『くまおの宝物』#1

いつもとびっきりの笑顔で、不機嫌を知らないお日様の下、毎日、毎日、寄せては返す波の音が心地よく響く南の島、アウバリ島。

みんなの笑顔がとっても良く映えるこの島の南の町に、今日も、明日も、明後日もおやつのパンケーキをとっても楽しみにしている1匹のくまがいた。

くまお 「これからパンケーキ♪ 明日もパンケーキ♪」

毎日おやつのパンケーキを楽しみにしている くまお は、お気に入りの懐中時計をもって、毎日散歩を楽しんでいる。

くまお は パンケーキと同じくらい、困っている誰かを助けることも好きだった。くまお は、誰かが困っているのを見ると放っておけない。

くまお 「その重そうな荷物、僕が持ちますよ!」

くまお 「今日はとっても暑いですね 差し入れに、冷たいジュースをどうぞ!」

くまお 「ゴミが散らかっているなー 僕が片付けなければ」

くまお は、ただただ親切心で行っていることだけど、
一部のものは、陰で くまお を偽善者だとバカにしていた。

ある日、くまお が散歩をしていると、海岸で海を見つめる小さなこぐまがいた。
こぐまは、最近島の反対側から引っ越して来たようで、朝早くからずっと海を見ていると、この辺りで噂になっていた。

海が大好きなんだなと、くまお は微笑ましくこぐまを見つめながら、3時が近づいてきたので、パンケーキの為に、家路へと急いだ。

でも、どうしてあんなに寂しそうな顔をしているんだろう?

くまお はこぐまのことを気にかけながらも、これからのパンケーキのことを考えると、思わず口元が緩んでいた。

くまお 「これからパンケーキ♪ 明日もパンケーキ♪」

次の日も、その次の日も、くまお は散歩の途中でこぐまを見かけた。

ある日、くまお は こぐまが何か困っているのかもしれないと、こぐまに話しかけてみることにした。

くまお 「こんにちは! 僕は くまお 
    毎日ここで海を見つめているけど、何か困っているのかな? 
    僕に出来ることはあるかい?」

こぐまお 「こんにちは  ボクは こぐまお 
                    あの波に乗りたいんだけど、自分でサーフボードを
     作れなくて......」

くまお  「サーフボード?」

こぐまお「木の板にこうやって乗って、波に乗るんだ!」

こぐまお は、砂浜に描いて くまお に夢中になって説明した。
くまお は こぐまお が熱く語る姿を見て、とても微笑ましい気持ちになった。

こぐまお 「ボクは体が小さいから、木を切ってサーフボードを作るのは
     とっても難しいんだ」

くまお は懐中時計に目をやると、おやつの時間が近づいていることに気がついた。

くまお 「おっといけない もうすぐ3時だ パンケーキ♪ パンケーキ♪」

こぐまお に別れを告げ、くまお は家に戻った。

サーフボードは木で作るのか。 明日、さっそく森に行ってみよう。

くまお は こぐまお が喜ぶ顔を想像して、思わず口元が緩んでいた。

次の日、くまお は朝早くから森に出かけた。
昨晩、くまお は島で一番物知りの ピョンキチさん に、どんな木が適切かを教えてもらっていた。

くまお 「よし、この木が良さそうだ」

ピョンキチさん から聞いた条件にぴったり当てはまる木を見つけた くまお は、ずっしりと腰を据え、斧を構えた。

カンッ!!
カンッ!!

くまお の力を込めた一振りが、森に響き渡る。

カンッ!!
カンッ!!

くまお 「たーおれーるぞー」

くまお が合図を出したその時だった。

りすの親子が 木が倒れる方向から逃げ遅れているのに気がついた。

くまお は慌てて、りすの親子に覆い被さった。

くまお「ごめんなさい お怪我はありませんか?」

りすの母親「助けていただきありがとうございます 
      私達は大丈夫です あなたこそ、大丈夫ですか!?」

くまお は背中に傷を負っていたが、大した怪我ではなさそうだった。
しかし、大切にしていた懐中時計が壊れてしまったことに気がついた。

くまお はそれを見て、少しがっかりしたが、りすの親子が無事だったことに、心から喜んだ。

さて、サーフボードを作らなきゃ!

くまお は切った木を運びやすいように細かくした後、
背中に担いで山を降りた。

くまお 「もうすぐ3時かな?きっと3時に違いない」
   「これからパンケーキ♪ 明日もパンケーキ♪」

くまお が家に戻ると、時刻は4時を過ぎていた。
それでも、くまお は晩御飯を遅く食べればいいかと、パンケーキを焼き始めた。

パンケーキを焼きながら、くまお はサーフボードをどんな色に、どんな柄にするかをイメージしていた。

木を切りに行った森のことを思い浮かべ、緑や木の幹の色をストライプで表現しようと思いついた。

くまお は こぐまお が喜ぶ顔を想像して、渡す前から嬉しくてたまらなかった。

そうこうしているうちに、こんがりとした香りが部屋を覆いはじめた。

くまお 「いけない いけない 少し焦げてしまった......」

くまお にとって、自分で気がつかないうちに、
サーフボードをプレゼントすることが、パンケーキよりも大切なことになっていた。


 

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