『はじまりの物語』#4

大きなアラーム音が静かな雲海に響き渡っている。
想像以上に早い段階で気づかれたようだ。

ウェジー「後ろから2機、両隣から3機来てるわ!」

その言葉をかき消すように、ドローンからの激しい銃撃が始まった。

ヒロアキ「しっかり掴まれ!派手にいくぞ!!」

雲海の雲に出入りし、熱光線をくぐり抜ける。
気がつくとエアスクーターからたくさんの煙があがっている。

ヒロアキ は激しい操縦をこなしながらも、検問所にじっと視線を合わせていた。

あと少しだ!!

その瞬間、動力部分が射抜かれた。

ひろ「この場所からなら......!」

ひろ は即座にコンピューターを起動させる。

雲海の下の熱線に向かって落ちていく時間は、まるで時が止まったような感覚だ。
その間も、ひろ はずっと作業に集中している。
熱を感じ始めたその瞬間、熱がすっとひいていくのが分かった。

次の瞬間、目の前には、朝の日差しで輝く大きな水溜りがどこまでも広がっていた。
生まれて初めてみる 海 だ。

二人は堕ちていることを忘れて、目の前の光景に心を奪われていた。

ひろ「これが 海......」

ウェジー「落ちてるわ!」

ヒロアキ「水の上だろ?この速度であれば上手く着水させてみせる!」

煙をあげながらも、エアスクーターをなんとか着水させ、初めての海の上からの、どこまでも続く水平線の景色に全員が圧倒されていた。

ヒロアキ「そういえば、熱線、一体、どうやったんだ?」

ひろ「なんとか間に合った...... ハッキングしたの!」

その時、沢山のエンジン音とともに、水上を飛ぶ集団が近づいてきた。
煙幕が辺りにはられ、視界がどんどん悪くなる。

ドル「面白い形状のパートナーA.I.を連れているな 野郎ども かかれ!」

まともに操縦がきかないエアスクーターでは、もはやなす術が無い。
それでも、ひろ は ヒロアキ の銃で応戦し、ヒロアキ は飛び乗ってきた男と素手で戦闘していた。

相手の刃が ヒロアキ の顔をかすり、ヒロアキ の頬から血が流れる。

エン「アンドロイドじゃ無い!? お前、人間か!?」

激しい戦闘の最中、近づいてくる大きな影に誰も気が付かなかった。
頭上には、大きな飛空艇が停まっていた。

ドル「間が悪い ブーベの連中か!!」

飛空艇から何人もの兵が出て来て、場を制圧した。

バベル「あれが例のパートナーA.I.か 捕らえろ」

謎の軍団の一人が、ウェズ に向けて光を当てた次の瞬間、
ウェズ は軍団の方に瞬時に引き寄せられてしまった。

そして、何人もの兵を従え、飛空艇は再び動き出す。

ヒロアキ「ウェズ!!!」

ヒロアキ の叫ぶタイミングがとても遅く感じるほど、一瞬の出来事だった。

エン「ドル、こいつら、人間だ!!」

ドル「なんだって!? お前ら、本当にあの天空から来たんだよな?」

ひろ「私たちは天空都市タケダから来たわ 
   私たちも驚いた 下界に人がいるなんて 
   海だけだと思っていたから あなたたちは下界の賊?」

ドル「......ここで話すのもあれだ ついてきな 俺らの村に案内する」

先ほどまで戦闘をしていたことが嘘のように、静かで穏やかな空気が海上に流れていた。

動揺する ヒロアキ を引っ張り、ひろ と ウェジー は彼らの乗り物に乗り込んだ。


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