『ガルと思い出の魔法』#1

『ガルと思い出の魔法』#1

親子の幸せに形があるとすれば、どんな形をしているのだろう?

お日様のような、温かいまんまるの形。
お互いに支え合うような、優しいさんかくの形。

子どもの ガル を、お腹の袋に包み込んで育てている母親の ルーラ の場合は、きっと包み込むような、穏やかなしかくの形。

毛が生えそろってきたばかりの ガル は、ルーラ母さん の袋から出たり入ったり。
外の世界に興味を持っては遊びに出かけ、おなかが減ったり、甘えたくなったら戻ってくる。

甘えん坊の ガル は、くるんと回転するように ルーラ母さん の袋に戻る。
その姿は、とってもかわいい。

ルーラ 「ガル は本当に甘えん坊だね しっかりひとり立ちできるかな?」

そう言われると、ガル はいつだって強がってみせるけど、最後には決まってこう話していた。

ガル「ボクは いつだってお母さんと一緒だよ!」


そんな 甘えん坊の ガル も、時が経つにつれ、しっかり一人前に育っていった。


ある日、明日に迫った特別な日を前に、ルーラ母さん は寂しい気持ちと嬉しい気持ちを両方噛み締めて、 ガル を送り出す準備をしていた。

明日は、ガルにとっての本当の「ひとり立ち」。
ガル には、素敵な服を作りたいという夢があった。

ガル の一族はみんな地味な色を好むから、どんよりした雰囲気になりがち。
ガル はそんな中、 有名デザイナーの ジャクー が作る、鮮やかな服に一目惚れをした。

ただ着るだけで、気持ちが華やかになり、日々に彩が増える。
ただ着るだけで、自然と笑顔になり、周りのみんなさえ、いつの間にか笑顔にしてしまう。

ジャクー がつくるのは、鮮やかな色とりどりの「生地」。
そしてその「生地」で作る服は、とっても素敵なものだった。

ジャクー がデザインした服によって、ガル は、毎日が素敵な日々になることを実感した。そして、ガル もまた、この魔法を生み出すことを仕事にしたいと気持ちを固めていった。

ジャクー は弟子をとらないことで有名だったが、ガル の直向きな努力の姿勢と熱意が、ジャクー をようやく動かし、遂に弟子にしてもらうことが決まったのだ。

町を出ていく際、ガル は、ルーラ母さんからハンカチを受け取った。

ガル もまた、旅立ちに対して、少し寂しい気持ちを感じていたが、
ハンカチを見て、気がつくと笑顔になっていた。

そのハンカチは、ガル が 子どもの頃に着ていた服の生地を使って作られたものだった。そのハンカチを見ると、昔の思い出が沢山蘇ってきた。

ガル 「行ってきまーす!!」

大きな声で挨拶をして、ガル は新たな一歩を踏み出した。


町を出てから、列車を乗り継ぎ、次第にあたりの景色は洗練された背の高い建物が増えてくる。

町を歩いているみんなの格好もまた、とても洗練されているのが列車の窓から見える。

窓の外に気を取られていると、いつの間にか目的地に到着していた。

鮮やかで、華やかに造られた見事な景色。
町のあちこちから流れる、落ち着きを伴った音色。
行き交うみんなの洗練された格好。

ここは流行の最先端を創る町 ボーグランド。

見渡す限りお洒落な景色の町で、一際存在感を放っているのが、
有名デザイナー、 ジャクー のデザインスタジオだ。

ポップな柄の外壁で、建物に入る前から ジャクー の大切にしている遊び心が伝わってくる。

一歩足を踏み入れると、そこはまるで美術館。

彼が収集したアート作品が、壁一面にびっしりと展示されている。

ガル は思わず立ち止まり、目があちこちに奪われる時間を楽しんだ。

アート作品が続く廊下の一番奥に、彼の仕事場があった。

ガル 「ジャクーさん ガルです!只今到着しました!」

作業音が続いたまま、ジャクー の入ってくれという声が聞こえた。

中に入ると、視界に沢山のモノが飛び込んでくる。

天井にびっしりと吊られている型紙。
デスクに散らかった沢山の写真やおもちゃ。

ここはまさに、魔法が生まれる場所だ。

ジャクー 「この柄はどう思う?」

大切な新作の意見を唐突に聞かれ、到着したばかりの ガル は、思わず沈黙してしまった。

ジャクー 「おいおい、あの熱意は嘘だったのかい? ここでは初日も関係ないよ」

ガル は、今までの日常が終わり、夢に見ていた日々が日常になったことを改めて実感した。

それからの日々は、ガルにとってとても充実した日々だった。

好きこそ物の上手なれ

1日の時間の境目がわからなくなるほど、ガル は、毎日毎日多くのことを夢中になって吸収し、学んでいった。

そして、ジャクー でさえ驚くような成長を ガル は見せていった。

ジャクー は多くを語らなかったが、彼が気になって集めてくるものや、
彼がとる写真、そして、それらからインスピレーションを得て創る服が、彼の言葉そのものだった。

ジャクー の大切にしていることはシンプルだ。

想いを込めて、織り上げる

これから、この服は、どんなふうに日常を共にするのか
幸せな日常を支えることができるように
この服で、これからの明日が変わるかもしれない

着るものと、その周囲の気持ちを明るく、華やかにできますように。

この祈りにも近い想いを沢山込めて、丁寧に織り上げる。

ジャクー と 弟子の ガル は、この想いをブラさずに、
このデザインスタジオから沢山の魔法を作り上げていった。


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