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AI道路管理システムで、道路管理のスマート化を推進!【株式会社アーバンエックステクノロジーズ|実装報告】

老朽化の進む道路を適切に管理し、住民の安全を守るため、AI道路管理システム「RoadManager損傷検知」の実装プロジェクトを昨年度より行っている株式会社アーバンエックステクノロジーズ。2年目となる今年度は、今治市、西条市、新居浜市、四国中央市の東予地域に実装範囲を広げ、より広域的なデータ取得、検知カバー率の向上を目指した。
本記事では、今年度の取り組みとその成果についてレポートする。

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自治体が抱える、道路管理の課題

自治体では、ポットホールと呼ばれる道路損傷を日常点検で発見し、修理に繋げている

従来、自治体では管理する道路に異常がないかどうか、公用車を用いて職員がパトロールを行い、目視で点検している。しかし、管理道路が非常に長いことや、人手不足、予算不足など様々な理由からすべての道路を目視で点検することには限界があり、管理が十分に行き届かないという現状にある。

こうした自治体の課題を解決するため立ち上がったのが、AIによる画像認識に強みを持つ株式会社アーバンエックステクノロジーズだ。同社はスマートフォンを用いた道路損傷検知を支援するサービスを提供している。

AI道路管理システム「RoadManager損傷検知」とは

実装したAI道路管理システム「RoadManager損傷検知」は、スマートフォンを用いた道路の総合管理ツールだ。「RoadManager損傷検知」アプリを搭載したスマートフォンを車両のダッシュボードに設置し、起動しながら走行するだけで道路損傷を自動検知。そのデータをリアルタイムでWeb上の管理画面に取り込み、地図や損傷の詳細な情報を表示することで、自治体などの道路管理者が補修対象の選定や補修箇所の指示書作成を行うことができる。

過去に30以上の自治体にて実証実験を行い、東京都、神奈川県を含む20以上の自治体、国道事務所、海外での採用実績を有する。

今年度の取り組み

2年目となる今年度は、昨年度の実装で新たに見えてきた課題に取り組んだ。

昨年度の課題
・複数自治体利用による低予算化などを実現できるスキームがない
・修繕を効率的に進めるため、損傷の優先順位付けが必要
・民間事業者の車両活用など、効率的、包括的な道路維持管理活動を考えられていない
・自治体単独でのサービス導入は難しい。導入ハードルが下がるよう、自治体の状況に合わせたプランの検討が必要

特に、「単独利用は難しい」「複数自治体による契約を可能にし、予算を抑えられないか」という声が目立った。

これらの課題を踏まえ、今年度は主に以下の2点に取り組んだ。

1.自治体が単独で導入できるようなコストの見直しを実施
「RoadManager損傷検知」アプリを搭載した民間車両で実装エリアを走行し、損傷検知データを取得。自治体の公用車を活用した場合のカバー率と比較検証し、民間アセットを利活用した場合と公用車を活用する場合のコスト削減を検証した。

2.複数自治体による民間アセットの共同運用スキーム構築
民間事業者が業務で走行する際に道路損傷のデータを取得することができれば、自治体職員によるパトロールの負担が軽減できる。さらに民間企業の車両が走行するエリアは隣接する自治体をまたぐこともあるため、少ないスマートフォンで複数自治体のデータ取得も可能。

そこで、今年度は今治市、西条市、新居浜市、四国中央市、民間事業者として出光興産株式会社の協力のもと、広域的なデータ取得を実施。

以下について検証を行った。
・少ないデバイスから複数自治体のカバー率をどれだけ上げることができるか
・複数自治体で利用する場合に導入できる低予算化が実現可能か
・民間車両の走行による季節性・環境を問わないデータの有効性検証ができているか

複数自治体による民間アセットを活用した検証

■プロジェクトコンソーシアム
・実装プロジェクトリーダー:デジタルソリューション提供者
株式会社アーバンエックステクノロジーズ
・実装プロジェクトパートナー:ソリューション実装先
隣接する複数自治体/今治市、西条市、新居浜市、四国中央市
アセットを持つ民間事業者/出光興産株式会社、四国電力株式会社

■損傷検知の対象・種類
ポットホールやひび割れの検知に加え、区画線・横断歩道のかすれや剥がれも検知できるようアップデート。また損傷の大きさ推定機能や、どの損傷を優先的に修繕するかの判断を補助する並び替え機能も開発した。

■実装内容とその成果
まずは上期に、出光興産と四国電力の車両4台を用いて今治市の道路損傷データを取得した。
カバー率、損傷検知数について季節性に左右されないことを検証するため、一番の閑散期である夏(7・8月)の時期に1ヶ月検証を行った。

