『はじまりの物語』#2

天空都市の朝は、とってもまぶしい。

人を笑顔にすることが大好きな ヒロアキ の毎日は、
ウェズ との出会いによって、賑やかで明るい日々になっていた。

パートナーA.I.とはペアリングをすることで、お互いのパートナー関係が成立する。いわば、契りを交わすということ。

ペアリングには、Dearingという指輪状のデバイスを用いる。

ペアリングを済ませると、ウェズ にも彼専用の空間を用意した。
それでも、毎日、二人は一緒にチェスをしたり、映画を見たり、気がつくと、そのまま布団で一緒に眠っていることがほとんど。

ヒロアキ は両親と離れてからは、ずっと一人暮らしが続いていた。
だからこそ、ウェズ のおかげで毎日が賑やかになったことは、ヒロアキ にとって、とっても素敵なことだった。

ウェズ「今日仕事が終わったら、昨日の対戦の続きをしよう!」

ヒロアキ「チェスではどうやっても君に勝てないよー」

ヒロアキ はパトロール中も ウェズ と一緒。
まさに ウェズ は ヒロアキ にとっての相棒になっていた。

晴れの日は、いつだって ウェズ はご機嫌だ。

ウェズ「それにしても、ドローンでパトロールができるのに、
    ヒロアキ は自分でパトロールすることが本当に好きだね」

ヒロアキ「困っている人を直接助けて、笑顔にすることが好きなんだよ
      些細なことでも、手助けを必要としている人は沢山いるんだ」

ウェズ は、ヒロアキ のそういうところがとっても好きだった。

ヒロアキ「どうした?ウェズ ?」

ウェズ「誰かに見られている気がしたんだけど...... 気のせいかも」

ヒロアキ「そろそろ、人口雨の時間だ 雨が降る前に戻ろう」

天空都市は、雲の上にあるため雨は滅多に降らない。
その代わり、人口的に雨を降らせて雨の量を調整している。

ウェズ は、どういうわけか雨をとても嫌っていた。

交番にたどり着く前に雨が降り始めてしまった。
駆け足で帰る途中、急に道の横から黒いエアスクーターが割り込んできた。

「乗って!! 助けて欲しいの!!」

派手に ヒロアキ と ウェズ の視界に飛び込んできたエアスクーターから聞こえたのは、予想外に、若い女性の声だった。

訳も分からぬまま、ヒロアキ は「助けて」という言葉に、頭よりも体が先に反応していた。

後ろを見ると、数台のエアスクーターが追ってきている。
彼女から運転を代わり、ヒロアキ は追跡を振り切ろうとスピードを上げた。

ウェズ「なんで警察なのに逃げてるの!?」

ヒロアキ「追われたら逃げる 逃げる側の気持ちが分かったな!」

ヒロアキ は笑いながら大声で返した。

雨のせいで、視界はとっても悪い。
その環境すら味方につけて、ヒロアキ は追っ手を振り切った。

ウェズ「絶対始末書ものだよ なんで逃げるのさ 雨降ってるし 最悪だなー」

ヒロアキ「雨降ってるからコイツ機嫌悪いんだ ごめんね 名前は?
     俺は ヒロアキ」

「私も ひろあき こっちは ウェジー」

よく見ると、ウェズ と同様のてるてる坊主モチーフのパートナーA.I.と一緒だ。

ヒロアキ「え?男みたいな名前だな」

「ペンネームよ ひろって呼んで」

ひろ「ところで、そのパートナーA.I.どうしたの?
   てるてる坊主のモチーフは廃止されているはず」

ヒロアキ「記憶を無くしているところ、交番まで訪ねてきたんだ
     それから一緒に暮らしている それよりも、
     まず、こうなった理由を説明してくれないかい?」

ひろ「ちょっと探し物をしていたら
   それを探していることがバレちゃって......」

ヒロアキ「そんなにヤバイものなのかい?」

ひろ「とっても素敵なものよ ただ、何か都合が悪いのかもね 
   この世界では」

世界にとって都合が悪いもの? ヒロアキ は気になった。

ウェズ「もう帰ろう 助けても笑顔もない人じゃないか」

ウェジー「笑顔が無いのは町の人たちじゃない! 
     ひろは町に笑顔を取り戻したいだけよ」

ひろ 「とにかく、助けてくれてありがとう 
    私は探しているものを取りに行く でもあなたの力も必要
    そして、そこに行けば、きっとそのてるてる坊主さんの記憶が戻る
    何かがあるわ」

   「また ウェジー 宛に連絡して」

そう言いながら、ひろ はエアスクーターで去っていった。

ウェズ「あ......どうやって帰る!?」

ヒロアキ は、ひろ が話していた"探し物”と"ウェズの記憶”が気になって
考え込んでいた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?