『くまおの宝物』#2

サーフボードの制作には、思ったよりも時間が掛かった。

制作中の日々も、くまお は こぐまおに会いにいき、こぐまおに気づかれないように、ケンケンパなどで遊びながら こぐまお のサイズを測った。

2人は時間を重なる度に、お互いにとって掛け替えのない存在になっていった。

そうして、遂に、サーフボードが完成した。

くまお は次の日の朝一番に、こぐまお に届けに向かった。

こぐまお 「これは サーフボード!?」

こぐまお の想像以上の最高の笑顔を見て、くまお は口元が大きく緩んだ。

こぐまお は早速海に出た。
こぐまお は、とびっきりの笑顔のお日様の下で、初めてとは思えない、
とっても上手な波乗りを披露した。

こぐまお 「夢にまでみた波乗り、最高だよ!!
                    これ、本当に貰っていいの?」

くまお 「もちろん! こぐまお に喜んでもらいたくて、
                   一生懸命作ったんだ」

こぐまお は くまお の大きな体に抱きついて心からお礼を伝えた。

こぐまお 「そろそろお腹が減ってきたし、お昼だね 
     お礼にご馳走させてよ!」


こうして、2匹はお昼ご飯を食べに、街へ向かった 。
街へ向かう途中も、こぐまお はサーフィンの話題に夢中だ。
そんな中、森で助けた りすの親子に出会った。

りすの母親 「あら、くまおさん こんにちは!この間のケガはもう大丈夫?
       新しい時計は見つかりましたか?」

くまお はにっこりした表情でゆっくり大きな声で答えた。

くまお  「こんにちは! こないだは怖い思いをさせてしまって
    ごめんなさい ケガはもう大丈夫です!
    新しい時計はまだ探していないんです 
    心配してくれてどうもありがとう」

りすの母親 「そうでしたか でも、あの木からサーフボードが
       遂に完成したんですね!とっても素敵!」

くまお はにっこりと頷いた。
くまお は こりす に笑顔で手を振り、こぐまお とまた歩き出した。

こぐまお 「そういえば、最近、懐中時計持ってないね
     無くしちゃったの?」

くまお  「そうなんだよ ちょっと無くしてしまって......」

くまお は こぐまお に余計な心配をさせないように振る舞った。
それでも、こぐまお は、くまお が何かを隠していることに気がついた。

お昼は こぐまお のお気に入りのお店で、 くまお にオムライスをご馳走した。

こぐまお は卵料理が大好物。
でも、自分で作れるのは目玉焼きだけ。そこが悩みだと くまお に相談した。

くまお 「自分ができることを、極めてみるのも大事だよ
             こぐまお の目玉焼きでたくさんの笑顔を作れると素敵だね」

くまお は オムライスをニコニコ食べながらアドバイスをした。

こぐまお「そうか! じゃあ、目玉焼き、もっともっと美味しくできるように
     練習してみようかな! くまお もパンケーキで沢山の笑顔を
     作れるんじゃない?きっと人気のお店になるんじゃないかな?
     今度食べさせてよ!」

くまお 「うーん 僕が食べる分が減っちゃうから 考えた事もなかった
     そうか、みんなが笑顔になるのなら、それも素敵だね」

こぐまお「そろそろ おやつの時間でしょ?
                    この近くに、とっておきのハチミツを売っているお店
     見つけたんだ!きっとパンケーキに合うよ!」

こぐまお は、帰り道に とっておきのハチミツをプレゼントに選んだ。

こぐまお 「はい!これでパンケーキ楽しんでね!
      サーフボード、本当にありがとう!!
     どれだけお礼を言っても足りないくらいだよ」

そのやりとりを見ていた 街のやんちゃな一同は、くまお に聞こえるように嫌味を言った。

「ほれみたことか!やっぱり、見返り目的の善意だな」

「偽善者だな〜」

「結局自分の為なんだよ あれで大事にしていた時計が壊れたこととチャラにするつもりか? りすの親子から聞いたぜ」

それを聞いた こぐまお は、小さい体から、最大限の声を出して怒った。

こぐまお 「ぷんぷん、ぷーん!くまお のことを悪くいうな!」

くまお は いつも通りの にこにこした表情で、こぐまおに優しく話しかけた。

くまお 「怒ってくれてありがとう でも、自分の為にやっているのは
    間違いじゃないよ」

   「誰かの為に尽くすことは、
    自分のため 僕にとって最高の幸せなんだ」

それを聞いた町のやんちゃな一同は、それみたことかと、声を荒げた。

「自分で認めたよ ついに本性がでたな」

「見返りを求めないで相手に尽くして それが幸せなものか」

くまお は、こぐまお の手を引いて歩き出した。

くまお 「幸せについて、誰かの幸せと比較してしまいがち
     でも、比較する必要は全く無いでしょ?
    自分の幸せと向き合うんだ こぐまお は知っているはずだよ」

こぐまお は、くまお と友達になれたことを、とっても嬉しく思った。
きっと、くまお の周りには、互いを思いやる素敵な輪ができるんだと感じた。

こぐまお 「宝物だった懐中時計、ボクのサーフボードのために、
  壊れちゃったんだね ボクの目覚ましに使っている時計をあげるよ!」

くまお「ありがとう でも、その時計が無かったら、
    朝早く起きてサーフィンに行けないよ?」

それを聞いて、こぐまお は思わず、ずっと考えていたとっても素敵なことを言葉にした。

こぐまお「じゃあ、一緒に暮らしてみない?」

その言葉を聞いて、くまお は口元が大きく緩んだ。

こうして、たくさんの笑顔に繋がる、2匹の素敵な共同生活がはじまった。


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