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【2023アイスホッケー女子世界選手権】準々決勝「スイスvs日本」レポート

取材・文・写真/アイスプレスジャパン編集部

 IIHF女子世界選手権トップディビジョン 
会場:CAAセンター(カナダ・ブロンプトン)
準々決勝(現地4/13 20:30FaceOff. )
 
日本 1(1-1、0-3、0-1)5 スイス
ショットオンゴール:日本28 スイス35

 

跳ね返されたベスト4への挑戦。スイスとの再戦は意外な大差に


長いトーナメントにはどうしても噛み合わない試合もある。今回日本は絶対にそれをしてはいけない準々決勝で、悔しいがその脆さを見せてしまった。

床秦留可の先制ゴールで試合の主導権を握れたかに思えたが……

日本は第1ピリオドに8分17秒に浮田留衣(うきたるい/Daishin)がゴール前に持ち込み最後は床秦留可(とこはるか/Linköping(SWE))がパックを押し込んで幸先良く先制点を奪う。
グループリーグ最終戦では3-4と逆転で惜敗したが、その前戦の内容と流れを考えれば日本は実に良い試合の入りを見せてくれた。その後も守りは安定し、大きなチャンスをスイスに許さない。最低限このまま何事もなく1-0で第1ピリオドを終えられれば。ここまで何度も挑戦しては跳ね返されてきた対スイス戦の勝利と初の世界選手権ベスト4。スマイルジャパンの視界は良好のように思えた。
 

しかしその視界に急に霧が掛かったようになってしまったのは、第1ピリオド終了まであと2分を切ろうかと言うところだった。
日本のベンチ前、フェンスギリギリをスイスの選手が高速で駆け上がろうとしたところをディフェンスがトリッピングの反則をしてペナルティ。記者席からはちょっと厳しい判定にも見えたがここで日本はショートハンドのピンチを迎える。
そのショートハンドでも日本は守りの意識を持ってゴール前のフォーメーションを固めていたが、Lara CHRISTENがゴール正面から打ったシュートは相手FWと日本DFの身体の間を通過、さらにゴール前にも詰めている選手がいてゴールキーパーが反応できず。これで同点に追いつかれてしまう。

スイスの同点ゴール

GK増原海夕(ますはらみゆう/道路建設ペリグリン)にすぐ人里亜矢可(ひとさとあやか/Linköping(SWE))がかけより「これは仕方ない」と話している言葉すら想像できるシーンがうかがえるほど日本にとっては不運なゴール。しかしこれでスイスが完全に息を吹き返してしまった。

警戒していたスイスのキープレイヤー2人の台頭を許す

第2ピリオド開始直後、日本はスイスゴールに攻勢をかけようとするが、ここで警戒していた2人に活躍を許してしまう。
スイスのキャプテンLara STALDERとAlina MULLER、この2人を止めることが日本は勝利への絶対条件だったが、第2ピリオド開始わずか29秒。エアポケットのように空いたゴール前にスペースに2人に入り込まれ、最終的にシュートのリバウンドをMULLERに流し込まれ2-1。さらにDFが攻め上がろうとしたところでパックをSTALDERが強奪、そのまま一気に駆け上がられるとGKの1対1も制してSTALDERが彼女1人の個人技のみでゴールを奪う。
2人の活躍を許した日本はさらに6分10秒、ゴール裏でSTALDERに自由にパックを動かされてしまい決定的なラストパスを出され失点。守備が崩壊した状況となり、この時点で1-4。
残念ながらここで勝敗は決まってしまった。
 
その後は日本も徐々に盛り返すも得点までは至らず、第3ピリオドも良い流れを掴めたかというところでペナルティーをしてしまうといった形を繰り返してしまうなど、この日は流れに乗ったスイスのまえに後手後手に回るほか無かった。

 
試合後、DFの人里亜矢可選手に今日の試合のターニングポイントを聞いたところ「1点を先制した後の日本がペースをつかんでいた時間帯に追加点を取れなかった」点を一番に挙げた。
この日は確かに先制点を奪ったあとも、グル―プリーグのときとは違い日本の特徴である運動量が目立たず、どこか遠慮気味というか、まずは失点しないことを意識するあまりここまでペースを奪う原動力となっていた前へとプレッシャーをかけるフォアチェックの勢いが弱かったようにも感じられた。この辺りの原因がメンタルにあるのかはたまた若い選手特有の経験不足にあるのか? スタッフは分析を行っていると思うが、5位決定戦はもう翌日に迫っている。
飯塚監督は「先取点取るまでは良かったが第2ピリオドで立て続けに点を取られ、そこで流れを変えることができなかった。とにかく次の試合まで時間が少ないので、精神的にリフレッシュさせて良い状態で次のスェーデン戦には臨みたい。状況は前回のデンマーク大会で5位になったときと同じだし、ベテラン選手も多いのでそのあたりはしっかりと気持ちを切り替えてくれるでしょう」と選手たちの奮起に期待する。
 
初のベスト4に手がかかったところで、それをつかみきれなかった悔しさは募るが、まずはグル―プAに残れる5位をしっかりと奪うこと。目標をそこに切り替えてスマイルジャパンは本来の切れ味を取り戻したい。
 

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ポタやん(アイスプレスジャパン編集長)
ポタやんです。基本的にはライター&編集者ですが、最近は映像制作も精力的に行っています。現在アイスホッケー&アイスクロス情報サイト「IcePressJapan」を運営中。冬スポーツ色々を盛り上げるべく頑張ります!