『はじまりの物語』#12

ひろは、全員のパートナーA.I.の回線を開くようにブーべ、ラグーン双方に指示を出した。

ヒロアキ「俺に何かできることは!?」

ひろ「黙ってて!」

今まで聞いたこともない ひろ の厳しい口調が、状況の厳しさを物語る。

ドローンの影が、誰の目にも肉眼で見えるところまで迫ってきた。

ひろ はこの状況を突破できるのは自分次第だということを痛いほど理解していた。

間に合え!
間に合え!!
間に合え!!!

最後の作業に取り掛かったその時、ひろは絶望した。
見たこともない障壁が目の前に現れたのだ。

みんな......ごめん......



ヒロアキ「ひろ!!やったな!!!やっぱりお前は天才!!!」

ひろ「......え?」

外を見渡すと、ドローンがオレンジ色の光とともに次々と海に沈んでいく光景が広がっていた。

ひろ には状況が理解出来なかったが、
一つ確かなことは、助かったという事実だ。

ひろ「助かった......のね?」

辺りは歓喜の声に包まれている。

ブーべの飛空艇艦隊は、お礼と、ひろ達の幸運を祈り、
全員が ひろ達に向かって敬礼をして ブーべ に引き返していく。

ヒロアキ「では、いよいよだな!!」

ヒロアキの掛け声に合わせて、一同は再び嵐に向かって突き進みはじめた。

嵐を進む中で、一同は目的地までのミッションをすり合わせる。
目的地は海の下。深い海底近くとなっている。

搭載している潜水艇の中でも、
想定される水深に耐えられる潜水艇は一名乗りで、一台のみ。

ヒロアキ は自分が行きたい気持ちが強かったが、
ここは ひろ と ウェズ が行くべきだと悟っていた。

ひろ が上空で調査したところ、目的地までは、
パートナーA.I.もサーバーとの接続状態を保つことが出来そうだった。
むしろ、海底の方が接続が強くなるようで、もしかしたら、この海底のどこかにサーバー本体が眠っているのかもしれない。

パートナーA.I.は問題なくとも、残念ながら、
海上との通信手段である光を用いた無線での通信は
目的地周辺の海底まで届かない。
これは、パートナーA.I.同士での通信も例外では無かった。

潜水艇にAIIで ウェジー を搭載し、ひろ が乗り込む。
そして、ウェズ がついていくことで決定した。

目的地周辺までは潜水艇で近づき、まずは実態がないパートナーA.I.の特徴を活かして、ウェズ が施設内の様子を確認する。

その後、潜水艇ごと施設にドッキングできる部分を探し、内部に侵入する算段だ。

兵「現在地が目的地上空です!!」

ヒロアキ「遂にここまで来たな!」

ひろ は早速水中スーツに着替え、潜水艇に乗り込む。

ヒロアキ「ずっと、俺らが上から見守っている
     何かあったら躊躇わず、すぐに引き返せ いいな?」

    「たとえずっと探し続けてきたものであっても、
     これから行くところには、
     お前の命より大事なものなんて無いんだからな」

ひろ「わかってる ありがとう」

ヒロアキ「ウェズ、ウェジー、ひろのこと頼んだぞ!」

    「それから、ウェズ!!」

    「何があっても戻ってこい!キミは俺の相棒だ!!

ウェズ は笑顔で ヒロアキ に応えた。

ウェズ「当たり前じゃん!」

ひろ達が会話を終えるのを見計らい、整備士は潜水艇のハッチを閉めた。

いよいよね ひろあき

ひろ は目を瞑り、弟の ひろあき との思い出を振り返っていた。

ウェズ はそんな ひろ を見ながら、
自分の記憶と向き合うことに覚悟を決めていた。


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