宇宙人のあいつ

高知に住む四兄妹の次男が実は「家族」というものを調査に来た土星人で、帰星までに残された日々でやり残したことをやるうちに「家族」とは何かを知る話です。

予告見てコメディだと思ってたら、意外にそんなに笑えず、なんなら少しスベってる印象すらあって、うまくノリに乗れないという感じがあったのですが、見方を変えると「でかい表札」「ドリーミン」「うなぎ」「ジャガイモ」などの舞台装置と、ザラついたフィルターを通した映像、唐突にねじ込まれる効果音など、独特で奇妙な演出が違う角度からの笑い、みたいなものをもたらすことに成功しており、なんだかこういう「コメディ」っていうのもありなのかな?なんて気にさせられました。

設定がSF的だけど、ストーリーはいたってシンプルな家族もので、なんなら昭和的ファミリードラマ風ですらあります。寺内貫太郎一家みたいな(見たことないですが)。兄妹は両親を早くに亡くしているという設定なので、長男は父親代わりを自認しており、家父長制的に大声でどなり散らしたり、男たるものこうであれ的なことを発言したり、長女のダメ彼氏と決闘したりしますが、自分の夢を捨てて家業を継ぎ、バカをやって笑いの絶えない「自分より大切」な家族を守っています。古臭い価値感が、逆に現代の複雑な問題にはシンプルに有効なのかもと見直したりしました。

そんな長男をバナナマン日村さんが演じてるのですが、ほぼ主役です。当て書きかな?っていう。粗雑で不器用だけど気持ちだけは熱いっていう。家族を守るっていうのはこんなに大変だということを全力で演じており好感を持ちました。リッケンバッカーを自慢してからの「リンダリンダ」弾き語りのシーンは本当に良かった。そりゃ土星人だって踊り出すよね。

「うなぎ」が「話なんて半分聞いて人生楽しく生きりゃいいのよ、どうせみんな死んじゃうんだし」というような哲学を語るのですが、そんな冷笑的態度を取れるのは「どうせ死んじゃう」自分も子どもを産んだりして次世代に繋げることができるから、なのかなと思いました。この映画では、うなぎだけでなく長女もそうですよね。長女が産む決断を皆に伝えるところ、長男がそれを批判しながらも「でも父ちゃんも母ちゃんも孫ができたら嬉しいよな」と言うところによく表れていると思います。


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