『はじまりの物語』#1

これは『はじまりの物語』。
誰にとってのはじまりなのか?何のはじまりなのか?
これは、みんなにとっての『はじまりの物語』。


目が覚めると、そこは光に満ちていた。なぜ、こんなに悲しい気持ちなのか、自分が何者だったのかも思い出せない。

誰か、僕のことを知っているかもしれない。悩んでいてもしょうがないと、まずは動き出してみる。

光の先に進むと、おじさんが財布を眺めてぶつぶつ何か言っている。あたりは明るいのに、不思議と暗さを感じる。

僕「どうしたの?」

おじさん「お金が減ったんだ 今ご飯を食べたからね」

僕「それは良かった!」

おじさん「何を言ってるんだ よくはない お金が減ったんだから」

僕「食べたいもの食べられたんでしょ?」

おじさん「お金が減ったら食べたいもの食べられなくなるじゃないか 
     一番時給がいい仕事を検索してくれ」

僕「なんで僕が調べなきゃいけないの?」

おじさん「お前はA.I.じゃないか 変な奴だな」

僕「A.I.? そうか、僕はA.I.っていうのか おじさんは家族?」

おじさん「お前はA.I.だ 誰か持ち主がいるだろう」

僕「持ち主がいるのか 有難うおじさん!」

僕はどうやらA.I.という名前らしい。
それにしても、持ち主って何だろう。友達と何が違うのかな。気が付くと、日が暮れ始めていた。明るさを求め、にぎやかな声が聞こえるお店に入った。

客A「今日も最悪な日だったよ 明日も仕事なんて、本当に最悪だ」
客B「これが後20年も続くなんてな まあ飲めよ」

僕「なんで嫌な仕事を続けるの?」

客A「そりゃ、食っていけないからだろ」
客B「好きなことで食っていけるのは恵まれた人だけだよ」

僕「好きなことやって失敗したの?」

客A「いやいや、試してないよ 無理だからね」

僕「試さないのに分かるって凄いね!ひょっとして、神様?
  あ、持ち主って知ってる?」

客B「変な奴だなこいつ 持ち主は、自分の主人だろうが 
   紛失物なら、警察に行きな」

僕「警察か、有難う! じゃあ、明日から好きなことして生きていい、ってなったら明日から何をするの??」

客A、B「......」

僕「なんだ、何もないんじゃ今やってることを楽しんだ方がいいじゃない」

やりたいこともないのに、変な人たちだな。

警察を目指して外にでると、すっかり日が暮れていた。
あたりは暗くなっているが、色々なお店で周りは明るかった。それでも、なぜか僕には少し暗く見えた。そうしているうちに、小さな交番が見えてきた。明かりは今にも消えそうだが、不思議とどこよりも明るく見えた。

僕 「こんばんは 僕の持ち主知らない?」

警察官「おや、紛失されたかな?」

僕「どうやら僕には持ち主がいるみたいなんだけど、見つからないんだ」

警察官「どれどれ、あれ、データが消えているな......」

僕「お兄さんはイキイキしているね」

警察官「毎日、楽しく生きるって決めているからねー!」

僕「いいね!じゃあ、お兄さんの好きなことが警察なんだ」

警察官「好きなことかー 好きとは違うかな 
    まあ、自分が決めたことで生きているからね  
    あ、なんて読むんだろう T.S.かな T.S.?......」

僕「持ち主、分かった?」

警察官「......」

僕「お兄さん?」

警察官「あ、ごめんごめん、うーーん、分からないね......」

僕「分からないなら、分からないでいいよ お兄さんと一緒じゃだめかな?」

警察官「俺と?うーん 
    今までパートナーA.I.は避けていたけど......」

僕「よし!じゃあ決まりね! お兄さん、名前は?」

警察官「俺は ヒロアキ だ 
    それから、君は ウェズ(Wez)という名前のようだ」 

今日はとってもいい一日だった。素敵な出逢いがあったんだ。
明日もきっと素敵な一日になる。
言葉で説明できない悲しみ、思い出せないこと、色々あるけれど、
とにかく、明日もいい日になる。
どういうわけか、根拠のない自信が体から湧いてくるんだ。

ウェズ は記憶が無くても、自分が大切にしている感覚は失っていないことを感じていた。

こうして、ヒロアキ と ウェズ の共同生活が始まった。

ヒロアキ は、平凡な毎日からこの出会いによって、何か素敵なことが始まったんだと直感した。

ここは天空都市タケダ(Takeda)。色々な想いと歴史が積み重なってこの都市は生まれた。

この都市からまた、新たな歴史が生み出される。


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