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経済危機下における不動産市況動向

新型コロナウイルス感染拡大のための緊急事態宣言・外出自粛の影響がさまざまな業界に幅広く影響を与えています。とりわけ東京・大阪など主要都市は人通りが大幅に減少するなど、不動産取引にも大きな影響を及ぼしており、当面はその影響が続くとみられます。

そこで今回は、国交省・内閣府が発表している各種指標から、過去の経済危機の際の動向を検証してみたいと思います。

1.2008年以降の既存住宅販売量指数の推移(全国)

既存住宅販売量指数とは、登記データを基に個人が購入した既存住宅の移転登記量を加工・指数化したものです。別荘、セカンドハウス、投資用物件等も含んでいます。

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※出典:既存住宅販売量指数(国交省)

2008年以降の既存住宅販売量指数をみると、大きく4回上下していることがわかります。08年のリーマン・ショック、11年の東日本大震災、14年・19年の消費税増税の際です。

今回は其の中からリーマンショック時の動きを検証してみたいと思います。

2.リーマンショック時の住宅販売量指数(戸建て、全国)

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上のグラフは、住宅販売量指数と不動産価格指数(国交省)、景気動向調査(内閣府)を比較したものです。2008年4月から価格・景況感ともに低下傾向にありましたが、2008年9月のリーマンブラザーズ破綻で一気に下落しています。2009年以降に景況感は回復しますが、価格は横ばいで推移。販売量と景況感に相関性は見られません。

3.リーマンショック時の住宅販売量指数(マンション、全国)

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上のグラフは同じ指標をマンションで比較したものです。戸建てとは異なり、景況感指数と既存住宅販売量指数の間に一定の相関性がみられます。価格も上下の波があり、下降傾向にあるものの、安定的に推移しています。

4.まとめ

上記検証を総括すると、不動産価格は、それほど大きく上下しておらず、ゆっくり時間をかけて変動する傾向にあるようです。特に戸建てよりもマンションでその傾向が強いことがわかります。

また、既存住宅販売量は景況感との相関性があまりみられませんでした。特にマンションよりも戸建ての方がその傾向が強いようです。

居住用物件の購入検討層は、結婚・出産などのライフステージに沿った住まい探しを行っているため、価格の上下や景況感などにはそれほど左右されることなく、自分たちのペースで住まい探しを行っていることがわかる結果と言えるかもしれません。

不動産業者に話を聞くと、4月は客足が遠のいたものの、5月・6月と戻りつつあるという声をちらほら耳にするようになりました。ワクチンの開発を待たずして、不動産市況は回復傾向に入っていく兆しが見え始めているようです。

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