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宇宙技術を活用して農業をDX化!【有人宇宙システム株式会社】

近年ロボット技術やICTを活用し、高品質な生産と省力化を目指す「スマート農業」が社会的に広まっている。2022年、なんと愛媛県で“宇宙技術”を活用した農業のDX化が実装されようとしている。

宇宙技術で「ひめの凜」がもっと美味しくなる!? (実装フィールド:西予市・松前町・東温市)

西予市の「ひめの凜」の圃場の様子

「ひめの凜」は2019年に登場した愛媛のオリジナル品種で、大粒で透き通るような美しさがあり、華やかな薫りとしっかりとした噛み応え、上品な甘さが特徴。県が定める栽培基準を遵守する「認定栽培者」が生産することができ、「美味しさ基準」が定められ、美味しいお米を安定供給できるよう、講習会を開き栽培マニュアルをもとに生産されている。
しかし、「ひめの凜」は栽培が難しい品種として知られており、産地の違いや、天気、気温の変化によって追肥や農薬散布、中干しの開始日などが微妙に異なるため、農家それぞれの知識と経験に頼っているのが現実だ。こうなると、どうしても品質にバラつきが出てしまう。

この課題を解決すべく手を挙げたのが「有人宇宙システム株式会社」だ。宇宙技術と熟練の農家の知恵を用いて生育状況をDX化し、「ひめの凜」の品質維持と拡大展開を目指す。実装されるのは、愛媛屈指の米どころ西予市宇和町にある「田力本願株式会社」、東温市の「有限会社ジェイ・ウイングファーム」、松前町の「有限会社あぐり」の3社の圃場。

世界初! 宇宙技術を用いた営農支援アプリ「リモファーム®」 (チャレンジャー:有人宇宙システム株式会社)

有人宇宙システム株式会社(以下:JAMSS)は、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の運用・利用のリーディングカンパニーだ。独自の技術と知見をさまざまな分野に提供している。同社は営農支援にも力を入れており、衛星データを用いたアプリ「リモファーム®」を開発した。「リモファーム®」は、気象情報や地図情報に、地球観測衛星で取得されるデータを加えフル活用することで農作物の生育状況を把握することができる。既に山形県舟形市にて実証検証されており、3年間平均で収量10%、収益27%の向上。そして、コストを15%削減に成功した。

衛星画像で農作物の植生の分布状況や活性度を把握

葉緑素量を計り健康度を調べる計測器

従来、生育状況を把握するには、まず目視で色の違いや稲の長さの違いなどを見分け、異常がありそうなエリアは、必要であれば専用の計測器を使い数値を計測していた。ベテランの農家であれば、長年の経験から異常に気が付くことができるのだが、新規就農者となれば簡単ではない。

地図上に表示される圃場(赤枠内の黄緑色の部分)

経験に頼っていたこの作業を、「リモファーム®」を使うことで一括管理できる。
人工衛星から取得した各圃場の作物の生育状況が地図上にビジュアルで表示される。

生育状況の画面イメージ。
日ごとに圃場の生育状況を表示

植物が成長するために行う光合成。その際に出る反射量を衛星画像から解析する。光合成を活発に行い、成長している植物ほど太陽光の可視光の反射量が少なくなり、一方、近赤外の反射量は多くなる。これらの反射量の違いを可視化することで、圃場のどのエリアの生育状況が良好で、どのエリアが悪いのか、色の違いで生育状況の差が分かるため、ある程度エリアを絞り効率的で早い対策(追肥、水管理など)が可能となる。生育が悪い場所を絞り込むことで、肥料を撒く量を調整できるので、無駄な肥料をカットすることもできる。

日々の記録もアプリで一元管理

田植日からの積算気温・降水量・日照量のグラフ

生育状況の記録はこれまでアナログで管理されていることが多かったのだが、アプリ内に成長を記録して一元管理することができる。衛星データや気象データを自動でグラフ化してくれるだけではなく、その時々の現場の作業状況をメモや数値、写真で記録し保管することでさらに確かなデータとして蓄積されていく。

“経験不足”のハードルをなくし、後継者・新規就農者を増やす

「リモファーム®」に蓄積されたデータを活用すると、生育のステージごとにどのような対応をすべきかの指標ができる。例えば、アラート通知の機能も備わっているので、過去のデータと比較しながら、中干時期や収穫時期を知らせてくれる。ベテラン農家の知見をデータ化することで、新規就農者の農業に対する不安やハードルを各段に下げることができるのだ。さらに、「ひめの凜」をはじめ愛媛が誇る農作物の栽培ノウハウを集約し展開することで、品質を維持しつつ、県内外に拡大展開することができる。こうして農業の後継者、新規就農者を増やすことにも繋がる。

今後は稲作以外の農作物にも展開

「リモファーム®」は、主に稲作向けに展開されているアプリだが、今後は他の作物の生育状況も記録できるようにカスタマイズを行う。今回の実装プロジェクトでは、「ひめの凜」に加え、はだか麦(有限会社ジェイ・ウイングファーム)や、露地野菜や柑橘(株式会社OCファーム)に対しても、衛星・気象データの活用を検討する予定だ。こうしてさまざまな農作物の生育状況を管理できるようになると、さらに可能性が広がるに違いない。

田力本願株式会社の中野社長と意見交換をするJAMSSの研究員

先日、早速各農家の圃場に現地調査に入ったJAMSSの研究員。実装される農家のみなさんも、今後の進展に期待を膨らませているようだった。デジタルと農家が持つノウハウを掛け合わせた営農支援アプリ「リモファーム®」で愛媛の農業がどう変わるのか、ぜひ注目してほしい。

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