレマシタ」

コテツ は言葉と感情を失った。

カラクリからは、とうとう完全に感情の輝きが無くなった。

それから月日は流れた。

ただ、毎日繰り返される、無駄のない、決まり切った毎日。
無駄もなければ、驚き、喜び、笑い、悲しみ、怒りも無い。

淡々と繰り返される日々が過ぎていった。

そんなある日、バードン がカラクリに戻ってきた。

あまりのカラクリの変貌ぶりに、バードン は言葉を失った。
急いで コテツ の家に飛んでいくものの、コテツ の家があった場所には、新たにできた工場に変わり果てていた。

とうとうこの国はくるところまできてしまった......

バードン は コテツ を探すべく、あたりを見渡した。
流石のカラクリ。見渡すとすぐに、住民検索版が目に入ってきた。

バードン は早速 コテツ を探した。
検索結果では、コテツ は大量生産のお皿の工場に住み込みで働いているようだ。

バードン は早速、コテツ の元へ向かった。


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■Dearliy Inc. CEO/Founder| https://www.dearliy.co.jp/| ■作家 takashi shindo| 『作品』の公開を中心に発信していきます|illustrations by しまざきジョゼさん