その結果は以下のとおり。

実際に自治体が単独でパトロールするよりも10倍以上の検知数を出すことができ、非常に効果的な検証となった。
また閑散期に実施することにより、業務のついでに取得するデータだけでも十分な成果を出すことができ、季節性に左右されないデータ取得が可能ということがわかった。

下期は、出光興産の車両を用いて実装エリアを東予地域に広げ、広域のデータ取得に取り組んだ。実施期間は2024年2月1日から14日の2週間。

結果、2週間のデータ検証で全体的に30%近くの網羅率を実現。特に四国中央市では50%以上の網羅率を達成できた。
4自治体に対して5台の車両で十分なデータ取得ができたといえるのではないか。

今後の展開:実装結果から見えてきた課題に取り組む

2024年3月12日、県庁の官民共創拠点「トライアングルベース」にて、成果報告会が行われた。株式会社アーバンエックステクノロジーズと実装パートナーの今治市、西条市、新居浜市、四国中央市の担当者が出席。
上記の成果報告に加え、今年度の実装結果からの課題、それをクリアするための展開案について説明があった。

今回の広域データ取得の結果として、単独でサービスを導入するよりもコストを削減できた。隣接する自治体同士で出光興産のアセットを使ってデータを取得すれば、特定の条件下ではあるが、コスト削減プランが提供できる。この新しい選択肢を見出すことができたのは大きな成果の一つ。
最終的には、これらの実証の結果から2つの自治体にRoadManager損傷検知を導入してもらうことが決定した。

一方で、複数自治体で民間アセットを活用することの課題も見えてきた。
・広域での共同契約は事例が少なく、調整が困難
・「群マネ」の取り組みがまだ進んでいない
・隣接している自治体が同時に導入を希望しないとコスト削減にならない

■2024年度の取り組みについて
今年度の実装で顕在化した問題「損傷検知数が多すぎて、どこから補修して良いかわからない」や、自治体より相談の多かった「日常巡視点検だけでは予算が通りにくい」といったことを踏まえ、アーバンエックステクノロジーズは新しく以下の2点に挑戦していきたい考えだ。

1. 損傷検知機能の拡充
深いポットホールや段差でバイクなどの転倒事故も発生しているため、特に損傷の深さのレベル分けは、自治体からの希望が多い。
AIの画像認識を強みとしている同社では、「深さ」を判断基準とし、その危険度によりレベル分けができるよう機能開発を行う。

2. 日常巡視点検と簡易路面性状調査をセットにしたスキームの構築と検証
従来、自治体では日常巡視点検(パトロール)とは別に精密検査として5年に1度くらいのペースで路面性状調査を行っているが、これらをセット販売し、道路点検を包括的に管理できることでより自治体が予算化しやすいスキームを検討していく。

簡易路面性状調査サービスRoadManager路面評価は、専門業者・専用車により主要幹線道路を中心に調査し、ひび割れ率、IRI、MCIを評価することで計画的に補修するというもの。
2023年11月に行った国土交通省主催の舗装点検道路巡視の支援技術試験において、舗装点検及び道路巡視が基準をクリアし評価されたことで点検支援技術性能カタログに掲載されることになった。

報告会では意見交換が行われ、参加自治体から次のような声があがった。
・ポットホールの判断基準において、重要なのは深さ。そこで段差が生じることでパンクやバイクなどの転倒リスクが高まる。小さくて深いほうが危険度は高い
・緩やかな凹みなら危険度は低いが、上がるときに段差が5cmもあれば危ない
・幹線道路と生活道路でもポットホールの状況、補修の優先順位は異なってくる
・最低限修繕が必要な面積(直径の面積、ひびの大きさなど)がわかれば予算ももらいやすい
・緊急の補修に加え、予防保全の対応が今後の課題
・維持費予算を取るツールとして「RoadManager損傷検知」を活用したい
・道路パトロールをしているときに損傷を検知できるものと民間アセット、路面性状調査の3本立てが良いのではないか
・職員は減っているがインフラは減らないため、やはり効率化が必要。「RoadManager損傷検知」を活用してどれだけ効率化できるか目指していきたい

今年度のプロジェクトを終えて、株式会社アーバンエックステクノロジーズの堀馨太さんは「我々が望んでいるのは、県下自治体に広く導入してもらうこと。次年度のトライアングルエヒメに継続採択された場合には、これらのサービスにより自治体の導入ハードルを下げ、より効率的な道路維持管理をすることによって、市民の方々が安心して暮らせるまちづくりに貢献していきたい」と話す。

道路管理DXを推進することで県民が安心して暮らせる街へ。今後はさらに範囲を広げ、愛媛県全域への実装を促進していく考えだ。

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