デジタルデータを活用して“黒田式”真穴栽培モデルを拡大!【株式会社アクト・ノード】
みかんの一大産地である愛媛県の中でも、地形に恵まれた八幡浜市は県内屈指の柑橘生産量を誇る。そんな八幡浜市で、デジタルデータを活用した栽培モデル拡大の取り組みがスタートした。
生産者との連携により本当に役立つデータを収集・利活用(チャレンジャー:株式会社アクト・ノード)
農業の現場では、エリアや生産者ごとに長年の経験を基に培われてきた栽培方法がある。しかし、それがデジタルデータ化されていないために、後継者や新規就農者にノウハウが伝わらないことが課題とされている。
そこで立ち上がったのが、農業・畜産・水産養殖向けのIT/IoTサービスを提供する「株式会社アクト・ノード」だ。同社の技術を用いて、生産者のノウハウをデータ化し、見える化する。
しかし農業のDXは、単にデータを集計すれば良いというわけではない。まず、「本当に必要なデータは何か」を判断し、それに必要な機材を導入する。そして、そのデータを管理するシステムも、「誰でも活用できる分かりやすいもの」を用いる必要がある。また、データを見ながら「生産者や組織自体も成長する」ことで成果が生まれる。
名人・黒田さんの生産方法をクローン化!(実装フィールド:八幡浜市)
八幡浜市、真穴エリアでいち早く「マルドリ方式(※)」を導入し、県内にもそのノウハウを広めてきた柑橘農家の黒田さん。黒田さんの栽培方法の凄いところは、【1】効率よく糖度があがる【2】早く収穫できる【3】収穫量が多い【4】毎年安定した量が収穫できる、この4つだ。毎年、黒田さんの圃場では、このエリアの平均の2倍近くの収穫量を誇っている。みかんが育つために必要な養分を作り出す葉っぱは、1本の木に生える枚数の平均が6000~7000枚ほどだが、黒田さんの圃場ではなんと9000枚~11000枚ほど。
(※) 周年マルチ点滴灌水同時施肥法=自動化システムによる灌水施肥をマルチシートの下に敷設した点滴チューブで行うことで、省力と高品質果実生産を実現する方法。
「黒田さんと同じように栽培したい」という声も多いが、灌水や追肥、その年の環境がどうだったかなど、データとして見えるわけではない。そこで、名人・黒田さんのノウハウを細かくデータ化し、分析することで、黒田さんの栽培方法をコピーした“黒田クローン”を広め、農業全体の底上げを目指す。
さらに、模倣農場として、同じく真穴エリアでみかんを栽培する渡邉さんの圃場でもデータを記録。黒田さんの圃場のデータと比較する。
データ通信環境を整える
まずデータを収集するためには、データ通信環境を整える必要がある。そこで、活躍するのが低消費電力で長距離の通信が可能となるLPWAだ。様々な種類がある中で、今回のプロジェクトに使用するのが、1本のアンテナで数Km~30kmの範囲をカバーし、センサーデバイスに内蔵された電池により数年~10年連続稼働する「LoRaWAN(ローラワン)」。
日本国内で(人口カバー率)95%、仮設アンテナでも数百m~2.0kmの範囲をカバーし、充電式バッテリーで5~12ヶ月の連続稼働が可能な「Sigfox(シグフォックス)」。
と2種類のデータ通信方式を用途や設置場所に合わせて組み合わせ、電力のない露地農場でも長期間の環境データ取得を可能としている。
AI画像分析に用いるWebカメラ画像や消費電力の大きなセンサーは、太陽光発電バッテリーで給電しLTE(モバイル通信)による送信を行い、環境・生体(植物の状態)・作業記録の自動化実現を進める。
天気や気温など「環境」を記録
葉っぱの水ストレスによる灌水の最適化を前提として、最新のセンサー群を選抜。温度、湿度、土壌水分、土壌温度、日射や、圃場の潅水量などを計測する。生産者と相談しながら代表してどの地点の、何のデータを集めるかを選択していく。柑橘でも品種によって要件が異なるため、今回のセンサは、そういった細かい要件に合わせて計測ができるものを使用する。
「生体」の状況を観測
自動記録とAI判別ができるwebカメラを設置。葉っぱの状態を定点観測し、連続写真にすることで、変化を早送りのように見ることができる。AIで葉のストレス状態を推定。
その他にも、果実成長センサ、樹体水分張センサ(SWP)、糖度計を活用。
衛星モニタリングで最適灌水量を算出
“黒田式”真穴栽培モデルの活用として、衛星モニタリングも実施。灌水技術に長けているイスラエルでは既に実用化されている技術で、衛星からの測定値から植生を計算し、データベース情報と合わせて最適灌水量を算出する。
データを一括管理・分析するクラウドサービス「アクト・アップ」
これらのセンサデータを管理するシステムが、「株式会社アクト・ノード」が独自で開発した、農業・畜産・水産養殖の生産活動を記録しグループで共有するアプリ「アクト・アップ」。
これは、様々なセンサから収集したデータを取込み、一括でまとめるオープンインターフェイスをもったクラウドサービスだ。
環境情報だけではなく、生体情報、追肥などの人間の作業記録を同じクラウドにまとめ、自動で分析する。そうすることで、生産者が経験を頼りに判断していた作業が、より信頼性の高いデータとして蓄積されるのだ。
正しく使えるデータを集め、次のステップへ!
まず、今年度はデータがしっかりとれているか、自動集約してデータが見れるか、役に立つデータなのかなどを確認する。一番重要視しているデータ収集時期は、3月~7月ごろ。2~3年集計することで、より信頼できるデータが揃う。また、今後の展開として、農家が重要視している「水ストレス」に対して、黒田さんの名人レベルの灌水を記録することで最適化していく。これまで、黒田さん自身も感覚でしか分からなかったことが、データとして分かることで、さらに進化をすることができると期待している。
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