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24時間365日監視して斜面災害から人命を守る【愛媛大学】

近年日本では、台風や集中豪雨によって斜面が不安定化し、斜面災害が後を絶たない。愛媛では、平成30年の西日本豪雨災害が記憶に新しいのではないだろうか。斜面災害から人命や資産を守るため、「LPWAを用いた斜面災害監視システム」の実装化プロジェクトが愛媛県内各地で実施される。

土砂災害危険箇所の実情(実装フィールド:愛媛県内全域)

現在、愛媛県内には約15,000箇所もの土砂災害危険箇所等が存在する。しかし、その危険箇所のほとんどには、監視センサが設置されていないのが現状だ。
その理由としては、あまりに危険箇所が多いことに加え、現在、土砂災害危険箇所などの斜面を監視するセンサ(例えば、「伸縮計センサ」)は、手間と費用が大きくかかってしまうからだという。


しかし、ひとたび土砂災害が起これば被害は甚大で、即人命に繋がる深刻な問題だ。今回、これらの課題を解決するため、愛媛大学をプロジェクトリーダーとした「LPWA無線技術を用いた斜面災害監視システムの実装化プロジェクト」がスタートする。

土砂災害の被害を未然に防ぐため、11社が手を取り合い実装実験に協力(チャレンジャー:愛媛大学)

「LPWAセンサ」。電池で動くため、設置後1〜2年はメンテナンスフリー。

従来の技術よりも費用が抑えられ、さらに省人化できるシステムとして愛媛大学が注目したのがLPWA無線技術を用いた地表面傾斜計だ(※以後、LPWAセンサ)。
LPWAとは、Wi-FiやBluetoothといった無線規格よりも安価で、さらに遠くまでデータを飛ばすことができる無線技術。近年、このLPWA無線技術を使ったLPWAセンサの商品化が活発になってきている。

しかし、各社が商品化に注力するようになってから日が浅く、LPWAセンサの精度検証は不十分であり、さらに現段階では、避難指示を発令する基準となる「警戒レベル管理基準値」が明確に設定されていないというのが実情。

今回の実装実験では、LPWAセンサを開発している8社の協力のもと、これらの課題を解決するため、各社のLPWAセンサの精度を把握し、さらに「警戒レベル管理基準値」を設定していく。

センサの性能を正確に把握すること


まずは、実際の斜面と実験室で、8社のセンサの性能を正確に把握することからスタート。また、県内の土砂災害危険箇所に各メーカーのLPWAセンサを設置し、実際の動きを確認する。さらに大学の研究室では、1/1000の精度で傾斜変化を測定できる試験装置を開発し、各メーカーが提出している数値が正確なのか精度評価を行う。

性能を把握し、「警戒レベル基準値」を設定

現段階ではLPWAセンサの明確な「警戒レベル基準値」がないため、今回の実装実験の結果や過去の学術論文等の研究成果を元に「警戒レベル基準値」を設定していく。基準値が定まると、斜面の傾きと崩壊が起こる可能性について言及できるようになり、避難指示を発令する際の判断材料になる。

標準プラットフォームの開発でさらに使いやすく

標準プラットフォームのイメージ

本プロジェクトでは、LPWAセンサで取得した各メーカーのデータが一画面で確認できる標準プラットフォームも開発予定だ。計測データを一元的に管理できる仕組みは、今後のLPWAセンサの普及に向けての足がかりになるに違いない。
愛媛県での実装検証のもと、LPWAセンサの有用性が証明されると、他の自治体でも導入が検討されるようになり、各社それぞれで価格競争が起こると予想される。価格が下がることで、さらにLPWAセンサが普及していくだろう。

リーダーである愛媛大学のもと、競合となるはずの8社がタッグを組んだ今回のプロジェクト。それぞれの立場や会社は違えど、願いはただ一つ。それは、土砂災害の被害を未然に防ぎ、市民が安全に暮らしていくことである。「土砂災害危険箇所にセンサを一つでも多く設置する」という課題の緒となる本プロジェクト。今後の展開が楽しみだ。

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