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484位:Lady Gaga 『Born This Way』(2011)【解説文翻訳】ローリングストーン誌が選ぶ「歴代最高のアルバム」500選(2020年改訂版)

ローリングストーン誌が選ぶ「歴代最高のアルバム」500選 (2020年改訂版)

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484位:Lady Gaga 『Born This Way』(Interscope, 2011)

<ローリングストーン誌による解説>
 Lady Gagaの世界において「やりすぎること」は侮蔑の言葉でない。彼女にとってこれは決意の表明を意味している。Gagaのセカンドアルバムで聴けるのは、派手な祝福の数々とアリーナ級のサウンド、そしてスプリングスティーン的なロマンチシズムだ。また、Clarence Clemons(※1)のサックスソロもこれに華を添えている。半分スペイン語による壮大な楽曲"Americano”は「イーストL.A.の女の子」に結婚を申し込む物語、シンセ-ポップの“Government Hooker”はJohn F. Kennedy大統領への性的な誘惑についての曲、“You and I”はネブラスカ出身の青年についての感動的なバラードだ。完全無欠のタイトルトラック"Born This Way"は当然のごとくLGBTQのアンセムとなっていた。

※1...Bruce Springsteenのレコーディングやコンサートでバック演奏を務めるEストリートバンドのメンバーとして活躍した。
(翻訳:辻本秀太郎、 原文へはこちらから)
<ランキングに関するデータまとめ>
【2020年度版】
同アーティストのランクイン枚数:1枚(本作は上から1番目)
【2012年度版】※前回版との比較用
同アルバムの前回順位:掲載なし
同アーティストのランクイン枚数:掲載なし

<ちょっと一言> 
 このアルバムに収録されている"You And I"にはQueenのBrian Mayがギターとコーラスで参加しており、当時Queenフリーク高校生だった私はそれを楽しみに発売当時にCDを買った記憶がある。(ちなみに同曲には"We Will Rock You"のビートもサンプリングされている)
 Lady Gagaという名前はQueenの楽曲"Radio Gaga"から来ていることや、QueenのボーカルFreddie Mercuryも彼女と同じくセクシャルマイノリティのスーパースターであったことなど、その説得力もさることながら、待望のコラボレーションだったといえる。また、Freddie死後にQueenを好きになったファンとしては、2011年にリアルタイムで動きがあったことは嬉しかったし、Queenの意志やDNAが当時世界最高のポップスターの1人だったLady Gagaに引き継がれているという事実に興奮したことを覚えている。
 正直このアルバムは2020年の耳で聴くと、リード曲含め当時のEDM全夜の時代感がありすぎて少し古臭く聴こえるのだが、"You And I"に関してはオーセンティックなソングライティングとGagaのボーカルの素晴らしさが中心にあるためか今でも良く聴こえる。ちなみに2011年末の紅白歌合戦で彼女はこの曲をピアノの弾き語りで演奏しており、震災のあった年の末に日本語の歌詞なども入れながらお茶の間に力強い歌声を届けてくれている(動画はこちら)。そんなことを書きながら、日本のお茶の間において同時代に活躍する「洋楽スター」的な存在がLady Gagaの時はまだギリギリ成立していたのだということを思い出し、2010年代にどんどん萎んでいった日本の「洋楽」受容のことを考えると複雑な気持ちになる。
 ちなみに宇野維正と田中宗一郎の共著「2010s」では、2010年代は「2008年から始まっていた」という考察を始点に議論が進むが、その根拠としてLady Gagaのデビューアルバム『The Fame』が2008年リリースだったことがその大きな一つとして挙げられている。ここでは、彼女が2010年代前半のフィメール・ポップの時代を切り開いたこと、LGBTQアイコンとして2010年代がアイデンティティ・ポリティクスの時代になることを最初に定義づけたこと、ダンスミュージックをポップミュージックに持ち込んだことでEDM全盛時代を準備したことなどが指摘されている。
 2010年代途中には影を潜めていたが、映画「アリー スター誕生」(2018)でまさかの大復活。主題歌の"Shallow"は去年ずっと北米のチャートに入っていたのではないかと思う。2020年には6枚目となる新譜もリリースしているが、こちらにはAriana GrandeやBLACKPINK、Elton Johnが参加している。(辻本秀太郎)


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